リリース

360度カメラ画像とAIを用いた「工事進捗確認システム」の本格運用開始

-現場状況の遠隔確認と図面の自動作成により施工管理業務効率化を実現-

2025年1月27日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、360度カメラと画像認識AIを用いて建設現場の施工状況や資機材の所在などを自動で図面化することができる「工事進捗確認システム」※1を機能拡張し、建設現場での本格的な運用を開始しました。

 これまで建設工事における施工管理業務では、工事の施工状況や進捗などを現場内の作業箇所まで移動して目視で確認するのが基本でした。こうした確認作業は、その都度準備が必要で移動にも時間がかかることから、特に高層ビルなど大規模な建設現場では移動や確認に伴う工事担当者の負担が大きくなっていました。また、工事の進捗に伴い変化する多種多様で大量の資機材の在庫管理や所在確認にも多大な労力と時間を要しており、施工管理業務の効率化を図るうえで課題となっていました。
 そこで当社は、2022年に現場巡回時に360度カメラで撮影した動画を画像認識AIで分析し、現場の施工状況および各種資機材の保管場所を自動で図面表示することができる「工事進捗確認システム」を開発しました。この度、この従来システムについて多くの建設現場での試行から得られた課題や工事担当者の利用状況をもとに、専用アプリのインストールが不要で簡単に操作でき、Wi-Fi環境により各種センサーや情報機器と連動する独自開発のデジタル情報標準基盤との連携が可能となるよう機能を拡張し、導入効果を確認するとともに、施工管理業務の効率化により生産性の向上を実現する実用化システムとして本格運用を開始しました。

 本システムの特長および導入効果は以下のとおりです。

【特長】

  1. 1

    建設現場への導入・運用の手間を省き操作を簡易化
    従来システムでは現場撮影時に360度カメラと専用アプリをインストールしたスマートフォンを所持しながら操作する必要がありました。今回の改良により、スマートフォンなどの情報端末にインストールされた専用アプリが不要となり、360度カメラのみでの運用が可能になり、操作の簡易化が図れます。

  2. 2

    簡単な操作で工事の進捗状況や資機材の所在等の図面化が可能(図1、図2参照)
    本システムは、現場内の柱や壁など巡回時の歩行ルート上に図面位置情報を登録した2次元コードマーカーをあらかじめ設置しておき、現場巡回時に検出したマーカーの登録情報と、360度カメラから取得したセンシングデータを基に現場内の位置情報を自動で取得する機能を備えています。そのため撮影動画を本システムに送信するだけで工事の進捗状況や資機材の所在等を図面化することができます。壁・天井・床の内装工事など16種類の工種の進捗状況および24種類の資機材の所在をAIが判断して自動で図面化できます。

  3. 3

    デジタル情報標準基盤「T-Basis X」と連携が可能
    本システムの収集データは、メッシュWi-Fi環境の構築により各種センサーや情報機器と連動する当社のデジタル情報標準基盤「T-Basis X」※2上で閲覧できます。T-Basis Xとの連携により、重点的に状況確認したい場所や資機材の情報はT-Basis Xの定点カメラや無線タグでリアルタイムに把握し、それ以外の場所や資機材については本システムで現状を確認するといった使い方が可能です。

【導入効果】
 これまでに当社の30箇所以上の建設現場で本システムの試行による運用を行い、生産性向上につながる様々な効果を実証しました。
  1. a

    現場確認業務にかかる時間を削減
    本システムの運用実績は、撮影日数が延べ600日、撮影フロア数が延べ1,800階を超えており、現場確認業務にかかる時間を1時間/(日・人)以上削減できることを確認しました。

  2. b

    工事関係者間での合意形成や書類作成等に活用が可能
    本システムの導入により、打合せ場所に関わらず資機材の所在など現場内を短時間で確認できることからスムーズな合意形成が可能となるほか、報告書等の書類作成への有効活用などの効果が期待できます。

 今後当社は、本システムの運用により取得した各種データを活かしてシステムの更なる高度化を図るとともに、建設現場への普及展開を進め、建設工事のDX推進および生産性向上に取り組んでまいります。

図1 実施適用を開始した本システムの概要
図1 実施適用を開始した本システムの概要
図2 AIの認識対象(工種、資機材)
図2 AIの認識対象(工種、資機材)
  1. ※1

    工事進捗確認システム:工事進捗や資機材の保管状況を図面表示する機能を有するシステム
    https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220517_8747.html

  2. ※2

    T-BasisX:建築現場における各種ロボットやAI、IoT機器などの活用に向けて、デジタル情報の標準基盤として2020年に開発。メッシュWi-Fi及び位置把握ソリューションを一体化し、IoT活用見える化システムと連携させた標準基盤となっている。
    https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210420_8100.html

DX認定
  • DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。