お知らせ

3Dプリンティング技術を用いた巻き立て耐震補強柱の性能確認実験を公開

-内閣府SIP第3期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の成果を公表-

2025年2月3日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」※1課題のサブ課題B「先進的なインフラメンテナンスサイクルの構築」(研究開発責任者:東京大学 石田哲也教授)において、3Dプリンティング技術を用いて既設柱に巻き立て耐震補強を施し、耐震性能を確認する交番載荷実験を2025年1月30日に公開しました。

 当社は本プログラムにおいて3Dプリンティング技術を用いた柱の靭性向上技術の開発に取り組み、これまでに新設柱の構築を想定し、事前に組み上がっている鉄筋を回避しながら3Dプリンティングにより柱の外殻を構築する積層工法を開発しています。
 今回の公開実験では、巻き立て部に配置する補強筋を回避しながら短繊維補強モルタルを用いて外殻を3Dプリンティングで構築し、既設柱と外殻との間に高流動コンクリートを打設することで巻き立て耐震補強を行いました。コンクリート打設時に作用する圧力を高強度の外殻が負担することで外部支保工を完全に省略することができ、耐震補強の生産性向上が図れます。また、巻き立て補強筋には、同じくSIP第3期課題のサブ課題Bにおいて別途開発されたバサルトFRTPロッド※2を使用しています。
 3Dプリンティング技術を用いた巻き立て耐震補強柱の性能確認実験は世界初の試みで、3Dプリンティング技術とバサルトFRTPを組み合わせることにより、通常の鉄筋コンクリート柱より耐震性能が大幅に向上することを確認しました。これにより、既設柱の巻き立て耐震補強においてさらなる省力化・高強度化・高耐久化が期待できます。

 なお、公開実験には、SIPの提唱機関である内閣府、「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の研究推進法人である国立研究開発法人土木研究所、プログラムディレクター(PD)をはじめとするマネジメント関係者、サブ課題Bの開発関係者など約30名が参加し、久田真PD(東北大学大学院:教授)より「この技術が世界と渡り合える技術であることを広く発信して欲しい。今後イノベーションを加速・先導するための共通ルールを作っていくことも重要である。」との講評をいただきました。

 今後当社は、SIPでの関係各署との連携を通じて、3Dプリンティング技術を用いた柱の靭性向上技術の確立、性能・品質評価法を含めた技術パッケージへの展開および社会実装を推進し、持続可能なインフラマネジメントシステムの構築に貢献してまいります。

図1 巻き立て耐震補強柱の概要および3Dプリンティングによる外殻の製作状況
図1 巻き立て耐震補強柱の概要および3Dプリンティングによる外殻の製作状況
写真1 公開実験の実施状況
写真1 公開実験の実施状況
  1. ※1

    戦略的イノベーション創造プログラム(通称、SIP):
    内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト。国民にとって真に必要な社会的課題や日本経済再生に寄与できるような世界を先導する課題に取り組んでいる。令和5年度からの5年間を第3期として14課題を推進している。
    https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/index.html

  2. ※2

    バサルトFRTPロッド(Basalt Fiber Reinforced Thermoplastic Rod):
    天然素材である玄武岩を溶融解して紡いだ糸で作ったバサルト繊維にポリプロピレン樹脂を混ぜ、熱可塑性プラスチックで被覆して製造した補強筋。重量は鉄筋の1/5程度と軽量で、加えて、低磁性、耐腐食性、高強度、低コストといった特性を併せ持つ。