リリース

生成AIを用いた医薬品の製造・品質管理基準検索システム「GMPナビゲーター」を開発

-GMP関連情報を迅速に入手し、高品質かつ安全・安心な製薬関連施設の構築に貢献-

2025年7月9日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、製薬関連施設の設計・施工において、医薬品の安全性と品質を保証するためにGMP(Good Manufacturing Practice:製造管理および品質管理の基準)※1に基づき実施されるバリデーション※2支援業務を、生成AIを用いて大幅に効率化し、法規制適合性の向上などを図ることができる検索システム「GMPナビゲーター(略称:GMPナビ)」を開発しました。本システムの活用により、最新のGMP関連情報を迅速に入手し、バリデーション支援業務の円滑な実施を実現します。また、本システムは知識管理(ナレッジマネジメント)との相性がよく、当社がこれまでに培った専門知識やノウハウを管理・共有するためのハブとしての役割を果たすことから、高品質かつ安全・安心な製薬関連施設の構築に貢献できます。

 製薬関連施設の建設プロジェクトでは、医薬品の品質を確保し、安全性を保証するための重要なプロセスとして、製造設備や工程・手順、品質管理の方法などが法規・ガイドラインにて定められた規格や基準を満たしていることを検証し文書化するバリデーションの実施が義務付けられています。製薬関連施設の設計・施工ならびにバリデーション支援業務においては、GMPの遵守に当たり、各担当者がGMP関連情報を入手する必要がありますが、文献調査や専門部署への問い合わせなど、的確な情報を収集し整理するために多大な時間と手間を要しており、建設プロジェクトの円滑な進行を図る上で業務の効率化が求められていました。

 そこで当社は、専門性の高いGMPに関する的確な情報を、生成AIを用いて容易かつ迅速に得られる、チャット形式の検索システム「GMPナビゲーター」を開発しました。本システムは、利用者が知りたい情報を質問すると、それに対して生成AIが適切な回答を提供することにより、最新のGMP関連情報を効率よく収集・整理し、把握することが可能となります。(図1参照)

 本システムの特長および本システムの活用により期待されるお客様のメリットは以下のとおりです。

【特長】

    1. 1

      RAGを活用することで回答精度が大幅に向上
      本システムでは、生成AIの回答精度を向上させるためにRAG(検索拡張生成)※3を活用しています。当社がこれまでに培った経験知見とノウハウに加え、過去にプロジェクトの担当者やお客様から寄せられたGMPに関する代表的な質問とその回答をデータ化し、AIの参照先データとすることで、AIによる回答の精度を大幅に向上させています。

    2. 2

      的確なGMP関連情報へ容易にアクセス可能
      本システムは、利用者の質問に対して、適切な指令文(条件や指示)を自動的に書き加える機能を実装しています。AIの特性を踏まえたこの機能により、質問に対する的確な回答が効率良く得られ、必要とするGMP関連情報へ容易にアクセスすることが可能となります。検索結果として、平易で分かりやすい回答を求める場合や、厳密な回答を求める場合のいずれにも対応することができます。

    3. 3

      不要な情報を減らすことで的確な情報を効率よく収集・整理可能
      本システムでは、質問と高い関連性があるとAIが判断・抽出した社内外の膨大なデータの中から、利用者自らの判断により関連性の低いデータをあらかじめ排除可能な機能も備えています。この機能により不要な情報を回答生成前に排除でき、回答精度を飛躍的に向上させています。

    4. 4

      国ごとに異なるGMP※4について1回の質問で対象国別に複数回答を生成
      医薬品のGMPは日本・欧州・米国でそれぞれ異なっているため、同じ設備システムに対しても国ごとまたは時代ごとに異なる基準が適用されます。本システムでは、GMPに関連する1回の質問で対象国別に複数の回答を生成することが可能です。

【お客様のメリット】

  • 社内ナレッジの有効活用:
    必要なときに必要な人がGMP領域の専門知識にアクセスでき、個人依存を解消

  • 時間効率の向上:
    GMP関連の情報収集等の時間短縮により、仕様検討などに効率よく時間を配分

  • 法規制適合性の向上:
    最新GMPを適切に反映し、設計・施工段階での法規制への適合性を向上

  • 高品質で安全・安心な施設の早期立ち上げ:
    最新GMPに基づく的確なバリデーション支援により、スムーズな施設・設備の仕様決定と立ち上げが可能

 今後当社は、本システムを製薬関連施設の建設プロジェクトに適用するとともに、DXによるエンジニアリング事業の変革を進め、お客様に対し、より高品質で安全・安心な製薬関連施設の提供に努めることで、製薬業界の発展に貢献してまいります。

図1  RAG(検索拡張生成)による検索システムイメージ
図1  RAG(検索拡張生成)による検索システムイメージ
  1. ※1

    GMP(Good Manufacturing Practice):
    品質の良い優れた医薬品を製造するための要件として定められた、医薬品の製造工程や品質管理についての基準。

  2. ※2

    バリデーション:
    製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、文書化すること。

  3. ※3

    RAG(Retrieval-Augmented Generation):
    自社に蓄積された大量の業務文書・規定などの社内情報や外部の最新情報を活用する手段として、信頼できるデータを検索して情報を抽出し、それに基づいて大規模言語モデルに回答させる方法。

  4. ※4

    国ごとに異なるGMP:
    日本:J-GMP、EU:EU-GMP、米国:FDA-CGMP、加えてPIC/S加盟国ではPIC/S GMPが基準として適用される。

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