ロングスパン構造と長寿命化を可能にした木造人道橋を建設
2024年6月5日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、これまで小径木材では困難だったロングスパン構造と長寿命化を可能にした木造人道橋を当社技術センター(神奈川県横浜市戸塚区)に建設しました。本技術の確立により、建築用建材として一般に流通する小径木材の用途が大幅に拡大し、木構造の選択肢を増やせることから、木材の利用促進による脱炭素社会の実現に貢献することができます。
主に住宅建築で利用されている小径木材は、大断面集成材に比べて断面積が小さく耐力や剛性も低いことからロングスパン構造への適用には不向きとされてきました。また、屋外で使用する場合は耐候性・耐久性を確保するために、水分や紫外線の影響を考慮し、材料の腐朽やひび割れ等が発生しないような工夫が必要になるなどの課題がありました。
そこで当社は、上記課題の解決手法として、小径木材を用いた木造人道橋の建設にあたり、多数の木材接合部に高い耐力と剛性を付加することができる「鋼製プレートを用いたボルト接合」※1を新たに開発しました。また同時に、木軸組みとプレストレス架構を併用した構造方式を採用することで、橋全体に圧縮力を導入して部材間の隙間やゆるみを抑制し、小径木材でのロングスパン構造を実現しました。さらに、当社開発の木材保護塗料「T-WOOD® COAT」※2を適用するとともに、小径木材の交換が容易に行える設計法の適用により耐候性・耐久性を確保し、屋外利用における小径木材の長寿命化を可能にしました。
本木造人道橋に適用した技術の特徴は以下のとおりです(写真1~3参照)。
- 1
新開発のボルト接合とプレストレス架構を組み合わせ、ロングスパン構造を実現
小径木材を用いた木造人道橋の構造安全性を決定づける木部材接合部には、高い接合耐力と剛性の確保が求められます。当社が新たに開発した「鋼製プレートを用いたボルト接合」と、橋の両端をつないで引っ張るテンションケーブルを配置し圧縮力を導入するプレストレス架構を組み合わせることで、圧縮力に強い木材の構造的特性を最大限に発揮させることができ、小径木材によるロングスパン構造(全長26m)を実現しています。 - 2
木材保護塗料と部材交換・追加可能な設計により、屋外利用の小径木材を長寿命化
木造人道橋に使用した小径木材は、油溶性の保存薬剤を加圧注入し防腐・防蟻処理した木材(製材JAS規格:K4性能)に、当社開発の木材保護塗料「T-WOOD® COAT」を塗布することで耐久性を確保しました。また、経年等により木材の劣化が生じた場合に備え、単材ごとに部材交換する際に人道橋の構造安全性が保持できるよう余力を持たせた部材配置・断面設計としました。さらに、木材の耐力が著しく低下した場合には補強部材を追加可能な設計を取り入れることで、屋外利用での小径木材の長寿命化を図っています。
今後当社は、屋内外を問わず建築物に木材を積極的に適用し、耐候性・耐久性に優れた多様な木質建築空間を提供していくとともに、一般に流通する小径木材などの利用促進により脱炭素社会の実現に貢献してまいります。


- ※1
鋼製プレートを用いたボルト接合:
ビス接合した鋼製プレートを介して木部材相互を接合することで、高い接合剛性・耐力を確保できる。また、本接合法により木部材間の隙間に水が滞留するリスクを低減し、耐久性も向上させる。 - ※2
T-WOOD® COAT:
当社が2020年に開発した塗布するだけで木材の耐候性・耐久性が向上する保護塗料。この塗料は、汎用的な木材の保護塗料と比較して2倍以上の優れた耐候性・耐久性を有する。