大成建設のカーボンリサイクル・コンクリート(T-eConcrete®/ Carbon-Recycle)
環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」のラインナップを充実し、資源の有効利用と脱炭素化を実現
2050年のカーボンニュートラルを実現するため、CO2を資源として回収し有効利用することで、CO2排出量を抑制する「カーボンリサイクル」への取り組みが進んでいます。
大成建設は、さまざまなタイプの環境に配慮したコンクリート「T-eConcrete®」を開発し、資源の有効利用と脱炭素化に取り組んでいます。
今後、当社は、環境分野のフロントランナーを目指し、“未来を創る”コンクリートの適用実績を重ね、カーボンニュートラルへの取り組みを加速させていきます。
T-eConcrete®の特徴・バリエーション
T-eConcrete®は、セメントの使用量を抑制し、通常コンクリートと同等の強度、施工性を保持しながら、CO2排出量の削減が可能です。
セメントの代わりに加える産業副産物などの配合状況により、建築基準法対応型、フライアッシュ活用型、セメント・ゼロ型およびCarbon-Recycleの4タイプがあり、目的用途により適切な仕様のコンクリートで対応できます。
- 建築基準法対応型:
セメントを減らし、代わりに高炉スラグ(製鋼から生じる産業副産物)を使用します。
建築基準法に準拠した建物の建設に適しています。 - フライアッシュ活用型:
セメントを減らし、代わりに高炉スラグとフライアッシュ(石炭灰の一種)を使用します。
石炭火力発電所から生じる産業副産物である石炭灰の有効活用が図れます。 - セメント・ゼロ型:
セメントを全く使用せず、高炉スラグを特殊な反応剤を用いて固めます。
最大限のCO2排出削減(最大80%)が可能です。 - Carbon-Recycle:
セメントを全く使用せず、炭酸カルシウムなどCO2を吸収したカーボンリサイクル製品を、高炉スラグと特殊な反応剤を用いて固めます。
コンクリート内部にCO2を固定することにより、CO2排出量(吸収・排出の収支)をマイナスにします。
T-eConcrete®のバリエーション
これらのうち、CO2を資源として利用するT-eConcrete®/Carbon-Recycleの特徴を詳しく紹介します。
T-eConcrete®/Carbon-Recycle(カーボンリサイクル・コンクリート)とは
カーボンリサイクル・コンクリートは、排気ガスなどから回収したCO2をカルシウムに吸収させて製造する炭酸カルシウムなどのカーボンリサイクル材料と、製鉄で生じる産業副産物である高炉スラグを用いて製造するコンクリートです。CO2を炭酸カルシウムに変換して練り混ぜることで、コンクリート内部にCO2を固定することができます。
コンクリート1m3あたり98~171kgのCO2を固定
コンクリート1m3あたり-116kg~-45kgの収支マイナスを実現(適用事例のCO2吸収・排出の収支計算結果)
強度特性(圧縮強度:20~45N/mm2)、施工性の指標となる流動性(スランプ12~21cm、スランプフロー45~60cm)は普通コンクリートと同等で、特殊設備を設けずに通常の生コン工場で製造可能
コンクリート内部の強アルカリ性を保持でき、鉄筋の腐食を防ぎ、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を維持
CO2吸収・排出による収支の一例
【大成建設 技術センター 人と空間のラボ前庭 現場打ちコンクリート舗装の場合】
排気ガスのCO2を吸収して炭酸カルシウムを製造し、高炉スラグなどと混合してカーボンリサイクル・コンクリートを作りました。カーボンリサイクル・コンクリート1m3あたりでは、炭酸カルシウムに「吸収したCO2量」171kg/m3に対して,炭酸カルシウムや高炉スラグなどの製造過程で大気に「排出したCO2量」は55kg/m3でした。カーボンリサイクル・コンクリートのCO2排出量の収支は-116kg/m3となり"カーボンネガティブ"を達成しました。
カーボンリサイクル・コンクリートの断面
T-eConcrete®/Carbon-Recycleの製造方法、製造状況
製造方法
- ①回収したCO2をカルシウムが溶解した水溶液に注入し、CO2を吸収した炭酸カルシウムを製造
- ②CO2を吸収した炭酸カルシウムと高炉スラグに砂、砂利などの骨材、水、反応剤などを加える
- ③投入した材料をミキサーで練り混ぜる
- ④T-eConcrete®/Carbon-Recycle(カーボンリサイクル・コンクリート)完成
製造状況
- ※YouTubeにリンクしています。
開発者の声
- ※YouTubeにリンクしています。
技術センター 社会基盤技術研究部 材工研究室 大脇 英司 氏
講演アーカイブ視聴のご案内
講演名 | 日経SDGsFESTIBAL グリーンアーキテクチュア会議 社会を変える材料革命、現場で造れる「CO2リサイクルコンクリート」 |
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適用事例・社外表彰
適用事例(カーボンリサイクル・コンクリート)
実験施設内部壁部材
現場打ち舗装(赤枠内)および石材調舗装ブロック(青枠内)
適用事例(セメント・ゼロ型)
現場打ちコンクリート
コンクリート製品:「T-eConcrete®研究会」による普及
土木構造物
T-razzo®/石材調建材
社外表彰
- (公社)土木学会
平成26年度 土木学会賞環境賞(Ⅰグループ)受賞(国立研究開発法人土木研究所と共同受賞)
- (一財)エンジニアリング協会
2021年度 第13回エンジニアリング奨励特別賞
実用化が期待される先駆的技術:環境配慮コンクリートの二次製品化プロジェクトチーム
ニュースリリース
- 1
CO2排出80%減、「環境配慮コンクリート」を実施適用
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2014/140909_3940.html - 2
CO2排出量を削減し、低コストで意匠性に優れた天然石材調建材「T-razzo」を開発
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2019/190705_4668.html - 3
環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」の普及展開に向け研究会を設立
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210112_5022.html - 4
カーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を開発
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210216_5079.html - 5
国内初 環境配慮コンを用いたシールドセグメント「T-eCon/Segment」を現場導入
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210701_8227.html - 6
「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を建築物に国内初適用
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/211201_8528.html - 7
環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」で現場打ち舗装および舗装ブロックを施工
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/211227_8635.html - 8
環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」をシールドトンネル全線に大量適用
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220119_8631.html - 9
CO2を炭酸カルシウムとして固定化する技術のカーボンリサイクル・コンクリートへの活用に関する共同開発契約を締結
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220401_8723.html - 10
CO2を固定した炭酸カルシウムのT-eConcrete®への活用に向け伊藤忠商事株式会社・Mineral Carbonation International社と協業開始
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220822_8883.html - 11
CO2排出量収支がマイナスとなる環境配慮コンクリートを建築物の門塀に初適用
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220914_8923.html