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やわらかい木を用いた木質網代構法「T-WOOD® Goo-nyaize」を開発

-独創的な意匠と耐震性を備えた木質空間を創出し、未利用木材の有効活用を促進-

2024年10月2日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、柔らかく自在に曲げ・ねじることができる新しい木質材料「やわらかい木※1」(写真1参照)を用いて独創的なデザインを持つ壁を構築(写真2参照)し、建物の構造部材として使用可能な木質網代(あじろ)構法「T-WOOD Goo-nyaize」を開発しました。(写真3参照)

 本構法の構成部材である「やわらかい木」は、木製薄板の間にシート状の粘着剤を挟んで貼り合わせた素材を積層して形成される木質材料で、変形性能が高く、グニャッとした触感から従来にない独特の意匠性を有しています。半面、この材料の持つ柔らかさから、自重や人力で容易に変形してしまうため、形状を維持したまま自立させるのが難しいという特性があり、この材料を構造部材として利用するには課題がありました。

 そこで当社は、独創的な意匠性を持つ「やわらかい木」の適用範囲を拡げることを目的として、「やわらかい木」の曲げられた形状を維持し、さらに壁などの構造部材への適用が可能となる木質網代構法「T-WOOD Goo-nyaize」を開発しました。本構法は、一定間隔で連立する木製柱に、帯状の「やわらかい木」を左右から編み込み、上下の帯が交互に凹凸を形づくり、上下対称となるように配置することで、格子状に編み込んだ網代模様の面構造部材として壁や屋根などを構築する新しい架構です。

 「T-WOOD Goo-nyaize」の特長は以下のとおりです。

  1. 1

    従来の10倍以上の曲率を持つ木質材料により独創的な意匠を有する木質空間を実現
    従来の構造用合板の曲率(最大0.35~0.45rad/m程度)に対して、「やわらかい木」の曲率(3.0~16.0rad/m)は原材料が針葉樹の場合で10倍、広葉樹の場合で40倍程度あるため、容易に凹凸をつけて滑らかな曲面を持つ立体感のある特徴的な意匠の壁や屋根等を構成し、これまでにない木質空間を創出できます。水平方向に配置する帯状の「やわらかい木」の編み込み方を工夫することで、意匠上、柱と柱の間に「やわらかい木」の直線部分を規則的に生み出すことができます。(写真4参照)また、使用する「やわらかい木」の形状や配置などを変えることで採光量を調整でき、外部からの視線も程よく遮ることが可能です。さらに部材に触れることで、その柔らかさを直接感じることができます。

  2. 2

    従来の耐震壁と同等の性能を備えた耐震構造部材として活用可能
    本構法は、「やわらかい木」の直線部分を散在させて柱にビス留めし、柱の角部で曲面となる部分は曲げられた「やわらかい木」を柱に嵌め合わせることによって(写真5参照)、形状を維持すると同時に耐震性を付加しています。地震や風の揺れに対する本構法の耐力を載荷実験により検証し、本構法で構成した壁や屋根等は、木造耐力壁の強さを表す壁倍率※2換算で約0.5~1.0倍(短期許容せん断耐力で0.8~1.9kN/m)であり、従来の耐震壁と同等の性能を有しており、耐震構造部材として活用することが可能です。

  3. 3

    強度が低い柔らかい木材の有効活用を促進
    森林伐採時に一定の割合で発生する密度の低い柔らかい木材は、製材後の強度※3が低い区分となるため構造部材としての利用はほとんどありませんでしたが、「やわらかい木」の構造部材への適用により、密度の低い木材の有効活用につながることが期待できます。

 今後当社は、規模や構造種別を問わず、利用が求められる建築物に対して、木造化や内装木質化を実現する技術として本構法を積極的に提案するとともに、この取り組みによってこれまで未利用であった柔らかい木材の利用促進と価値向上に貢献してまいります。

写真1 やわらかい木(棒状)
写真1 やわらかい木(棒状)
写真2 網代模様となる上下対象の凹凸形状
写真2 網代模様となる上下対象の凹凸形状
写真3 木質網代構法「T-WOOD Goo-nyaize」
写真3 木質網代構法「T-WOOD Goo-nyaize」
写真4 連立する木製柱と散在した直線部分
写真4 連立する木製柱と散在した直線部分
写真5 柱の角部での嵌め合わせ
写真5 柱の角部での嵌め合わせ
  1. ※1

    やわらかい木:
    2008年に東京大学足立幸司特任助教(現秋田県立大学教授)が開発した木質材料。

  2. ※2

    壁倍率:
    建築基準法で定められた耐力壁の強さを表す値。

  3. ※3

    製材の強度:
    日本農林規格(JAS)に定められた製材のうち機械等級区分製材では、強度を区分するために製材の硬さ(ヤング係数、N/mm2)が機械により測定される。