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切羽前方湧水測定技術「T-DrillPacker®」の測定装置設置・回収作業を高速化

測定時間の短縮により、施工工程を大幅に低減

2023年3月16日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、大量湧水の発生が予測される山岳トンネル工事において、切羽(トンネル最先端の掘削面)前方の湧水を測定する技術である「T-DrillPacker」※1の機能を拡張し、測定装置の設置・回収作業の高速化が可能となる新方式を開発しました。本技術の適用により、切羽前方にある湧水帯の湧水量および水圧を安全かつ効率的に把握するための先進ボーリング※2調査の時間短縮が図れ、施工工程を大幅に低減することができます。

 山岳トンネル工事では、工事の安全や工期、工費に重大な影響を及ぼす湧水の発生状況を事前に把握するため、掘削を一時中断して切羽から100m程度の先進ボーリングを行い、前方に存在する複数の湧水帯の位置や湧水量・水圧を測定する必要があります。
 当社では、先進ボーリング削孔中の湧水状況を事前に把握するため、2020年に削孔管を引抜かずにパッカー※3を挿入して孔壁崩壊のリスクをなくしたのち、湧水量と水圧を測定できる技術「T-DrillPacker」を開発し、これまで複数の現場で適用してきました。そして、この度、既存技術である「T-DrillPacker」の機能拡張として、測定装置先端部を孔壁に固定するパッカーの設置から回収までの作業を高速化し、短時間で測定できる「水圧圧送方式」を新たに開発しました。

 本方式のパッカー設置・回収作業手順と特徴は以下の通りです。(図1参照)

【作業手順】

  • 湧水増加箇所でボーリング削孔中断
  • パッカー設置・拡張(図1 (b)-①参照)
    ・ボーリングマシンのドリルヘッドよりパッカーを水流で圧送し、ボーリング先端部に設置
    ・パッカー設置後、更に送水を継続し削孔管内の水圧を上昇させることで、自動的にパッカー拡張流路が開放され、パッカーが拡張
    ・パッカー以奥の測定区間の湧水圧を、測定流路を通じてボーリング口元で測定

  • パッカー収縮・回収(図1 (b)-②参照)
    ・測定後、削孔管を数cm後退させパッカー内部の排水流路を開放し、パッカー内部の水が排出されることで、パッカーが収縮
    ・収縮後は、パッカー後端のワイヤーラインをウインチで巻き上げることで、パッカーを高速回収

  • パッカー回収後、ボーリング削孔再開

図1 パッカーの設置・回収方式の比較
図1 パッカーの設置・回収方式の比較

【特徴】

  1. 1

    水圧圧送方式によりパッカーの設置・回収時間を大幅に短縮
    従来、長さ1.5mのロッドを継足しながらパッカーをボーリング先端まで挿入する「ロッド方式」を用いていましたが、設置および回収作業に時間を要していました。今回、新たに開発した「水圧圧送方式」では、設置時に水流によりパッカーをボーリング先端部まで圧送し、回収時にはウインチでワイヤーを引き寄せて行うため、ロッド方式の約4時間/箇所に対して、新方式では約1.5時間/箇所まで調査時間を短縮できます。

  2. 2

    1か所当たりの調査時間短縮により多数箇所での調査が可能
    先進ボーリング調査は、トンネル掘削工事を中断して行うため、より短時間で実施することが求められていました。従来のロッド方式は中断可能な限られた時間内で1~2か所の湧水箇所での測定に留まっていましたが、新方式では、1か所当たりの調査時間を短縮できるため、より多数箇所での測定が可能となります。

 今後、当社は、高圧・大量湧水が予想される山岳トンネル工事において、本技術を積極的に活用し、安全で効率的な湧水対策の立案に役立ててまいります。

  1. ※1

    T-DrillPacker:先進ボーリング削孔中に削孔管を引き抜かずにパッカーを挿入し、作業時に孔壁が崩落しない状態を確保しながら、トンネル切羽前方の湧水量と水圧を測定する技術

  2. ※2

    先進ボーリング:施工中の切羽から前方に向かって水平方向に行うボーリング
    地質や湧水、ガス、重金属など前方の地山の状況を事前に把握し、その情報を設計・施工に反映

  3. ※3

    パッカー:ゴム製の袋状の部材を加圧し膨張させて、孔壁に密着させで孔内を水理的に隔離し、湧水区 間の湧水量・水圧をピンポイントで測定するための装置

関連情報

[参考資料]