既存建築物の省エネ改修診断ツール「ZEBリノベ@診断」を開発し運用開始
2024年12月6日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、既存建築物改修後の省エネ性能を設計前の段階で評価し、リニューアルによるゼロ・エネルギー・ビル化(以下、ZEB化)の可能性を短期間で診断できるツール「ZEBリノベ@診断」を開発し、建築物リニューアルの初期診断業務で運用を開始しました。本ツールの活用により、個々の建築物の特性に応じた最適な省エネ改修項目を短期間で選定することができ、これを基に改修後の省エネ性能を事前に把握し、ZEB化の可能性と改修工事によるランニングコストやCO2排出量の削減効果をあらかじめ推定することが可能となります。
当社は、サステナブルな社会の実現に向けて、人も建物も地球も健康になるウェルビーイングを取り入れた環境配慮型リニューアル工事を『グリーンリニューアル』※1と名付け、既存建築物の改修を検討しているお客様に対し最適な省エネ改修を提案する取り組みを推進しています。『グリーンリニューアル』のうち、既存建築物のZEB化を図る実践的な取り組みは「グリーン・リニューアルZEB」として市場展開してきました。
既存建築物における省エネ改修は脱炭素社会の実現に貢献する取り組みですが、個々の建築物によって立地条件や形状、用途など前提条件が大きく異なるため、建築物の特性に応じた改修メニューや改修方法の選択、コストと省エネ効果とのバランスなどの検討項目が極めて多岐にわたり、建築物の規模等にも影響され、最適な提案の作成には数カ月かかるなど相応の時間を要することが課題となっていました。
そこで当社は、ZEBプランナーとして、新築はもとよりリニューアルZEBや省エネ改修工事においてこれまでに培ったノウハウを活かし、既存建築物の改修後の省エネ性能評価およびZEB化の可能性診断を短期間で行える改修計画・設計支援ツール「ZEBリノベ@診断」を開発し、運用を開始しました。建築物のリニューアルに際し、本ツールを活用した初期診断業務では、改修工事の設計前の段階で、建築物の立地条件等のほか窓の配置や設備機器の更新状況などを考慮した適切な省エネ改修項目を短期間で選定し、費用対効果が高い最適な改修メニューや改修方法を迅速に提案します。
本ツールを活用した建築物改修時における初期診断業務の特長は以下のとおりです。
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既存建築物の特性に合わせた最適な省エネ改修項目を短期間で選定
既存建築物の形状・方位や窓の位置、空調設備機器の配置と更新状況などのほか、入居テナントや利用者の快適性を考慮した壁・窓の断熱性能など個々の建築物の特性に合わせて、改修後の省エネ性能を設計前の段階で適切に見定め、既存建築物のZEB化に資する省エネ改修項目について短期間で選定し提案することができます。 - 2
WEBプログラム※2を利用して省エネ性能を事前に評価
選定した省エネ改修項目について、WEBプログラムを利用してエネルギー消費量をBPI※3およびBEI※4により数値化し、改修工事実施後のおおよその省エネ性能を事前に求めることができます。この結果を基にZEB化の可能性を診断します。 - 3
既存建築物の図面等が一部不足している場合でも検討・診断を実施
省エネ改修の初期診断業務では、既存建築物の過去の設備更新や部分的な修繕などの履歴が不明で竣工図・改修図・設備図等の図面が一部不足している場合でも、省エネ改修メニューなどの検討やZEB化の可能性診断を実施することができます。 - 4
改修工事によるランニングコスト低減とCO2排出量削減の効果を試算
省エネ改修によってどの程度のランニングコスト低減およびCO2排出量削減の効果が見込めるか、その概略値を試算することで、経済的なメリットと脱炭素への貢献度合いを設計・施工の前に把握することができます。過去からのエネルギーデータがある場合は、改修工事による上記の効果をさらに精度よく試算することが可能です。 - 5
「窓」「断熱」「空調」「照明」などの改修工事数量を自動算出
初期診断業務では改修後の省エネ性能の算出に加え、建築・設備工事費算出の参考として、建築工事での断熱窓への更新と壁や屋根への断熱付加、設備工事での高効率空調設備や高効率LED照明器具への更新、照明制御設備の追加等の工事数量を自動で算出します。
今後当社は、本ツールをお客様が保有する建築物の改修計画・設計支援ツールとして積極的に活用し、当社が推進する『グリーンリニューアル』の普及展開を加速してまいります。また、これまで蓄積してきたZEB化技術をはじめとして、省エネルギー、創エネルギーに繋がる様々な保有技術を既存建築物に適用することで、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。

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グリーンリニューアル®:
当社では、「省エネ」、「創エネ」、「脱炭素」、「ウエルネス」、「スマート化」、「安心」という6つの具体的な取り組みを通じて、既存建築物をこれからの時代に相応しく、人と地球にやさしい建築物にリニューアルすることを『グリーンリニューアル』と称している。特にその中でも、「省エネ」と「創エネ」技術を導入し、既存建築物のZEB化を進める取り組みを「グリーン・リニューアルZEB」として市場展開を図っている。 - ※2
WEBプログラム:
国立研究開発法人建築研究所が公表している建築物のエネルギー消費性能を計算するプログラムデータ。地域や住宅・非住宅の建て方、床面積、日射地域分などの基本情報に外皮や暖房などの情報を組み合わせて設計一次エネルギー消費量、基準一次エネルギー消費量を計算する。 - ※3
BPI:
省エネ法改正に伴い設けられたPAL*(外皮基準の指標)により算出される年間熱負荷の基準のこと - ※4
BEI:
エネルギー消費性能計算プログラムに基づく、基準建築物と比較した時の設計建築物の一次エネルギー消費量の比率のこと