シールドマシンのローラーカッター交換システムを開発
2023年9月14日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、地中空間開発株式会社(社長:平山真治)と共同でシールドマシンのカッタービット交換工法「THESEUS工法®」※1の機能を拡張し、シールド機内からロボットの遠隔操作によりローラーカッター※2を交換できるシステムを開発しました。本システムの適用により1個当たりの重量が数百kgとなるローラーカッターを安全かつ迅速に交換することが可能となります。
地下の岩盤や巨礫を含む礫層の掘進では、シールド機先端のカッターヘッドに装着するローラーカッターが掘進に伴い摩耗または損傷した場合、地中でのローラーカッター交換作業が必要になります。これまで掘削対象地盤が硬質で切羽の安定が確保される場合は、シールド機外から人力でローラーカッターを交換できますが、巨礫を含む礫地盤では切羽崩壊を防止するために交換用立坑の築造や地盤改良が別途必要となり、工費増大や工期延伸の要因となっていました。
そこで当社と地中空間開発(株)は、スライド式交換装置やロボットを活用してシールドマシンのカッタービットを安全に交換できる工法として2021年に共同開発したTHESEUS工法を機能拡張し、ローラーカッターに適用可能な交換システムを開発しました。
本システムの構成、交換手順および特徴は以下のとおりです。
【システム構成】(図1、図2参照)
本システムは、①ローラーカッター交換ロボット(以下ロボット)、②ローラーカッターケース(インナーケース+前側・後側アウターケース、以下ケース)、③スライドシャッター(前面シャッター+背面シャッター、以下シャッター)、④可動式マンホール、⑤搬送装置から構成されています。
【交換手順】(図3参照)
摩耗・損傷したローラーカッターは、本システムにより以下の(a)~(d)の手順で回収し、逆の手順で新しいローラーカッターを取り付けます。また、カッタースポーク内部で複数のローラーカッターを交換する場合は、可動式マンホールに近い側のカッターから撤去していき、回収完了後に遠い位置のカッターから再設置作業を行います。
【特徴】(図4、5、6および写真1参照)
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ロボットによる安全かつ迅速な交換作業が可能
遠隔操作が可能なロボットを使用することで、カッタースポーク内部の狭隘な空間に人が立ち入ることなく、1個当たり数百kg(カッタービットは1個当たり数十kg)と重量物であるローラーカッターを安全かつ迅速に交換することができます。 - 2
ローラーカッター偏摩耗による掘削機能低下を抑制
従来の機械式交換方法※3はローラーカッターを球形や円筒状のホルダー内に配置し、交換時にホルダー毎回転させる構造のため、掘削時はローラーカッター背面が常時閉鎖された状態となります。特に岩盤掘削では微細な切粉がホルダー内で圧密・固結することでローラーカッターの回転を拘束し、偏摩耗が発生する場合がありました。本システムでは、インナー・アウターの二重構造ケースにローラーカッターを収める機構を採用しており、カッターヘッド前面から背面まで貫通孔を確保することでローラーカッターの偏摩耗の発生を低減し、掘削機能の低下を抑制します。 - 3
掘削性能を妨げない交換システム機構を採用
本システムが採用している交換のための機構では、カッターヘッドの厚さおよび幅が制限され、交換装置を搭載しない場合のカッターヘッドと同等の形状とすることが可能なため、掘削した土砂の流れを妨げずにチャンバー内にスムースに取り込むことができ、シールド機の掘削性能の低下を招くことはありません。
今後両社は、岩盤や巨礫を含む礫層の掘進に対して本システムの適用を進めるとともに、トンネル計画路線内に岩盤および土砂地盤が想定される場合には、対象地盤に応じてロボットを用いたカッター交換システムを使い分けることによりTHESEUS工法の適用範囲拡大を図ります。また、カッター交換作業の全自動化を目指して、更なる生産性と安全性の向上に向けた技術開発に努めてまいります。
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THESEUS工法®:シールドマシンのカッタービット交換ロボットを開発
URL:https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220324_8713.html - ※2
ローラーカッター:砂礫、粗石や岩盤の破砕およびティースビットを保護する掘削治具
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機械式交換方法:土被り100mでのシールドマシンのセンターカッター交換技術を確立
URL:https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2016/160401_3923.html