リリース

T-eConcrete®/セメント・ゼロ型を用いた合成セグメントを下水管渠シールドトンネルに適用

環境配慮コンクリート「T-eConcrete」の用途を拡大

2023年7月6日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、CO2排出量の削減と産業副産物の有効利用を可能にした「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」を用いた合成セグメント「T-eCon/Composite Segment」を下水管渠シールドトンネルに適用しました。本セグメントは、普通セメント(ポルトランドセメント)を全く使わないことから、普通コンクリートを使用したセグメントと比較して、部材製造時のCO2排出量の大幅な削減による低炭素化を図ることができます。また、過酷な下水環境での適用に必要な耐久性能を有することを実験により確認できたことで、「T-eConcrete」の用途がさらに拡大しました。

 当社が開発した「T-eConcrete」は、コンクリート部材の製造時に普通セメントの代わりに、銑鉄と同時に生成される産業副産物の高炉スラグや石炭火力発電所での微粉炭燃焼で発生する石炭灰を集塵したフライアッシュを混合することで、製造過程で発生するCO2排出量の大幅な削減を実現しつつ、従来と同等以上の性能を有する環境に配慮したコンクリートです。これまでに4種類(①建築基準法対応型、②フライアッシュ活用型、③セメント・ゼロ型、④Carbon-Recycle)をラインアップし、目的・用途に応じて使用することができます。※1

 今回当社は、大阪府発注の寝屋川流域下水道門真守口増補幹線(第1工区)下水管渠築造工事※2において、シールド工法で構築する外径4.7mのトンネル壁面を覆う合成セグメント(鋼とコンクリートを一体化させた強度の高いセグメント)のうち、5リング分(延長3.0m)のセグメントに「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」を用いて製造した「T-eCon/Composite Segment」を適用しました。(写真1~4参照) 本セグメントには下水が直接接触するため、強度・耐荷重性はもとより、耐硫酸性、耐摩耗性※3が求められます。このため適用に当たっては、下水環境に必要な性能も普通コンクリートセグメントと同等であることを予め実験により確認しました。「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」を用いたセグメントの実構造物への適用は今回で国内2例目※4となり、適用範囲・活用実績の拡大と合わせ、T-eConcreteの普及を促進するものと期待しています。

 本セグメントの特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    CO2排出量削減および資源有効利用に貢献
    普通セメントを全く使用しないため、中詰めするコンクリート材料の製造過程で発生するCO2排出量を普通セメントで製造した場合と比較して約75%削減でき、今回の施工数量では約2.5トンのCO2排出量の削減が可能となりました。同時に産業副産物である高炉スラグを大量に使用することから、資源の有効利用にも貢献できます。

  2. 2

    下水環境に対応可能な耐硫酸性や耐摩耗性を保持
    トンネル覆工部材であるセグメントに求められる強度・耐荷重性に加え、下水環境に必要な耐硫酸性や耐摩耗性を保持しています。普通コンクリートセグメントとの同一設計基準強度の物性比較として、耐荷重は「T-eCon/Composite Segment」が上回っており、耐硫酸性では試験16週後の変化率で、耐摩耗性では試験10時間後の単位摩耗量で、いずれも普通コンクリートと同程度であることを実験により確認しています。(表1参照)

  3. 3

    様々な目的用途に応じた使用が可能
    本セグメントは、異形断面シールドや曲線部、内水圧など特殊な荷重が作用する箇所に使用される合成セグメントへの適用をはじめ、さまざまな目的用途に応じた使用が可能です。特に都市部でのシールドトンネル工事において有効な環境対策技術の一つとなります。

 なお、本技術は、「CO2排出量を大幅に削減した高強度環境配慮コンクリートの開発と二次製品化による実用化展開」により、令和4年度土木学会賞技術開発賞を受賞しました。
 今後当社は、「T-eConcrete」の優れた特性を生かしながら、様々な場面へ適用を拡大することで、CO2排出量削減と産業副産物の有効利用を推進し、低炭素かつ循環型社会の構築に貢献してまいります。

写真1 「T-eCon/Composite Segment」の打込み状況

写真1 「T-eCon/Composite Segment」の
打込み状況

写真2 「T-eCon/Composite Segment」
写真2 「T-eCon/Composite Segment」
写真3 「T-eCon/Composite Segment」の2リング組立試験

写真3 「T-eCon/Composite Segment」の
2リング組立試験

写真4 「T-eCon/Composite Segment」の現場設置状況

写真4 「T-eCon/Composite Segment」の
現場設置状況

表1 セグメントの物性比較
普通コンクリートセグメント

合成セグメント
T-eCon/Composite Segment

圧縮強度
(設計基準強度)

42N/mm2

耐荷重
(実験確認値)

452kN 454kN

耐硫酸性
(実験確認値)

基準なし
質量変化率83%(試験16週後)

質量変化率83%(試験16週後)
⇒ 普通コンクリートと同程度

耐摩耗性
(実験確認値)

基準なし
単位摩耗量0.51cm3/cm2(試験10時間後)

単位摩耗量0.53cm3/cm2(試験10時間後)
⇒ 普通コンクリートと同程度

  1. ※1

    参考資料:大成建設HP>地図に残る仕事。®>技あり>技術解説>使えば使うほど二酸化炭素を削減!新たな未来をつくるカーボンリサイクル・コンクリートの秘密
    https://www.taisei.co.jp/portal/tech/commentary/02.html

  2. ※2

    寝屋川流域下水道門真守口増補幹線(第1工区)下水管渠築造工事:寝屋川流域下水道における既設下水管の能力を補う新たな下水道幹線(増補幹線)を増設する事業。形状や寸法が様々な数種類のセグメントの設置となり、工事全体数量としては1645リング。
    (工事概要:https://www.kadomori.jp/

  3. ※3耐硫酸性:JIS原案「コンクリートの溶液浸せきによる耐薬品性試験方法(案)」、
    耐摩耗性:(一財)電力中央研究所考案「奥田式すり減り試験」にそれぞれ準拠して確認。
  4. ※4

    国内2例目:T-eConcrete/セメント・ゼロ型を用いたセグメントは、海老江ウォーターリンク株式会社発注の海老江下水処理場改築更新工事においてシールド工法で施工される配管廊トンネルのコンクリートセグメントに初適用。