超高強度繊維補強コンクリートPC床版を国道153号萱の橋橋梁補修工事に適用
2025年7月11日
大成建設株式会社
国土交通省飯⽥国道事務所が発注した国道153号萱の橋橋梁補修⼯事(以下、本工事)において、⼤成建設株式会社(社長:相川善郎)が開発した「ダクタルPC床版(NETIS番号:KT 230007-A)」が、架け替えする道路橋床版として用いられました。ダクタルPC床版は、当社が太平洋セメント製のダクタルを⽤いて開発したUFC(超⾼強度繊維補強コンクリート)床版で、優れた強度特性により床版厚を薄くすることが可能であり、また、極めて高い環境耐久性を備えています。本⼯事は、当社の技術⽀援のもと、吉川建設株式会社(社長:吉川昌利)が施工し、令和6年12⽉より供⽤が開始されています。
国道153号萱の橋は、⻑野県下伊那郡阿智村に位置し、1978年(昭和53年)に建設された4主桁非合成鈑桁橋で、橋⻑18.7m、総幅員10.75m、床版はRC構造で、床版⽀間2.9m、床版厚200mmの橋梁です。この橋は⼭間部の寒冷地で供用されており、冬季に氷点下をくり返すことによる凍害や凍結防⽌剤が散布されることによる塩害など、床版に対して厳しい環境条件が課せられています。また、危険物積載⾞両が中央⾃動⾞道の恵那⼭トンネルを通⾏できないため、名古屋と飯⽥市の間で物資を運搬する⼤型⾞両が多く通行する路線です。近年の定期点検では床版に多数のひび割れ、漏水、うきなどが確認され、床版の劣化が急激に進⾏している状況となっていました。
本⼯事は、施⼯期間中の交通を確保する必要性から、本橋に隣接して迂回路(1⾞線)を設置した後、既設の床版をカッターで切断して撤去し、その後、⼯場製作された9枚のダクタルPC床版(幅10.45m×長さ2.17mを7枚、幅10.45m×長さ1.6mの端部床版2枚)をクレーンで架設し、PC鋼線で橋軸方向を緊張して⼀体化を図りました。ダクタルPC床版の厚さを150mmと従来よりも薄くすることで床版の自重などを軽減し、既設の鋼桁や下部⼯を補強せずに適用が可能となり、床版の環境耐久性も⼤幅に向上することができたと考えています。
今回のダクタルPC床版の採⽤は、国土交通省が進める新技術導⼊促進計画のテーマの⼀つである「繊維補強コンクリート床版技術」の検討として行われたものです。令和2年度に⼟⽊研究所が公募した「短繊維補強コンクリートを⽤いた橋梁床版の耐久性向上技術に関する共同研究」の研究成果などを基に整備された、「道路橋の繊維補強コンクリート床版の性能確認マニュアル(案)」が国⼟交通省から公開されており、今回の萱の橋でのUFC床版を用いた床版架け替え技術は、このマニュアルを適⽤した試⾏⼯事と位置づけられています。
今後当社は、さらなる技術革新と持続可能なインフラ整備の実現に向けて、UFC床版の普及を推進し、社会のニーズに応える安全で安心な道路インフラの提供に貢献してまいります。


