1車線規制で床版取替が可能なプレキャストPC床版の幅員方向接合技術を開発
2024年9月26日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、1車線規制により道路橋の床版取替工事を短工期で効率よく行えるプレキャストPC床版の幅員方向接合技術を開発しました。本技術は、車両進行方向となる橋軸方向の床版接合を効率化する施工法として2021年に開発した「Head-barジョイント」※1(写真1参照)を、橋軸直角方向である幅員方向でも床版接合に使用できるようにしました。従来工法に比べて施工性向上と工期短縮を図ることができ、交通への影響を最小限に抑えながら床版取替工事を進めることが可能となります。
現在、高度経済成長期に全国で集中的に建設された道路橋の多くが一斉に更新期を迎えており、塩害や疲労等による劣化が顕在化している鉄筋コンクリート製床版(以下、RC床版※2)をプレキャストPC床版※3(以下、PCa床版)に取り替える工事が多数計画・実施されています。道路橋の床版取替工事では、工事に伴う渋滞発生など交通への影響を最小限にするため、施工効率を高めて施工期間をできるだけ短縮することが求められます。さらに、工事区間を全面通行止めにせず、利用可能な車線を確保した状況で床版を取り替える方式の採用が増えています。従来工法では幅員方向の継ぎ目にプレストレス(圧縮力)の導入により床版の接合を行ってきましたが、接合部への配筋が必要になるなど施工性に課題があり、工期短縮が困難となっていました。
そこで当社は、橋軸方向の床版接合を効率化する施工法としてプレート定着型鉄筋Head-bar※4と高強度繊維補強モルタル間詰材を用いた「Head-barジョイント」を2021年に開発し、これまで複数プロジェクトに適用してきました。そしてこの度、「Head-barジョイント」を幅員方向の床版接合にも適用可能とする技術を開発し(図1参照)、1車線毎に効率よく短工期で床版を取り替えることが可能となりました。
本技術の特長は、以下のとおりです。
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床版接合部はプレストレス導入なしで100年相当の疲労耐久性を確保
床版同士の接合部に充填する高強度繊維補強モルタル(写真2参照)は引張力を負担できるため、接合部へのプレストレスの導入を行わずとも耐久性を確保した接合が可能となります。本技術による床版接合部は設計供用期間100年相当の疲労耐久性を有することを実証試験で確認済みで、要求性能を満たす高い安全性を確保しています。 - 2
床版接合部での配筋が不要となり、施工性の大幅な向上と工期短縮が可能
Head-barの採用により床版接合部内の配筋が不要となり、床版間の幅(間詰幅)が従来工法の4分の1以下になります。そのため、間詰材の打設数量が縮減され、小型の間詰材製造機械と打込み機材を用いて迅速に間詰作業を行うことができます。また、PCa床版の設置も容易に行えることから、現場での施工性が大幅に向上し、工期短縮を実現できます。(表1参照)




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Head-barジョイント:
道路橋の床版取替工事において、事前に工場製作されたプレキャストPC床版を現地で接合する際、接合部の間詰幅を短縮し、間詰作業の施工性を向上させることで工期短縮を実現する新しい床版接合技術。
プレキャスト床版接合技術「Head-bar® ジョイント」を開発 - ※2
RC床版:
内部に鉄筋を配置した鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)製の床版。 - ※3
PC床版:
予めプレストレス(圧縮力)をかけて製作した床版で、RC床版に比べて耐荷力と耐久性が向上する。 - ※4
Head-bar:
異型鉄筋の先端にプレートを摩擦圧接で接合したものであり、機械式鉄筋定着工法として開発された技術。Head-barは、半円形フックと同等以上の定着性能を有し、両端半円形フックでは施工困難な場所にも迅速に施工でき、配筋作業の単純化と省力化を可能にするもので、多数の採用実績がある。 - ※5
従来工法:
橋軸方向に鉄筋を配置(間詰1箇所につき6本)し、間詰コンクリート(設計基準強度50N/mm2クラスの収縮補償コンクリート)を打ち込む工法。