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大成建設グループ次世代技術研究所で建築設備機器のカーボンニュートラル化を推進

-国内初のゼロカーボンビル実現に向け、調達/修繕時のCO2排出量を削減-

2024年12月24日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、国内初となる「ゼロカーボンビル」※1の実現を目指し、埼玉県幸手市に建設中の「大成建設グループ次世代技術研究所研究管理棟」※2(図1参照)において、導入する建築設備機器のカーボンニュートラル化を推進する取り組みを実施しています。当社で2022年に開発した建物のライフサイクルにおけるCO2排出量の評価指標「T-ZCB®」※3(図2参照)に基づき、本研究管理棟に導入する建築設備機器の調達/修繕時のCO2排出量を削減します。

 建築設備分野では、本研究管理棟でも認証を取得しているZEBに代表されるように、快適な室内環境を保ちながら省エネ・創エネによって消費エネルギーをゼロに近づけ、建物の運用段階で排出されるCO2(オペレーショナルカーボン※4)を削減する手法が中心となっていました。一方で、省エネのために設置する高効率設備機器は一般仕様の機器よりもサイズが大きくなる傾向にあり、創エネのための太陽光パネルの導入も併せると、調達/修繕時などに排出されるCO2(エンボディドカーボン※4)の削減に向けては不利となる側面があります。また従来、建築物におけるエンボディドカーボン削減の手法としては、木造化・木質化をはじめとした建物躯体関連の取り組みが中心であり、メーカーからの調達品が多い建築設備機器での取り組みは限定的となっていました。

図1 大成建設グループ次世代技術研究所予想図
図1 大成建設グループ次世代技術研究所予想図
図2T-ZCBチャート(着色部:調達/修繕段階)
図2 T-ZCBチャート(着色部:調達/修繕段階)

 そこで当社は、本研究管理棟に導入する建築設備機器のうち、主に配電盤※5、アルミ導体ケーブル※6、パッケージエアコン※7など建築設備機器の調達/修繕時において、メーカー各社の協力を得ながらCO2排出量を削減する工夫を施しました。各設備機器に対する施策概要と削減比率は下表のとおりです。

建築設備機器施策概要削減比率
配電盤※5 筐体に「T-ニアゼロスチール」※8鋼板を採用 -18%(キュービクル式配電盤)
-23%(動力盤・分電盤)
アルミ導体ケーブル※6 地金製造に再エネを使用したアルミ導体ケーブルを採用 -44%
パッケージエアコン※7 組立工場における再エネ活用等による製造時CO2排出量の削減
機器廃棄時に回収される再生フロンの充填
-100%相当
(削減比率:対策無しの場合と比較した各設備機器のCO2排出量の削減割合)

 本技術研究所における建築設備分野でのカーボンニュートラルに向けた取り組みでは、この他、アルミ箔をラミネートした段ボール製の空調用ダクト(コルエアダクト)をはじめとする従来技術についても、CO2排出量低減の観点から採用しています。

 今後当社は、次世代技術研究所の建設・運用で得られる知見を活かし、建物のライフサイクルにおけるCO2排出量の把握・管理および削減に向けた様々な技術の導入を進めていくとともに、新築・改修を検討するお客様に対し、ゼロカーボンビルの提案を積極的に行ってまいります。

  1. ※1

    ゼロカーボンビル:
    調達段階(建設資材製造・入手)、施工段階、運用段階(建物の運用および修繕・解体)まで含めた建物のライフサイクル全体で発生するCO2収支をゼロにする建物。

  2. ※2

    大成建設グループ次世代技術研究所研究管理棟:
    本研究管理棟では、当社が開発したゼロカーボンビルの評価指標である「T-ZCB」※3を活用して、建物のライフサイクル全体で発生するCO2収支をゼロにするゼロカーボンを目指している。当社は、調達・施工・運用の各段階において、木質および低炭素建設資材の適用、施工時の脱炭素燃料の採用や先進的な省エネルギー・創エネルギー技術の導入などCO2排出量の削減に向けた様々な取り組みを進めており、T-ZCBに基づく評価では、設計レベルで建物ライフサイクルにおけるカーボン・ネガティブの実現により、ゼロカーボン達成が見込まれる。

  3. ※3

    T-ZCB®:
    初期計画段階で建築物のライフサイクルCO2排出量及びCO2削減技術の効果を可視化し、建築物の脱炭素化を体系的に評価するシステムであり、LCA研究の権威である法政大学川久保教授にご指導いただきながら、共同開発した概念。

  4. ※4

    建築物のライフサイクルCO2排出量のうち、調達・施工・修繕・解体段階で排出されるものをエンボディドカーボン、運用段階で排出されるものをオペレーショナルカーボンとする。

  5. ※5

    配電盤のCO2排出量低減:
    配電盤の筐体を製作するのに必要な鋼板を、高炉鋼材に対して95%CO2排出量を削減したT-ニアゼロスチールに置き換えた効果を算出した。

    協力メーカー:宇賀神電機株式会社

  6. ※6

    アルミ導体ケーブル(らくらくアルミケーブル®)のCO2排出量低減:
    一般にアルミ導体は銅導体と比較して製造時のCO2排出量が大きいが、加工時に使用する電力由来のCO2排出量の占める割合が大きいため、再生可能エネルギーの活用により、CO2排出量を低減することができる。被覆工程でも、再生可能エネルギー由来の電力を用いることで、CO2排出量の低減を図っている。

    協力メーカー:古河電気工業株式会社、古河電工産業電線株式会社、SFCC株式会社
    『らくらくアルミケーブル®』は日本における古河電気工業の登録商標です。

  7. ※7

    パッケージエアコンのCO2排出量低減:
    組立工場における再生可能エネルギー活用の評価により、加工時における電力由来のCO2排出量を調達時におけるCO2排出量から低減し、残りをJクレジットの割り当てによりオフセットすることで、調達時におけるCO2排出量を実質0としている。

    協力メーカー:三菱電機株式会社
    さらに建物のLCA指針※9においてCO2排出量の評価対象外となっているフロンガスについて、地球温暖化への影響がCO2よりもはるかに大きいことを考慮し、パッケージエアコンには機器廃棄時に回収した再生フロンを充填する取り組みも行う。

  8. ※8

    T-ニアゼロスチール:
    「ゼロカーボンスチール・イニシアティブ」の取り組みの一環として活用される、高炉鋼材より大幅なCO2排出量の削減や環境負荷低減を図った電炉鋼材。再生可能エネルギー利用により、高炉鋼材に対して95%CO2排出量を削減し、残り5%のCO2排出量や環境負荷の更なる削減に向け、スコープ1~3に係る排出以外のCO2排出量の削減貢献活動である植林、低炭素型電炉鋼の更なる低炭素化(スコープ1,2に該当する脱炭素に向けた設備投資や省エネルギー―設備導入等)を予定。

  9. ※9

    建物のLCA指針
    一般社団法人日本建築学会が発行している、建物のライフサイクルにおけるCO2、NOx、SOx、廃棄物の発生量および一次エネルギー・資源の消費量の評価手法をまとめた指針。本件での設計段階CO2排出量算出にあたっては、2013年版建物のLCA指針を参考とした。