リリース

DX対応型次世代多機能保護具「スーパーSCヘルメット」を開発

-複数保護具の機能集約によりトンネル坑内作業の安全性・快適性・作業性を向上-

2025年6月25日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、山岳トンネル工事現場で作業員が坑内作業時に装着する、個別空調や後方視認、双方向通信などの複数機能を集約したDX対応型の次世代多機能保護具「スーパーSCヘルメット(Sustainable Performance and Smart Communication Helmetの略)」を開発しました。本ヘルメットの装着により、粉塵、騒音、高湿度環境下でのトンネル坑内作業の安全性・快適性・作業性の大幅な向上が可能となります。

 山岳トンネル工事現場では、掘削や重機車両の稼働に伴い大量の粉塵・騒音が発生します。これにより、じん肺※1や騒音性難聴といった健康災害のリスクがあるため、作業員は落石等から体を保護するヘルメットやバックプロテクタに加え、電動ファン付き呼吸用保護具、防音イヤーマフなど様々な保護具を装着しています。
 しかし、これらの保護具を装着した状況での作業は体への負担が大きく、長時間になるとヘルメット内部が蒸れて快適性が損なわれ、熱中症になるリスクもあります。また、多数の装備を装着することにより動きづらくなり、作業効率も著しく低下するといった課題がありました。さらに、暗く狭いトンネル坑内を多くの重機車両が稼働・走行しており、接触事故防止にも注意が必要となります。こうした課題に対応するため、トンネル工事特有の作業環境を踏まえ、作業員の安全を第一に確保しつつ、快適性や作業性を損なわない新たな対策が求められていました。

 そこで当社は、山岳トンネル工事の粉塵、騒音、高湿度環境下において、作業員が安全、快適に効率よく作業を行えるよう、複数保護具の機能をひとつにまとめるとともに、DX機能の拡張にも対応可能な次世代多機能保護具「スーパーSCヘルメット」を開発しました。

 本ヘルメットの機能および特長は以下のとおりです。

    1. 1

      個別空調機能により健康災害を防止し、快適な作業環境を提供
      作業員が背部に装着するフィルター付き電動ファンからヘルメット内に送風を行うことで、常に新鮮な空気をヘルメット内に循環させ、粉塵を防護するとともに内部のムレを軽減します。これによりじん肺や熱中症などの健康災害を防止し、作業員に快適な作業環境を提供します。

    2. 2

      後方視認機能により重機車両との激突災害を防止
      ヘルメット後方に取り付けたカメラの映像など各種の視覚的情報をヘルメット内の額部にある小型ディスプレイ〈ヘッドアップディスプレイ(HUD)〉に投影し、視認することができます。これにより後方からの重機車両などの接近をいち早く認識して激突災害を防止することができます。

    3. 3

      騒音環境下でのコミュニケーションを向上
      外部の騒音レベルに応じてヘルメット内部での音の聞こえやすさをコントロール可能な無線通信機能付きのイヤーマフを使用することで、騒音環境下でも作業員間の会話がスムーズに行えます。作業員同士の意思疎通が容易となるため、安全性が高まるとともに作業効率の向上につながります。

    4. 4

      複数保護具の機能集約により作業性を向上
      複数保護具の機能を集約したことで、個別装着の必要がなくなるほか、各装備のケーブル類も集約されるため、動きやすくなり作業性が向上します。また、各機能の駆動に使用する電源バッテリーの統合により、多くの機能を装備しながらもヘルメットの重さは1.5kg以下と軽量化を実現しています。

    5. 5

      HUDへの情報表示によりDX機能の拡張が可能
      ヘルメットに搭載した小型演算処理装置(CPU)と無線通信機能により、HUDにカメラ映像以外の情報を投影することも可能です。将来的には作業員の体温や脈拍など健康状態のモニタリングや、トンネル坑内の温湿度、ガス・粉じん濃度等の環境情報、現在の作業進行状況の表示といったDX機能の拡張にも対応が可能なことから、坑内作業時の安全性・快適性・作業性の更なる向上が期待できます。

 今後当社は、多機能保護具「スーパーSCヘルメット」の現場適用を進めるとともに、導入効果の検証と機能改善へのフィードバックを継続しながら、山岳トンネル工事を安全かつ快適に効率よく進めるための装備として広く普及を図ってまいります。

写真1 「スーパーSCヘルメット」の外観
写真1 「スーパーSCヘルメット」の外観
写真2 「スーパーSCヘルメット」の各機能図
写真2 「スーパーSCヘルメット」の各機能図
  1. ※1

    じん肺:粉じんを長い年月にわたって多量に吸い込むことで、肺の組織が線維化する病気

DX認定・DX銘柄2025
■参考Webサイト

テクノロジー&ソリューション土木専門技術:山岳トンネル技術