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山岳トンネル底盤部の変形状況を自動計測する多点連続式変位計「T-Invert Monitor」を開発

-地山の盤膨れによるインバート支保の損傷を防止し、トンネル構造物の安全性を向上-

2025年9月18日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、山岳トンネル工事において、地山の掘削などによるトンネル底盤部(インバート支保※1:トンネル底部を支える構造)の変形状況を自動で連続計測することができる変位計「T-Invert Monitor」を開発しました。本計測装置は、地山の隆起や沈下などによる変位分布を詳細に把握することが可能で、「盤膨れ」※2などによるインバート支保の損傷を防止し、トンネル構造物の安全性を大幅に向上させることができます。

 山岳トンネル工事では、膨張性の地山や脆弱で不安定な岩盤などの地質条件下での施工で、掘削に伴い底盤部の地盤が膨れ上がる「盤膨れ」現象が生じる可能性があります。このような場合、底盤部周辺の地山変形を抑制しトンネルの安定性を確保するため、トンネル上部と同様に吹付けコンクリート、鋼製支保工、ロックボルト等を使ってインバート支保を施工する必要があります。また、トンネル工事中は、インバート支保の施工後も「盤膨れ」現象の有無を確認するために、地山の変位計測を継続して実施する必要があります。しかし、資材搬送路として利用される底盤部は、路盤として土砂などで埋め戻されるため、従来の測量法では目視できない路盤下の変形計測は困難でした。また、盤膨れなど地山の変位分布を計測により把握・監視する技術は、これまで実用化されていませんでした。

 そこで当社は、山岳トンネル施工時にインバート支保の変形状況を多点で連続して自動計測することで、「盤膨れ」による影響を変位分布として把握可能な変位計「T-Invert Monitor」を開発しました。本計測装置は、室内試験および国道7号鼠ヶ関トンネル(山形県鶴岡市)での現場計測試験を通じて計測精度や作業性の検証を行い、実用性に優れることを確認しました。

 多点連続式変位計「T-Invert Monitor」の特長は以下のとおりです。(図1、写真1参照)

  1. 1

    変位分布の詳細な計測が可能
    本計測装置は、中央部に変位センサを内蔵した長さ50cmの計測ユニットを、ジョイントを介して必要な数だけ連結したケーブル状(直径25mm)の変位計で、各ユニットがそれぞれ隆起や沈下の変位量を計測することが可能です。これにより、ユニットの数だけ多点(例えば延長10mの場合は20点)の変位量を同時に取得できることから、単点計測では困難だった変位分布を把握することができます。本計測装置を適用することで、トンネル横断面のインバート支保全体の変形状況を捉えることができ、地山の変位に応じた効果的な対策工の実施が可能となります。

  2. 2

    容易に設置でき再利用が可能
    本計測装置の適用に先立ち、トンネル底盤部に施工したインバート支保に沿ってトンネル横断方向に計測ガイド管(直径65mm)を逆アーチ型に設置した状態で路盤の埋め戻し作業を行います。埋め戻し後、計測ガイド管内にケーブル状の本計測装置を挿入すれば、ただちに自動計測が可能です。任意地点の計測終了後は、本計測装置を計測ガイド管から引き抜いて回収し、異なる計測地点の計測ガイド管に挿入して再利用することができます。計測ユニットを連結するだけで様々な長さの計測に適用でき、再利用しながら複数断面を計測できるため、経済性にも優れています。

  3. 3

    遠隔からの常時監視により安全性が向上
    本計測装置は、設定した時間ごとに連続して自動計測が可能なことから、インバート支保の変形を遠隔から常時監視することで、予期せぬインバート支保の損傷などを防止でき、トンネル構造物の安全性向上と円滑な施工を実現することができます。

 今後当社は、山岳トンネル工事に「T-Invert Monitor」の活用を積極的に提案し、トンネルをはじめ様々な構造物の安全性向上に役立つ計測装置として適用範囲の拡大に努めてまいります。

図1 T-Invert Monitorを用いたインバート支保変位分布計測の概念図
図1 T-Invert Monitorを用いたインバート支保変位分布計測の概念図
写真1 T-Invert Monitorの外観(上)と設置状況(下)
写真1 T-Invert Monitorの外観(上)と設置状況(下)
  1. ※1

    支保:トンネル周辺の岩盤の変形を抑制して、安定を確保するための構造物で、吹付コンクリート、鋼製支保工、ロックボルト等を使って構築される。

  2. ※2

    盤膨れ:トンネル工事において、掘削に伴う応力解放、岩盤の強度不足や粘土鉱物の膨潤等により、トンネル底盤部が膨れ上がる現象のこと。

DX認定・DX銘柄2025
■参考Webサイト

テクノロジー&ソリューション土木専門技術:山岳トンネル技術