リリース

トンネル掘削作業の進捗状況に合わせて複数工事設備の運転制御を最適化

-T-iDigital Fieldに新機能を追加し電力消費量・CO2排出量の大幅削減を実現-

2025年6月23日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、建設現場の施工管理業務を支援する統合プラットフォーム「T-iDigital Field※1」に山岳トンネル掘削作業の進捗状況に合わせて坑内の換気設備や掘削土砂搬出用ベルトコンベアなど複数の工事設備を自動で運転制御することができる機能を追加しました。今回追加した機能を用いて、工事設備や施工機械を連携させ運転の最適化を図ることで、電力消費量とCO2排出量の大幅な削減を実現しました。

 山岳トンネル工事では、掘削サイクル※2を繰り返しながらトンネルを構築しますが、掘削サイクルにより、粉塵の発生量が異なることから、切羽後方で稼働する送風機や集塵機などの換気設備運転を最適に行う必要があります。また、ずり出しをベルトコンベアで行う現場では、掘削サイクルの進捗状況によっては、各工事設備の稼働が一時的に集中することで電力使用量が急増し、契約電力量の超過が生じるという課題もあり、建設現場全体の電力消費量を管理する技術が求められていました。

 そこで当社は、T-iDigital Fieldの新たな機能として、山岳トンネル掘削作業の進捗状況に合わせて複数の工事設備を連携し、自動で運転制御して最適化できる機能を追加しました(図1参照)。この新機能を活用することで、坑内の粉塵濃度に応じた換気設備の風量調整や建設現場全体の電力使用量を適切に管理することができ、施工に伴う電力消費量とCO2排出量の大幅な削減および契約電力量超過防止を実現することが可能となります。

 今回、T-iDigital Fieldに追加した機能による工事設備運転について、施工中の山岳トンネル工事で導入・検証し、以下の効果を確認しました。

    1. 1

      電力消費量とCO2排出量を大幅に削減(図2参照)
      山岳トンネル工事では切羽の掘削サイクルの進捗状況よって粉塵の発生量が大きく変化するため、切羽の掘削サイクルと粉塵量に基づき、工事設備と換気設備を連携させて自動で運転制御することで最適化を図ります。自動運転制御の導入現場と未導入現場での換気設備の稼働実績を比較すると、電力消費量を約48%削減できることを確認しました。この削減効果は、CO2排出量に換算すると月間約17tに相当します。

    2. 2

      建設現場の契約電力量超過を未然に防止(図3参照)
      切羽の掘削サイクルの進捗状況に基づき電力消費の負荷が大きい複数の工事設備を連携させて自動で運転制御することで、工事現場全体の電力消費量を管理でき、契約電力量超過を未然に防止することが可能です。

 今後当社は、T-iDigital Fieldに搭載した各種施工支援アプリケーションなどから建設現場で収集・蓄積されるデータとその分析結果に基づき、工事設備や施工機械の運転制御の最適化を図り、建設現場での作業効率化および生産性向上に貢献する取り組みを推進してまいります。

図1 T-iDigital Fieldの機能概要
図1 T-iDigital Fieldの機能概要
図2 換気設備の自動運転制御機能の概要
図2 換気設備の自動運転制御機能の概要
図3 工事現場全体の電力消費量コントロール機能の概要
図3 工事現場全体の電力消費量コントロール機能の概要
  1. ※1

    T-iDigital Field:
    当社が2020年に開発したT-iDigital Fieldは、CPS(Cyber-Physical Systems) の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータをAIや多変量分析などにより、最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援、生産性の向上を目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。その後、継続して機能向上を進めており、建設現場のカメラ映像をはじめIoT機器や各種センサから得られる膨大なデジタルデータを基にデジタルツインの活用などにより施工状況を可視化し、遠隔地も含めた工事関係者間でのリアルタイムな情報共有を実現することで、効率的な現場管理および生産性の向上を可能としている。また、本技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放され、建設作業の遠隔操作や自動化が効果的に機能することでさらなる施工効率や安全性の向上などの新たな付加価値の創出により、これまでの建設業における常識の著しい変革につながることが期待される。

  2. ※2

    掘削サイクル:
    山岳トンネル工事では、削孔・爆薬装填・発破・ずり出し・こそく(岩片や浮石を落下させる作業)・吹き付け・支保工の建て込み・ロックボルト打設という一連の作業を繰り返してトンネルを構築する。

DX認定・DX銘柄2025
■参考Webサイト

テクノロジー&ソリューション土木専門技術:山岳トンネル技術