「T-iROBO® Rigid Dump」と「T-iDigital® Field」の連携による無人化施工を実施
2025年3月19日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、成瀬ダム原石山採取工事※1(秋田県東成瀬村、発注者:東北地方整備局)において、当社開発のリジッドダンプ自動運転技術「T-iROBO Rigid Dump」※2と施工管理支援基盤システム「T-iDigital Field」※3を連携させ、複数台の自動化建設機械協働による無人化施工の現場実証を実施しました。
生産労働力人口の減少が社会問題となっている中、建設業界でも作業員の担い手不足などが深刻な課題となっており、施工の無人化・省力化による生産性および安全性の向上などが急務となっています。当社ではこれまで自動運転・遠隔操作による建設機械の無人化施工技術「T-iROBO」シリーズや、施工中に取得する膨大なデジタルデータを活用して施工管理業務を支援する基盤システム「T-iDigital Field」の開発と実証を進め建設現場における生産性向上に努めてきました。
そして今回、当社では成瀬ダム原石山採取工事において、個別に開発を進めてきた上記2つの技術を相互に連携させ、国土交通省が2024年4月に発表したアクションプラン「i-Construction 2.0」※4が提唱する、「施工、データ連携、施工管理の3つのオートメーション化」の観点から、現場への適用状況および効果を検証しました。
【現場実証内容】
成瀬ダム原石山採取工事の現場内に、「自動施工における安全ルールVer.1.0」※5(令和6年3月発表)を参考にした、自動運転距離が片道約250mの自動化・無人化施工の専用エリアを設定しました。この専用エリア内で、自動走行リジッドダンプ「T-iROBO Rigid Dump」2台とHOGシステム※6を設置した遠隔操作油圧ショベル1台の計3台の建設機械を用いて、オペレーター2名が自動運転(最高速度約20km/h)と遠隔操縦を管理し、ダム用骨材の運搬作業(総運搬量約47,200t)を夜間作業時間帯に実施しました。運搬作業中の取得データは、「T-iDigital Field」のデジタルツイン技術により建設機械の制御等にフィードバックされ、複数の自動化建設機械の協調運転による運搬作業を実施しました。
【開発技術の現場適用による効果】(図1参照)
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施工のオートメーション化:オペレーターを2名に省人化。建設機械のスムーズな協調運転を実現
今回の無人化施工では、遠隔操作と自動運転管理のオペレーター2名が施工状況などを確認しながら建設機械を制御し連携を図ることで、協調運転による施工のオートメーション化を実現しました。
また、万一の逸走に備え、東京大学と共同開発した無線緊急停止システム(送信器―受信器間の通信状況の常時確認により確実な停止が可能)を手元に配置し、監視しながら施工することで安全性の向上を図りました。 - 2
データ連携のオートメーション化:データ入力や報告書作成の作業時間を削減。いつどこでもデータ共有可能
今回の無人化施工時に取得された運搬量、運搬効率(m3/hr)、実運搬距離等のデジタルデータは、「T-iDigital Field」のクラウド上でリアルタイムに収集、自動解析され、いつどこでも容易に必要なデータの閲覧や表示・印刷が可能となりました。
また、「T-iDigital Field」のデジタルツイン技術を用いることで、様々な建設現場で活用できるデータ、ノウハウの蓄積と有用な情報の発信が可能となり、データ連携の適用範囲を拡大により、データ入力や探索に係る手間などを大幅な削減できます。 - 3
施工管理のオートメーション化:昼夜間の施工管理業務、作業進捗および安全確認をテレワークで実施可能
「T-iDigital Field」は、建設現場以外からでも簡単に各種データの閲覧が可能なため、遠隔から建設現場での作業進捗状況および安全確認などの施工管理業務を行うことができました。
また、現場監視のためにWEBカメラなどを用いて、遠隔から施工管理が行え、建設現場への移動時間の短縮や、機械故障など緊急対応が必要な事案が発生した際、現場監視画像から原因特定の手がかりを早期に得ることで、早期復旧が可能となり、施工管理手段として必要不可欠なツールになることが期待されます。
今後当社は、無人化施工技術「T-iROBO」シリーズと施工管理支援基盤システム「T-iDigital Field」を相互に連携させることで、デジタル技術活用による建設生産の効率化・省人化および現場環境での安全性・快適性の向上を図り、生産性の高い建設現場を構築するとともに、「i-Construction 2.0」の実現に貢献してまいります。

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成瀬ダム原石山採取工事:
秋田県内を流れる雄物川水系成瀬川に建設される成瀬ダムの堤体材料となるCSG材及びコンクリート骨材の採取・製造・貯蔵およびそれに伴う廃棄岩処理等を行う工事。 - ※2
T-iROBO®:
人とロボットの協働を目的として、大成建設が開発した各種作業用ロボットの総称。自動化建設機械には、「T-iROBO Rigid Dump」の他に、振動ローラーが施工位置を把握しながら、自ら判断して自動で転圧作業を行う転圧走行無人化施工システム「T-iROBO® Roller」、人体検知システムにより安全性を確保しながら運搬作業を自動で行う自動運転クローラダンプ「T-iROBO® Crawler Carrier」などがある。 - ※3
T-iDigital® Field:
CPS(Cyber-Physical Systems)の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータをAIや多変量分析などにより、最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援、生産性の向上を目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。
この技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放され、建設作業の遠隔操作や自動化が効果的に機能することでさらなる施工効率や安全性の向上などの新たな付加価値の創出により、これまでの建設業における常識の著しい変革につながることが期待される。 - ※4
i-Construction 2.0:
国土交通省が令和6年4月に公表した建設業の労働生産性向上のためのアクションプラン。2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上することを目指し、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」の3本の柱が提示されている。 - ※5
自動施工における安全ルールVer.1.0:
「建設機械施工の自動化・自律化協議会」が令和6年3月に公表した自動施工の安全方策ガイドライン。自動化施工の普及を目的として標準的な安全方策をまとめたもので、自動化建設機械と有人作業のエリア分け指針等が示されている。今後も実情を踏まえて継続的にアップデートされる予定。 - ※6
HOG(Human Operating Guidance)システム:
搭乗や遠隔で手動操作する建設機械と自動化建設機械との、協調運転を行うためのシステム。オペレーターは操作指示画面から自動化建設機械への指示が可能。

- ※DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。