国内初、既存超高層複合施設にAIを活用した「クラウド型CEMS」を導入
2025年7月11日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「サービス・ソリューションDX」の一環として、既存の空調システム等を改修することなく、AIを活用し最適に運転制御することで、省エネと快適性の両立を低コストで実現できるクラウド型街区エネルギー管理システム(以下、クラウド型CEMS※1:Community Energy Management System)を開発しました。
本システムは、ジェイアールセントラルビル株式会社(社長:巣山芳樹)が運営・管理するJR名古屋駅直結の超高層複合施設「JRセントラルタワーズ」(愛知県名古屋市)に試験的に導入されており、2025年12月から定額制(サブスクリプション型)の省エネサービスとして、本格運用を開始します。(図1参照)
なお、既存の超高層複合施設において、空調システムの大規模な改修を行わずに、クラウド型CEMSを導入して省エネ管理・運用を行うのは、国内で初めての取り組みです。
政府は2025年2月「第7次エネルギー基本計画」を通じて、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた省エネ強化方針を打ち出しました。これを受け、住宅やオフィスビル等においてもエネルギー利用の最適化やCO2排出量削減に積極的に取り組むことが強く求められています。
こうした目標を達成するためには、建物内のエネルギー使用状況を「見える化」し、設備機器の稼働を自動制御し最適化するなどエネルギーの効率的な利用を可能にする仕組みや機能の導入が必要です。さらに、近い将来カーボンニュートラル実現に向けて、建物単体の省エネ化にとどまらず、街区や地域レベルでエネルギー全体を最適に管理するCEMSの活用が期待されています。
そこで当社は、既存の空調システムなど既存の設備機器をそのまま活かしつつ、AIによって運転制御を最適化するクラウド型CEMSを開発しました。このシステムは、遠隔地からでも複数の施設エネルギーを一括で管理・制御できるのが特長です。2024年度には、既存超高層複合施設・JRセントラルタワーズで試験導入を実施し、省エネ効果を確認。その結果を踏まえ、2025年12月より同施設でのサブスク型省エネサービスとして本格導入が決定しました。
当社が独自に開発したクラウド型CEMSの特長は以下のとおりです。
- 1
AIによる自動制御で省エネと快適性を両立
天気予報や建物内の使用状況、過去の運用データなどをもとに、AIが最適な運転計画を自動で立案し、空調などの設備を制御します。省人化にも貢献し、管理者不足の課題にも効果的です。 - 2
既存設備機器をそのまま活かし導入コストを低減
新たな専用設備の導入は不要となります。既存建物にデータ収集装置を設置するだけで運用可能なため、初期コストを抑えながら効率的な省エネを実現します。 - 3
クラウド型ならではの柔軟な運用が可能
クラウド型システムを採用することで、遠隔や複数の場所から監視・制御が行え、関係者間での円滑な情報共有が可能。これにより、初期コストを抑えながら最新データや専門技術者の知見・ノウハウを随時反映させ、柔軟にシステム運用することができ、効率的な省エネを実現します。 - 4
システム機能を随時アップデート
建物の運用状況に応じて、クラウド上で機能を随時更新できるため、長期にわたり、継続的に最新機能の追加など、アップデートが可能です。 - 5
安心の情報セキュリティ体制
本システムは、ISO27001およびISO27017認証※2を取得済みで、高水準の情報セキュリティ対策を備えているため、安心して導入・運用できます。
今後当社は、クラウド型CEMSを、既存の超高層複合施設にとどまらず、多様な建物へと展開してまいります。省エネと快適性を両立させ、建物の価値向上に努めるとともに、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

- ※1
クラウド型CEMS:
建物や地域のエネルギー(電気・熱・空調等)の使用状況をクラウド上で一元管理・分析し、AI等を活用して最適な制御を行うシステム。 - ※2
ISO27001およびISO27017認証:
ISO27001は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格で、ISO27017は、クラウドサービスに関する情報セキュリティ管理策のガイドライン規格。
