音源探査システム「TSounds®-Radar」を全天候型に改良し機能向上
2024年10月30日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、異音の発生箇所を特定できる独自技術として2017年に開発した音源探査システム「TSounds-Radar」を屋外で雨天時にも使用できるよう全天候型に改良するとともに、より低い周波数領域の音源探査および探査結果の可視化を可能とする新たな機能を追加しました。本システムの活用により、様々な音が混在する屋外にて雨天時でも、工事や設備稼働に伴って生じる幅広い領域の音が発生する箇所を迅速かつ正確に特定し、その音源に対して有効な対策を検討することが可能となります。
従来型の「TSounds-Radar」は、建物の内部空間において建築部材が干渉することによって生じる異音等の発生箇所を探査するため、屋内での使用を想定して開発・運用されているシステムです。また、比較的高い周波数を音源探査の対象としており、エンジン音や設備機器などから出る低周波領域の音については探査が困難であるという課題がありました。(写真1参照)
そこで当社は、「TSounds-Radar」の屋外での使用を想定し、耐候性・耐久性を向上させて全天候型に改良するとともに、低周波領域の音源探査が可能となるよう機能の高度化を図りました。これらの新たな機能について実際の現場において屋外の設備機器を対象とした実証実験を行いその効果を検証しました。
新機能を搭載した「TSounds-Radar」の特長は以下のとおりです。
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計測機材の耐候性と耐久性を高め、全天候型システムに機能向上
小型で防塵・防滴性能が高いMEMSマイクロホン※1を採用し、筺体も防水マイクロホンアレイに仕様変更し、内部へ水が侵入しない構造としました。さらに、計測に必要な精密機器を除湿・排気・漏電対策を施した防水機材ラックに収納することで、耐候性と耐久性に優れた全天候型システムに機能向上を図りました。(写真2参照) - 2
マイクロホンアレイの外周部を展開して低周波領域の音源探査が可能
エンジン音や設備機器などに多く含まれる低周波領域(100 Hz~)の音に対して、従来システムでは精度の低下がみられましたが、新システムでは計測状況に応じて32 ch平面マイクロホンアレイの外周部を展開してマイクロホンの間隔を広げて計測することで、迅速かつ正確に音が到来する方向の特定が可能となりました。(写真3、4参照) - 3
撮影画像と重ね合わせ、音が到来する方向の可視化が可能
マイクロホンアレイの中央部に防水性を有するカメラを配置しており、音源の探査範囲を撮影した画像と探査結果を重ね合わせて表示し、音が到来する方向と強さを可視化することができます。これにより対象となる音の発生源を直感的に把握することができ、有効な対策の検討が可能となります。(写真4参照)
今後当社は、本システムを屋内外を問わず工事や設備などから生じる音の正確な発生箇所の特定に積極的に活用し、異音の発生原因を明確化することで、屋内外で聞こえる音に対する適切な対策の提案を行ってまいります。


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MEMSマイクロホン:MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術により電子回路と機械的構造を同一基板上に構築されたマイクロホン