「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を高速道路構造物の場所打ち施工に国内初適用
2025年5月22日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、阪神高速道路株式会社との共同研究による試験施工として、阪神高速道路14号松原線一部区間(喜連瓜破-三宅間)において、CO2排出量収支をマイナス(カーボンネガティブ)にするカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」※1を用いた国内初の場所打ち施工を実施し、中央分離帯を構築しました。本工事では移動式コンクリート製造プラントを用い、施工現場で製造した「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を通常のコンクリートと同様に場所打ちで施工し道路構造物の構築が可能であることを実証しました。
当社が2021年に発表したカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」は、セメントの代わりに高炉スラグを用い、大気中のCO2を吸収して製造した炭酸カルシウムを混合することでCO2を内部に固定し、材料に起因するCO2排出量収支がマイナスになるカーボンネガティブを可能としました。このコンクリートは、これまで工場製作によるプレキャスト部材での活用にとどまっていましたが、通常のコンクリートと同様の手順により場所打ち施工でも使用可能となれば、脱炭素社会への更なる貢献が期待できます。
そこで当社は、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の場所打ち施工適用にあたり、外気温が30℃を超える夏季(2024年7月18日)に、配合および施工法を検討したうえで、暑中コンクリート※2としての適切な施工管理のもと、阪神高速道路一部区間の中央分離帯を打設・構築し、従来と同様の手順で場所打ち施工できることを確認しました。(表1、写真1~3参照)また、施工後に実施したモニタリングおよび耐久性評価試験により、施工後の品質を確認しており、長期的なモニタリングおよび耐久性評価試験にも着手しています。
「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を場所打ち施工に適用した本工事の特長は以下の通りです。
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CO2排出量を大幅に削減しカーボンネガティブを達成
場所打ち施工による高速道路構造物への「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の使用に際して、セメント全量を高炉スラグに置換するとともに、CO2を吸収・固定した炭酸カルシウムを練り混ぜて製造することで、コンクリート1m3あたりのCO2削減量294kgを実現しました。当初設計の普通コンクリートを使用した場合のCO2排出量は274kg/m3であることから、本工事での材料に起因するCO2排出量収支は-20kg/m3となり、カーボンネガティブを達成しています。(表2、図1参照) - 2
設計強度を満足すると共に表層品質を確保
コンクリートの設計基準強度27N/mm2に対して、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」は30.8N/mm2の圧縮強度を示し、設計を上回る強度を達成しました。また、施工後1カ月後と3カ月後に実施した耐久性評価試験(表層透気試験:トレント法※3)により表層品質を確認しており、耐久性の保持が期待できます。(図2参照)
なお、今回の取り組みは、建設リサイクルの推進に向けた模範的取り組み事例として評価され、令和6年度近畿建設リサイクル表彰 「再使用・再生利用部門 奨励賞」※4を受賞しました。
今後当社は、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の開発・実用化を継続し、公共インフラをはじめとした構造物等への実装を促進することで、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
適用場所 | 阪神高速道路14号松原線 喜連瓜破-三宅間 松P-470付近 |
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適用対象 | 中央分離帯 |
適用区間 | 10m |
コンクリート数量 | 5.2m3 |



①当初設計のコンクリートを使用した場合のCO2排出量 | 274kg/m3 |
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②セメントの高炉スラグへの置換などによるCO2削減量 | 180kg/m3 |
③炭酸カルシウムに吸収・固定したCO2量 | 114kg/m3 |
④T-eConcrete/Carbon-RecycleのCO2排出量収支(①-②-③) | -20kg/m3 |
⑤コンクリート変更によるCO2削減量(②+③) | 294kg/m3(総量:約1.5トン) |


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カーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」
https://chizu.taisei.co.jp/tech/commentary/02.html - ※2
暑中コンクリート
日平均気温が25℃を越える暑い時期に施工されるコンクリートで、コンクリート打設時の材料性状の変化や、打設後の早い段階における乾燥や日射の影響によってひび割れの発生が懸念されるため、配合や養生等に配慮が必要になる。 - ※3
表層透気試験(トレント法)
コンクリート表層部の透気係数を計測して表層部の緻密さを評価する試験方法。透気係数が小さいほどコンクリート表層が緻密であり、有害物質の侵入を抑制し耐久性が向上する。 - ※4
令和6年度近畿建設リサイクル表彰 「再使用・再生利用部門 奨励賞」
https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/fukusan/hyoushou/jushou.html