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国内最高レベルの性能を有する遠心力載荷実験装置の運用開始

-巨大地震や長周期地震を再現した高精度な実験・検証が可能に-

2025年4月1日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、当社技術センター(横浜市戸塚区)の「遠心力載荷実験装置」※1を国内最高レベルの性能を持つ装置に更新し、運用を開始しました。(写真1参照)新しい実験装置は、巨大地震や長周期地震が発生した際の地盤の変形状態を模型実験で高精度に再現できるほか、水平方向だけでなく鉛直方向にも同時に加振することができるため、高い構造安全性が求められる原子力施設などへの設計法検証に活用できるようになります。

 「遠心力載荷実験装置」は、振動台を備えたアームの高速回転によって試験体となる模型に遠心力を作用させ、深い地中と同じような大きな圧力がかかった状態を作り出します。さらに振動台を用いて模型を加振し地震時の挙動を再現することで、地盤内における杭などの構造物基礎の支持力や軟弱地盤における液状化対策効果を検証し、新技術の開発などを推進することが可能となります。(図1、図2参照)

 新しい遠心力載荷実験装置の性能と特長は以下のとおりです。(表1、表2参照)

  1. 1

    レベル2相当の巨大地震の再現が可能
    旧装置の振動台で再現できる地震動はレベル1相当※2の中地震(20G)でしたが、国内最高性能を誇る新装置の振動台では水平・鉛直方向ともにレベル2相当※3の地震動を超える最大加速度60Gまでの加振が可能です。これにより巨大地震発生時の地盤内の挙動を模型実験で高精度に再現することができます。

  2. 2

    免震建物や超高層建物への長周期地震動の影響把握が可能
    南海トラフ巨大地震発生への懸念から、免震建物や超高層建物の構造設計において、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ「長周期地震動」の影響を検討することが義務化されています。新装置の振動台の最大振幅は20mmで、長周期地震動に相当する変位量※4に対応でき、長周期地震動による構造物への影響を事前に検証することが可能です。

  3. 3

    水平・鉛直方向の同時加振による挙動再現が可能
    旧装置で使用していた振動台は水平方向の加振機能のみでしたが、新装置の振動台は鉛直方向の加振機能も搭載しており、水平・鉛直両方向の同時加振が可能です。そのため、原子力施設などを対象とした、水平方向と鉛直方向の揺れが同時に作用した場合の挙動を考慮した設計法の検証が行えます。

  4. 4

    大きな模型寸法で実験でき、複雑な条件設定にも対応可能
    新装置では実験模型などの試験体の搭載スペースが長さ2m×幅2m×高さ2mと大幅に拡大しました(旧装置は1m×1m×1m)。これにより、模型寸法を大きくして杭などの構造物基礎や地盤改良体などの形状をより細かく設定した実験や、広い敷地に複数の構造物が隣接するような複雑な状況を再現した実験を実施することができます。

 今後当社は、本装置の機能を最大限に活用し、構造物の基礎構造や軟弱地盤に関わる技術の研究開発と検証を継続して進めることで、災害に強い安全安心な社会の実現に貢献してまいります。

遠心力載荷実験装置全景
表1 装置基本性能,表2 振動台加振性能
地盤中の構造物に働く圧力のイメージ
「遠心力載荷実験装置」の仕組み
  1. ※1

    遠心力載荷実験装置
    当社技術センターでは1990年から遠心力載荷実験装置の運用を開始し、堤防・橋梁などの土木構造物や超高層ビルなどの建築物を支える「基礎」と「地盤」に関わる技術の研究開発に活用している。

  2. ※2

    レベル1相当の地震動:
    構造物の供用期間中に一度以上発生する確率が高い中地震動

  3. ※3

    レベル2相当の地震動:
    当該地において想定される最大規模の地震動

  4. ※4

    長周期地震動に相当する変位量:
    重力の50倍の遠心力が作用した場合における振動台の振幅20mmの変位量は、実地盤では1mに相当