トンネル坑内の掘削出来形3次元計測システム「T-ファストスキャン」を開発
2024年6月3日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、山岳トンネル工事においてトンネル坑内の掘削出来形を迅速に把握することができる3次元計測システム「T-ファストスキャン」を開発しました。本システムは、高速処理が可能な3DLiDAR※1と通信設備をユニット化し、機動性の高い小型車両に搭載したもので、従来の3Dレーザースキャナーを用いた方法と比べ計測時間を大幅に短縮できるとともに、出来形が現場で確認できることで、施工の手戻りを未然に防止することが可能となります。
2016年度より国土交通省から「3次元計測技術を用いた出来形管理の要領(案)※2」が公開され、対象工種が順次拡充されることで公共工事における3次元計測による出来形管理の手法が定められてきました。山岳トンネル工事においても掘削過不足の確認や覆工コンクリートの施工管理などの出来形管理に3次元計測が普及しつつあり、特にトンネル切羽での計測作業には工程や安全面への配慮が重要となるため、より短時間で完了できる方法が求められています。トンネル掘削出来形の3次元計測には3Dレーザースキャナーを用いる方法が一般的ですが、計測装置の設定から測定結果の確認までの一連の作業に相応の時間を要することから、工程への影響が大きくなることが懸念され、現場での連続的な運用に際して課題となっていました。
そこで当社は、迅速な計測が可能な3DLiDARとトンネル坑内通信設備をユニット化した装置を、機動性の高い小型車両に搭載し、タブレット等を用いて近接位置から機器類を操作してトンネル坑内の掘削出来形を3次元で計測するシステム「T-ファストスキャン」を開発しました。(写真1参照)本システムは、当社施工の山岳トンネル工事で試験運用を行い、3DLiDARを用いた3次元計測の作業性と有効性を確認しました。
「T-ファストスキャン」の特長は以下のとおりです。
- 1
現場で出来形を確認でき、施工の手戻りを未然に防止
トンネル坑内において切羽掘削形状を迅速に計測し、出来形確認を現場で行えるため、施工計画に対する掘削の過不足をその場で把握でき、施工の手戻りを未然に防止することができます。(図1参照) - 2
トンネル坑内での3次元計測に要する時間を大幅に短縮
本システムは3DLiDARと通信設備をユニット化した計測装置を機動性に優れた小型車両に搭載した状態で切羽付近の計測地点まで移動した後、計測器設定、3次元計測、機械点測量、撤収といった一連の計測作業を合計2分で完了することができます。これにより3Dレーザースキャナーを用いた従来技術の計測時間(合計15分)と比較して、計測器の設定・撤収および3次元計測の迅速化により、最大で87%削減という大幅な時間短縮を実現しました。(図2参照) - 3
掘削出来形データ等のAIによる分析結果から最適な発破パターンや装薬量を選定可能
発破掘削を行う際の削孔パターンや装薬量および本システムにより取得した発破後の掘削形状や出来形などの計測データを、AIを用いて分析し、その結果を施工にフィードバックすることで、最適な発破パターンや装薬量の選定、さらには掘削状況の予測評価に繋げることが可能となります。(図3参照)
今後当社は、本システムを自社施工の山岳トンネル工事に積極的に導入し、3次元計測技術を活用して出来形管理業務の効率化や施工の手戻り防止を図ります。また、発破後の掘削断面形状や出来形などの各種データを蓄積しAIを用いて分析することで、将来的な発破掘削自動化の実現に向けて更なる技術開発を進めてまいります。
- ※1
3DLiDAR:
3次元状に光を照射し、センサ周辺の距離からその場所の形状やセンサ位置の把握に活用されるセンサ - ※2
3次元計測技術を用いた出来形管理の要領(案):
公共工事における3次元計測技術を用いて出来形管理手法を定めたもの