協調運転制御システム「T-iCraft®」を南摩ダム本体工事に導入
2025年9月24日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、複数の自動運転建設機械の協調運転を制御するシステム「T-iCraft」※1(図1参照)をこの度、ダム建設現場(栃木県鹿沼市上南摩町、南摩ダム本体建設工事)に導入し、自動運転クローラーダンプ、ブルドーザおよび遠隔操作バックホウの3機種の協調運転による完全無人化施工を実証しました。(写真1参照)
国土交通省は、2024年4月に『i-Construction2.0』を公表し、建設現場でのオートメーション化の実現により、今後予想される人手不足解消を図るとともに、生産性向上に向けた取り組みを加速させています。当社は、2013年より自動運転や遠隔操作により作業を行う建設機械「T-iROBO®シリーズ」※2の開発を進めており、建設現場での施工の省人化・省力化に取り組んできました。
今回の南摩ダム建設現場では、自動運転と遠隔操作による複数の建設機械を組み合わせ、協調運転制御システム「T-iCraft」の導入により、作業エリア内での完全無人化施工を実証しました。この取り組みは、国土交通省が示す、建設機械施工の自動化・遠隔化技術における『自動施工における安全ルール』にも合致するものであり、人と機械の分離による高い安全性が確保される技術となります。また、複数の高機能な自動運転建設機械を用いて、狭隘で複雑な経路での運搬や幅10mの非常に狭いエリアでの盛土などの作業を協調運転により迅速かつ正確に行えるかなどについて検証しました。
今回の実証での実施内容および結果は以下のとおりです。
【実証内容】
- 1建設機械の自動運転と遠隔操作による完全無人化施工
- 2複数建設機械の協調運転による安全かつ効率的な自動運転制御
- 3建設工事での施工サイクルのオートメーション化
【実証結果】
- 1
建設機械の協調運転制御システム「T-iCraft」は、協働させる建設機械の自由度が高く、自社製だけでなく他社製の自動建機や有人操作の建機等と協調運転を行うことが可能です。今回の実証では、有人操作機との連携はHOGシステム※3により行い、遠隔操作によるバックホウ、自動運転のクローラダンプとブルドーザの3機種により、作業エリア内での完全無人化施工を実現しました。
- 2
クローラダンプの走行ルートは最小幅5m、高低差が20mあり、折り返し走行が必要な複雑な経路ですが、周囲の障害物を検知して自動走行する機能により安全に運搬しています。また、ブルドーザ敷均しエリアは、幅10mの狭隘な場所でありながら、クローラダンプで運搬された土砂を計測し、最適な経路生成の機能を有する自動運転ブルドーザで敷均すなど、効率的な運転制御を実現しました。
- 3
複数の建設機械を用いた土砂の積込・運搬・敷均しという一連の作業について、計画を入力すると、シミュレーションによる評価を行い、その後、施工がシミュレーション通りに完了しているかをデジタルツインにより確認し、出来形管理・評価を行った結果をフィードバックして次の作業に反映させます。このように建設工事の計画、施工、出来形管理、評価、フィードバックまでの一連の施工サイクルのオートメーション化を実現しました。
今後当社は、ダム建設工事や造成工事に「T-iCraft」を積極的に導入し、国土交通省が策定した「i-Construction 2.0」を実現するための取り組みを進め、建設現場での人手不足の解消と更なる生産性向上を目指してまいります。


- ※1 協調制御システム「T-iCraft®」:
建設機械のメーカーによらず、自動運転、有人運転のいずれにも対応でき、条件が整えば最大32台までの複数機種の建設機械の協調制御を可能とするシステムで、家電総合メーカーパナソニック株式会社の関連会社であるパナソニック アドバンストテクノロジー株式会社の独自技術であるロボット自律制御および協調タスクプランニング技術を活用したシステム。同社は、モビリティ等、数多くのロボット製品の研究開発、事業展開にも取り組んでいる。T-iCraft はTaisei ict Construction Robot Automatic Fit Teamの略称。 - ※2 T-iROBO®シリーズ:
人とロボットの協働を目的として、大成建設が開発した建設作業用ロボットシリーズを示しており、今回使用した建設機械自動運転システムのラインナップは以下のとおり。
「T-iROBO® Crawler Carrier」:クローラダンプによる土砂運搬。株式会社諸岡と共同開発
「T-iROBO® Bulldozer」:ブルドーザによる土砂敷均し。 - ※3 HOG(Human Operating Guidance)システム:
T-iCraft®と通信できるタブレットに作業の指示が表示されオペレータはその作業毎に「開始」「終了」を画面操作でT-iCraft®に報告することで無人機との協調運転を行うシステム。
