リアルタイムに工事進捗を共有可能な歩掛記録アプリ「ワクロク」を開発
2024年8月21日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、2020年に開発した施工管理業務支援システム「T-iDigital Field※1」の機能を拡張し、場所やデバイスを問わず、Web画面上でのボタン操作だけで、工事関係者間がリアルタイムに工事進捗状況を共有できる歩掛記録アプリケーション「ワクロク」を開発しました。
建設工事現場では様々な作業が行われており、工事管理者は作業の歩掛※2を確認・記録し施工状況を把握した上で、工事工程計画を立案する必要があります。従来の歩掛確認・記録は、作業内容や作業員の職種・人数、使用建設機械の運転時間などについて、工事現場で電話や口頭で確認した内容を基に職員が事務所でデータ整理や日報作成などを行っており、多大な労力と時間を要していました。さらに、工事関係者間における工事進捗状況の共有は帳票作成などによるデータ整理が必要となるため、リアルタイムな情報共有や施工管理への即時反映が困難であるなどの課題がありました。
そこで当社は、「T-iDigital Field」の新たな拡張機能として、開始・終了のボタン操作で全ての作業の歩掛情報を記録することが可能なアプリケーション「ワクロク」を開発しました。(図1参照)本アプリケーションの導入により、歩掛記録作業の大幅な効率化を実現でき、効率化によって得られた時間を業務改善や従事者教育に活用することで更なる生産性向上へ結びつけることが可能となります。これまでに全国で7件の建設現場に試験導入して検証を行い、その効果を確認しました。
「ワクロク」の特長は以下のとおりです。
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シンプルな設定と操作方法を採用
本アプリケーションは、以下に示す3つのステップで利用可能です。(図2参照)
シンプルな設定と操作方法を採用することで、データ取得が容易になり、歩掛記録作業を大幅に効率化します。記録したい作業は、建設現場に合わせて自由に設定が可能です。- ①作業設定・模式図設定
記録する作業と、模式図で表示する作業エリアをエクセルデータに基づくCSVファイルに入力し、クラウドにアップロードして登録する - ②作業を選択
登録した作業の中から歩掛を記録する作業を選択する - ③作業開始・終了をタップ
選択した作業の開始(終了)ボタンをタップして歩掛記録を開始(終了)する
開始・終了時刻が記録され、歩掛が算出できる
- ①作業設定・模式図設定
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様々な端末を活用して歩掛記録作業を効率化
工事関係者はPC、スマートフォン、タブレット端末等の様々なデバイスから本アプリケーションにアクセス可能です。これまで電話連絡やメモのデータを整理していた作業がWEB画面でのボタン操作で可能となり、歩掛記録の作業時間を大幅に削減できます。杭打ち工事の地中障害物撤去工で本アプリケーションを活用した事例では、一連の作業の開始・終了記録を帳票にデータ化するなどの歩掛記録に要していた作業時間が杭1本あたり従前の5分から2分に短縮され、全体作業時間の60%(杭152本×削減時間3分/本=456分)の削減を確認できました。 - 3
進捗情報を自動的に可視化し、リアルタイムに情報共有が可能
記録した作業の進捗状況は、進捗グラフや模式図、チャートで表示され、自動的に可視化できます。「T-iDigital Field」とのデータ連携により、建設機械の稼働データなどを自動で取り込むことが可能となり、従来のようなメモをデータに加工することなく、リアルタイムに進捗状況が確認できるため、円滑に工事関係者間で情報共有が行えます。(図3参照)
今後当社は、本システムの建設現場への適用、普及拡大を進め、現場導入で取得されるデータの検証・分析および蓄積データを基に、新たな施工支援アプリケーションの開発や現場の施工と安全に関する管理機能の拡張などを図ることで、「T-iDigital Field」の基盤整備を推進し、DX技術の導入による建設現場の変革を目指してまいります。
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T-iDigital Field:
CPS(Cyber-Physical Systems)の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータをAIや多変量分析などにより、最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援、生産性の向上を目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。この技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放され、建設機械の遠隔操作や自動化が効果的に機能することで、さらなる施工効率や安全性の向上などの付加価値が創出され、これまでの建設業における『常識』の著しい変革につながることが期待される。 - ※2
歩掛:
総作業量を人数と日数で割った1人・1日当たりの作業量を表し、作業ごとにかかる手間を数値化したもの
- ※DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。