シールドトンネル工事用脱炭素型「T-eCon®/裏込め注入材」を開発
2025年9月30日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、シールドトンネル工事向けに、CO2排出量を大幅に削減し、カーボンネガティブを実現可能な「T-eCon/裏込め注入材」を開発しました。この裏込め注入材は、当社の環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」※1の技術を応用し、材料製造時の CO2排出量を従来比 60%から最大で 110%削減できます。既存の設備・施工プロセスのまま現場導入可能で、シールドトンネル工事における環境負荷低減を図り、脱炭素社会の実現に貢献することができます。
シールドトンネル工事では、掘進時にセグメント外周と地山の間に生じるテールボイドに裏込め注入材を充填し、周辺地盤の沈下抑制とトンネル構造の安定を確保します。(図1参照)一般的に裏込め注入材は、セメントを主成分とする「A液」と水ガラスを主成分とする「B液」を混合して使用しますが、A液を構成するセメントは、生産過程においてCO₂排出量が大きく、A液の置き換えなどによる低炭素化がCO2削減の決め手となっていました。
そこで当社は、「T‑eConcrete」の「セメント・ゼロ型」(高炉スラグ活用)と「Carbon‑Recycle」(炭酸カルシウム混練)の二技術をA液へ応用し、「Carbon‑Recycle」では材料製造時のCO₂排出量の実質マイナスを実現する「T-eCon/裏込め注入材」を開発しました。「T-eCon/裏込め注入材」(セメント・ゼロ型:早期強度タイプ)は、名古屋市上下水道局発注の「名駅南雨水幹線下水道築造工事(その2)」で2025年10月から全線で適用を開始します。
本裏込め注入材の特長は以下のとおりです。
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4種類のラインアップで多様なニーズに対応
「T-eCon/裏込め注入材」は、適用条件に応じて「セメント・ゼロ型」と「Carbon-Recycle」を選択することができます。いずれも裏込め注入材に求められる強度※2に対して、標準的な強度発現を満たす「通常強度タイプ」と、標準値の5倍の強度を発現しトンネル急曲線部など特殊条件で使用される「早期強度タイプ」の2タイプがあり、計4種類のラインアップを用意することで多様なニーズに対応することができます。 - 2
材料製造時のCO2排出量を大幅に削減
「T-eCon/裏込め注入材」の材料製造時のCO2排出量の削減割合は、従来の裏込め注入材と比較して、「セメント・ゼロ型」の通常強度タイプで70%、早期強度タイプで60%、「Carbon-Recycle」の通常強度タイプで110%、早期強度タイプで105%と、いずれもCO2排出量の大幅な削減が可能です。特に「Carbon-Recycle」は通常強度・早期強度の両タイプともCO2排出量収支が実質マイナスとなるカーボンネガティブを実現しています。(図3参照) - 3
既存の設備・施工プロセスをそのまま活用して施工・品質管理可能
「T-eCon/裏込め注入材」は、従来の裏込め注入材のA液に用いていたセメントを「T-eConcrete」の技術を応用した材料に置き換えるだけで実施可能です。既存の設備や施工プロセスをそのまま利用して、従来と同様に施工・品質管理することができます。 - 4
従来品と同等の性能を保持
「T-eCon/裏込め注入材」は、実機プラントでの製造試験や延長約1kmに相当する圧送実験、注入1時間後の一軸圧縮強度試験などにより、製造効率やポンプ圧送性、A液とB液混合後の性能(可塑化時間、強度等)などが従来の裏込め注入材と同等であることを確認済みです。(写真1~4、表1参照)
今後当社は、シールドトンネル工事への「T-eCon/裏込め注入材」の適用を積極的に推進し、CO2排出量を大幅に削減することで、脱炭素社会の実現に貢献できるよう努めてまいります。





(約1kmに相当)



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環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」:
「建築基準法対応型」、「フライアッシュ活用型」、「セメント・ゼロ型」、「Carbon-Recycle」の4種類で構成され、通常コンクリートに対して最大149%のCO2排出量を削減している。本裏込め注入材は、製鉄副産物である高炉スラグをセメントの代替とする「セメント・ゼロ型」と、排気ガスなどの二酸化炭素を固定した炭酸カルシウム(カーボンリサイクル製品)を「セメント・ゼロ型」に添加する「Carbon-Recycle」の2種類のコンクリートの技術を使用。
使えば使うほど二酸化炭素を削減!新たな未来をつくるカーボンリサイクル・コンクリートの秘密https://chizu.taisei.co.jp/tech/commentary/02.html - ※2
裏込め注入材に求められる強度:
「T-eCon/裏込め注入材」の注入1時間後の一軸圧縮強度が、標準値の0.02N/mm2以上になる「通常強度タイプ」と、トンネルの急曲線部や重要構造物の近接、軟弱地盤で用いる、標準値の5倍となる0.1N/mm2以上の「早期強度タイプ」がある。