新型制振装置とAI解析技術を組み合わせた床振動抑制システム「T-Silent® TMD Floor」を開発
2025年7月7日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、オフィスなどの床振動を低コストで効果的に抑制する新システム「T-Silent TMD Floor」を開発しました。本システムには、低コストで施工性に優れた薄型・円形の新型制振装置TMD※1を採用しており、既存建物においても家具の移動などを最小限に抑え、短工期で導入することができます。さらに、2022年に開発したAIを用いてTMDの仕様や配置の最適設計を可能とする解析技術「T-Optimus® TMD」※3を組み合せることにより、従来と比べて最大50%の導入コスト削減を可能にします。
オフィスなどの鉄骨造建物では、歩行などによる床振動が執務空間の快適性や作業効率を妨げる要因となる場合があります。従来の対策としてはOAフロアと床スラブの間に振動を抑制する装置TMDを複数台設置する方法(床面積が200~300m2の場合、10~20台程度のTMD設置が必要)が一般的でしたが、1台あたりのコストが高く、台数を増やすと施工・維持管理の負担が大きくなるという課題がありました。また、建物の供用後に床振動対策としてTMDを設置する際には、床下の狭い空間や家具・什器の移動などの制約から導入の障壁となっていました。
そこで当社は、TMDの構造を薄型・円形にすることで、オフィスの床下にも設置可能な薄型コンパクトなTMDを開発しました。このTMDは、従来よりも低コストで製造でき、標準的なOAフロアパネル1枚分のスペースに収まり、施工やメンテナンスも容易に行えます。さらに、AI解析技術「T-Optimus TMD」を組み合わせ、TMDの仕様と配置を最適化し、導入コストを大幅に抑える床振動抑制システム「T-Silent TMD Floor」を完成させました。(図1参照)
本システムの特長は以下のとおりです。
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簡易構造を採用した低コストの新型TMDを開発(図2参照)
新開発のTMDは、直径420mmの円形錘を板ばね3本で支持する簡易構造を採用しており、高い支持安定性と自由度のある設計が可能で、従来品よりも製造コストを約20%削減できます。また、錘を重くできるため、設置台数を減らしても十分な振動抑制効果が得られます。 - 2
OAフロアパネル寸法、低床高にも収まる薄型円形TMDを採用(図3参照)
直径420mmとコンパクトサイズのTMDは、標準的なOAフロアパネル(500mm×500mm)の1枚分に収まる寸法となっています。これにより、既存オフィスでも家具・什器の移動を最小限に抑え、短工期で設置することができます。また、薄型のため、OAフロアと床スラブ間の床高が低い場合にも柔軟に設置が可能です。 - 3
AI解析技術による最適配置でTMD設置台数を削減可能
本システムを、当社が開発したAIの一種である進化計算※2を活用した解析技術「T-Optimus TMD」と組み合わせることで、錘の重量・ばね特性・配置を最適化することが可能です。従来の設計方法では床振動の抑制にTMD が10台必要だったのに対し、本システムの適用により、TMD6台で同等の効果が得られることを、実際の建物での検証で確認しました。
今後当社は、新築・既存建物に対して、高性能かつ低コストで容易に設置できる床振動対策として本システムの導入を積極的に提案し、建物の居住性向上に貢献してまいります。



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TMD:
チューンド・マス・ダンパー (Tuned Mass Damper) の略。1台あたり30~40 kgの錘、ばねおよび減衰材から構成され、ばねの固さを変えてTMDの共振振動数を適切に調整し、床スラブの上下振動とは逆向きに錘が動くことで振動によるエネルギーを吸収し、振動を抑制する装置。 - ※2
進化計算:
生物の進化の過程を模倣することで、対象となるパラメータを変形・合成・選択して、複雑な工学的問題の最適解を探索する手法。人の思考では辿り着けないような解についても効率的に求めることができる。 - ※3
T-Optimus® TMD:「AIを用いた床振動制振装置設計システム」
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220927_8961.html
