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高アルカリ性排水の中和処理技術「T-CARBON® UFB」を開発

-ウルトラファインバブルにより炭酸ガス添加量を大幅削減し、環境負荷低減に貢献-

2025年1月7日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、菅機械工業株式会社(社長:菅大樹)と共同で、直径が1μm未満の微細泡(ウルトラファインバブル、以下、UFB)を用いた高アルカリ性排水の中和処理技術「T-CARBON UFB」を開発しました。本技術の適用により、建設工事におけるコンクリート打設時の洗い水など高アルカリ性排水の中和処理に用いる炭酸ガスの添加量を大幅に削減することができ、処理コストの低減および炭酸ガスの大気中への放出抑制が可能となり、環境負荷低減に貢献することができます。

 コンクリート打設が伴う建設工事では、セメントなどの使用で高アルカリ性の工事排水が発生するため、現場内の排水処理設備により高アルカリ性に対する中和処理と懸濁物※1の除去を行います。この中和処理には、排水内に気体の炭酸ガスを直接送り込む曝気方式が多くの工事現場で採用されていますが、曝気方式による中和処理では大量の炭酸ガスを添加する必要があることから、処理コストの増大に加え、溶解しきれない炭酸ガスが大気中に放出されてしまい環境負荷が大きくなることが課題となっており、処理方法の改善が望まれていました。
 そこで当社は、現場内の排水処理設備にUFBを発生させる装置を取付け、UFBによって炭酸ガスの反応効率を向上させることで、炭酸ガスの添加量削減と大気中への放出を抑制する中和処理技術「T-CARBON UFB」を開発し、その効果を山岳トンネル工事現場で検証しました。

 本技術の特長は以下のとおりです。(写真1、写真2、図1~4参照)

  1. 1

    UFBにより炭酸ガスの反応効率を高め、添加量を大幅に削減
    UFBを用いることで炭酸ガスの比表面積※2が増大し、高アルカリ性の排水内で炭酸ガスが溶解する反応効率が向上します。これにより少量の炭酸ガス添加量で速やかな中和処理が可能となります。現場での検証結果から、従来の曝気処理方式と比較して炭酸ガス添加量を70%削減可能なことが確認※3されており、これは一般的な山岳トンネル工事での現場1件におけるCO2削減効果として11.5t-CO2/年に相当します。

  2. 2

    炭酸ガスの大気中への放出抑制により環境負荷低減に貢献
    高アルカリ性排水の中和処理に用いる炭酸ガス添加量の削減に伴い、排水内で溶解しきれない炭酸ガスの大気中への放出が抑制され、環境負荷低減に貢献できます。

  3. 3

    現場の標準的な排水処理設備に後付けで中和処理が可能
    UFB発生装置は、建設工事で用いる標準的な排水処理設備に後付けで取付け可能です。また、中和処理のための追加処理水槽などの大がかりな設備も不要です。

 今後当社は、コンクリート打設などに伴い高アルカリ性排水が発生する建設工事に本技術を積極的に導入し、建設事業におけるカーボンニュートラルに貢献することで、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めてまいります。

  1. ※1

    懸濁物:水処理過程で水中に浮遊する微粒子状の固形物

  2. ※2

    比表面積:単位質量あたりの表面積(m2/g)のこと

  3. ※3

    炭酸ガス削減効果の確認:処理能力50m3/hの濁水処理設備において曝気とUFBの処理方式を切り替えて、中和処理に伴う炭酸ガスの添加実績を記録し、比較して効果を算出