複数3D-LiDARの連携活用による土量計測・可視化技術「ソイルスキャン」を開発
2024年6月4日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、計測技研株式会社(社長:橋村義人)と共同で、「生産プロセスのDX」の一環として、レーザー光を用いたリモートセンシング技術である3D-LiDARを複数台連携させ、掘削した土砂の量を高速かつ高精度に自動計測し可視化する技術「ソイルスキャン」を開発しました。本技術の適用により、これまで職員が手作業で行っていた掘削土量管理作業の省力化・効率化を図ることができます。
土砂掘削を伴う建設工事では、掘削した土砂をいったん作業ヤード内の土砂ピット等に集積した後、ダンプトラックで場外に搬出します。特に作業ヤードが狭隘な場合は、集積した土量を把握した上で効率的に搬出作業を行うことが重要となります。従来は職員がスケールを用いて毎回手作業で土砂形状の簡易測量を行い、測量結果を基にダンプトラックの配車計画を立案し土量管理を行っていました。(写真1参照)しかし、この方法では職員の時間的・身体的な負担が大きい上に、測量精度も十分とは言えず、土砂表面の起伏が大きい場合などには土量の正確な把握が困難で、ダンプトラック台数に過不足が生じるなど作業効率の低下が建設現場における土量管理の課題となっていました。
そこで当社は、レーザー光を用いて高速・高精度に計測可能な3D-LiDARを複数台連携させ、土量管理アプリケーションと組合せて活用することで、作業ヤード内に集積される掘削土量を正確かつ迅速に自動計測し可視化する技術「ソイルスキャン」を開発しました。また、東京都内の王子給水所(仮称)排水池築造工事(発注者:東京都水道局、施工:大成・岩田地崎・関電工JV)において、その性能と有効性を確認しました。
本技術の特徴は以下の通りです。(写真2、図1、図2参照)
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集積土量の高速・高精度な自動計測と可視化が可能
3次元状にレーザー光を照射し広範囲を正確かつ迅速に計測できる3D-LiDARと土量管理アプリケーションを組合せることで、土砂ピット等に集積された掘削土量を常時自動計測し、短時間で出力することができるため、掘削土量管理作業の省力化が図れます。また、計測で取得した点群データを3Dカラー表示によって可視化できることから、集積した掘削土量の視覚的な把握も可能です。 - 2
複数台の3D-LiDARを連携させ多方向からの計測が可能
一方向からの計測では土留め壁や土砂山自体が支障となり計測できない部分が生じますが、土砂ピット等の周辺に配置した複数台の3D-LiDARを連携させて多方向から計測することにより死角がなくなり未計測部分を解消できます。各3D-LiDARで取得した土量データは重複部分の二重計上を防ぐ形で統合され、掘削土量が計測誤差5%未満で数値化されます。 - 3
いつ・どこからでも掘削土量の把握・管理が可能
本技術と2020年に自社開発した建設現場の施工管理システム「T-iDigital Field※1」とを連携させることで、スマートフォン等の携帯端末を利用して、いつ・どこからでも掘削土量をリアルタイムに把握し、管理することができます。
今後当社は、土木・建築分野を問わず、土砂掘削を伴う建設工事の土量計測作業全般に積極的に本技術の適用・拡大を図ることで、生産プロセスDX化による建設現場の生産性向上に向けた取り組みを推進してまいります。
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T-iDigital Field:
CPS(Cyber-Physical Systems)の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータからAIの活用や多変量分析などによって最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援や生産性の向上を図ることを目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。この技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放され、建設作業の遠隔操作や自動化が効果的に機能することで、施工効率や安全性の更なる向上といった新たな付加価値の創出が図られ、従来の建設業に対する常識の著しい変革につながることが期待される。
- ※DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。