リリース

国内初 カーボンリサイクル・コンクリートを建築物の構造部材に適用

技術センターに新設する人道橋の基礎部建設工事を実施

2023年8月24日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、工場から排出されるCO2を資源化して利用することでCO2排出量収支がマイナスとなるカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を建築物の構造部材として国内で初めて適用しました。当社技術センター(横浜市戸塚区)に新設する人道橋の基礎部建設工事を2023年7月から着手しており、プレキャスト化した本構造部材を用いて橋梁基礎部を構築しています。(図1参照)

 当社が開発した環境配慮コンクリート「T-eConcrete」※1シリーズは、CO2排出量の削減と産業副産物の有効利用を可能にしており、これまでに4タイプを実用化し多くの実績を積み重ねてきました。一方で、一般的に建築物を支える基礎や主要構造部などには指定建築材料※2を用いることが建築基準法で規定されていますが、セメントを使用しないコンクリートは指定建築材料に該当しないため、「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」や「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を構造部材に適用するには、そのための手順を確立する必要がありました。
 そこで当社は「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」と「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を用いて製造するプレキャスト部材について、その材料特性(強度・施工性など)や構造性能(曲げ・せん断性状など)に関する技術資料を作成し、日本建築センターの特別工法評定※3(BCJ評定・SS0053-01)を取得しました。さらに、この評定に基づき適用建築物に対する性能評価機関※4の審査を経て、国土交通大臣の認定を取得することで、「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」と「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の構造部材への適用が可能となり、このたび人道橋の基礎部建設工事を実施しました。(図2参照)

 なお、今回取得した特別工法評定では、技術資料としてプレキャスト部材の構造設計・製造マニュアルなどを制定しています。これらの技術資料は、「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」や「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を構造部材に適用する際に活用できることから、今後、建築物の施工ごとに必要となる性能評価機関の審査と大臣認定取得までの手続きの円滑化が期待されます。

 今後当社は、セメントを使用せず建築物の構造部材に適用可能な環境配慮コンクリート「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」と「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の普及展開を図り、建築物への実装を推進するとともに脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

図1 技術センター内に建設する人道橋(完成予想図)
(「T-eConcrete/Carbon-Recycle」[赤矢印]、「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」を人道橋基礎部に適用)
図2 セメントを使用しないコンクリートの構造部材への適用の流れ
  1. ※1

    環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」:
    セメントの使用量を抑制し、通常コンクリートと同等の強度、施工性を保持しながら、CO2排出量の削減を可能にするもの。セメントの代わりに加える産業副産物などの配合状況により、建築基準法対応型、フライアッシュ活用型、セメント・ゼロ型およびCarbon-Recycleの4タイプがあり、目的用途により適切な仕様のコンクリートを選択できる。(詳細技術概要: https://www.taisei.co.jp/t-econcrete/

  2. ※2

    指定建築材料:
    建築基準法第37条(建築材料の品質)で規定される建築材料で、建築物の基礎や主要構造部などに使用する木材、鋼材、コンクリートなどについて、国土交通大臣が定めるもの。

  3. ※3

    特別工法評定:
    一般財団法人日本建築センターによる独自評定の1つ。建築物の構造方法に関する国土交通大臣の認定取得などを目的として申請された新たな工法や材料、部材、設備等について、建築基準法令その他の技術的基準等に照らしてその性能を評価する。

  4. ※4

    性能評価機関:
    国土交通大臣より指定を受け、国土交通大臣が行う構造方法等の認定申請に必要な性能評価を実施する機関。