使えば使うほど二酸化炭素を削減!
新たな未来をつくるカーボンリサイクル・コンクリートの秘密

2023年1月5日

環境に配慮した新しいコンクリート「T-eConcrete®」とは?

気温の上昇や生態系の変化、海面の上昇など環境に深刻な影響を及ぼしている地球温暖化。その原因となっているのが、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの増加です。

こうした地球規模の問題に対処するために現在各国で対策が進んでいますが、日本でも2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル(脱炭素)」の目標が設定されました。

カーボンニュートラルを達成するためには、温室効果ガス自体の排出量を削減するだけでなく、二酸化炭素を吸収するための取り組みを同時に進めていくことが求められます。

こうした脱炭素化の難題を達成すべく、大成建設が新たに開発し、インフラ構造物や建築物に適用しているのが環境に配慮したコンクリート「T-eConcrete®」です。

「T-eConcrete®」の4つのタイプ

「T-eConcrete®」は、さまざまな方法で二酸化炭素の排出を削減します。

そもそも一般的なコンクリートを生産する際の二酸化炭素は、コンクリートの元となるセメントをつくる工程から発生していました。つまり、セメントの量を減らして別の素材を使用することで、コンクリートの生産時に発生する二酸化炭素を大きく減少させることができるのです。

そうした発想から生まれた「T-eConcrete®」は、セメントの代わりに使用する素材や特徴によって、以下の4つのタイプに分かれています。

環境配慮コンクリート・各タイプ概要
タイプ使用材料特徴
建築基準法対応型 セメント
+高炉スラグ(製綱から生じる産業副産物)
建築基準法に準拠した建物の建設に適しています。
フライアッシュ活用型 セメント
+高炉スラグ(製綱から生じる産業副産物)
+フライアッシュ(石炭灰に一種)
石炭火力発電所から生じる産業副産物である石炭灰の有効活用が図れます。
セメント・ゼロ型 高炉スラグのみ 最大限のCO2排出量削減(最大80%)が可能です。
Carbon-Recycle
(カーボン・リサイクルコンクリート)
炭酸カルシウムなどのカーボンリサイクル製品
+高炉スラグ
コンクリート1m3あたり98~171kgのCO2を固定して、CO2排出量(吸収・排出の収支)をマイナスにします。

特に「Carbon-Recycle」(カーボンリサイクル・コンクリート)では、セメントを一切使用せず、二酸化炭素を吸収させたカーボンリサイクル製品をコンクリートの内部に固めることで、二酸化炭素の排出量をマイナスにすることができます。つまり、つくればつくるほどカーボンニュートラルに貢献できる新世代のコンクリートといえます。

CO2排出割合

カーボンリサイクル・コンクリートは普通のコンクリートとどこが違う?

二酸化炭素の排出量がマイナスになる“カーボンネガティブ”を実現したカーボンリサイクル・コンクリート。その特徴をもう少し詳しく見てみましょう。

カーボンリサイクル・コンクリートは、大気中や工場などの排気ガスなどから回収した二酸化炭素をカルシウムに吸収させて製造する炭酸カルシウムなどのカーボンリサイクル製品と、製鋼時に発生する産業副産物である高炉スラグを用いて製造するコンクリートです。

二酸化炭素を炭酸カルシウムに置き換えて練り混ぜることで、コンクリートの中に二酸化炭素をいわば封じ込めることができます。

こうした特殊なコンクリートをつくるためには専用の設備が必要だと思われがちですが、実は通常と同じ設備で製造可能です。また、普通のコンクリートと同等の強度を持ち、施工のしやすさが確保されるため、一般的な工事で使用することができます。こうした使いやすさも、カーボンリサイクル・コンクリートの普及に大きく役立つと期待されています。

【新材料関連技術】カーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete® /Carbon-Recycle」製造状況|大成建設

さらに、コンクリート内部に含まれた二酸化炭素が鉄筋の腐食を防ぐので、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を維持することも可能です。

二酸化炭素を減らしつつ、通常のセメントと同じ設備で生産できるうえ、構造物の耐久性を維持することもできる。大成建設のカーボンリサイクル・コンクリートは、すぐにでも世の中で使える革新的(画期的)な素材なのです。

カーボンリサイクル・コンクリートは今後どうなる?

カーボンリサイクル・コンクリートをはじめとする大成建設の環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」シリーズは、現在徐々に実用化が進んでいます。大成建設の研究施設敷地内での舗装をはじめ、送電ケーブルなどの設備を設置する地中トンネルなど、インフラ構造物や建築物などさまざまな場所で使用され始めています。

また、こうした技術に対する社外からの評価の動きも加速しており、2014年度には、土木学会の土木学会賞環境賞(Ⅰグループ)を国立研究開発法人土木研究所と共同受賞、2021年度には、エンジニアリング協会の第13回エンジニアリング奨励特別賞を受賞しました。
さらに、技術の活用を目的として、「T-eConcrete®研究会」を設立して社会への普及展開を図るとともに、株式会社アイシンや伊藤忠商事株式会社・Mineral Carbonation International社などとの共同開発や協業も開始されるなど、カーボンリサイクル・コンクリートをはじめとした環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」は今後さらに活躍の幅を広げていくことが期待されています。

二酸化炭素の排出量削減はもちろん、二酸化炭素を吸収する技術でカーボンネガティブを実現したカーボンリサイクル・コンクリート。
今後も大成建設は環境分野のフロントランナーを目指し、未来を創るコンクリートの運用実績を重ね、カーボンニュートラルへの取り組みを加速させていきます。

開発者の声
技術センター 社会基盤技術研究部 材工研究室 大脇 英司 氏

適用事例(カーボンリサイクル・コンクリート)

実験施設内部壁部材
現場打ち舗装(赤枠内)および石材調舗装ブロック(青枠内)

適用事例(セメント・ゼロ型)

現場打ちコンクリート(土間コンクリート・赤枠内)

コンクリート製品:「T-eConcrete®研究会」による普及、土木構造物への適用

ボックスカルバート
シールドトンネルセグメント
シールドトンネルインバートブロック

T-razzo®/石材調建材

外階段
建物エントランス

ニュースリリース