リリース

ドリルジャンボを用いた湧水圧測定技術「T-DrillPacker® Jumbo」を開発

-短尺ボーリングにより切羽前方の湧水圧を安全かつ容易に測定可能-

2024年5月28日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、山岳トンネル工事を施工中に切羽前方の湧水圧をドリルジャンボ※1を用いて安全かつ容易に測定できる技術「T-DrillPacker Jumbo」を開発しました。本技術は、山岳トンネル工事で使用するドリルジャンボを効果的に活用したもので、専用ボーリングマシンの導入が不要になるとともに、人力を必要としていた湧水圧測定に関わる作業が大幅に軽減され、安全性と作業性が向上します。

 山岳トンネル工事では、施工中に大量の湧水が発生すると、工事の中断など作業性の低下を招くだけでなく、重大事故につながる切羽の崩壊が生じる危険性があります。そのため、施工中の切羽から前方に向かって水平方向に行う先進ボーリング等により、前方に存在する湧水帯の湧水量、湧水圧など地山の状況を事前に把握し、適切な対策工を準備することが重要となります。従来、切羽から100m程度以上を削孔する中・長尺の先進ボーリングによる事前調査では、専用ボーリングマシンを使用して削孔や計測装置であるパッカー※2の設置を行い、湧水圧を測定しており調査には相当の作業手間や時間、コストを要していました。また、これに対して、施工に使用するドリルジャンボを使用する場合でも、切羽から30m程度までの短尺ボーリングを削孔後、パッカーの設置が切羽直下での人力作業となるため、安全性や作業性に課題が残っていました。
 そこで当社は、ロッドの継ぎ足しや送り込みなど、これまで人力で行っていたパッカーの設置・回収・拡張作業をドリルジャンボに搭載した機能を用いて行えるようにし、安全かつ容易に切羽前方の湧水圧を測定できる技術「T-DrillPacker Jumbo」を新たに開発しました。

本技術の特徴は以下のとおりです。(図1、図2参照)

  1. 1

    切羽直下での人力作業を大幅に軽減し安全性が向上
    本技術は、ドリルジャンボに搭載されている削孔用装置(ガイドシェル)のフィード(ロッド送り込み)や回転、送水といった機構を活用して、パッカーの設置・回収および拡張を行うことができます。これにより、湧水圧の測定に際し、切羽直下での人力による作業が大幅に軽減され、安全性が向上します。

  2. 2

    坑内の施工機械や既存設備を用いて容易に湧水圧測定が可能
    専用ボーリングマシンを導入することなく、山岳トンネル工事に常備するドリルジャンボと専用測定ユニットのみで切羽前方の湧水圧を容易に測定可能なため、事前調査に関わる従来の繁雑な作業が大幅に改善され、調査頻度を向上させることができます。

  3. 3

    ドリルジャンボで削孔する様々なボーリング孔を活用して多様な調査が可能
    本技術は、ドリルジャンボで削孔する発破孔をはじめ、地山補強用の注入孔や探査孔、水抜き孔など様々なボーリング孔に適用することができます。これにより切羽前方探査や突発的な湧水発生時の調査など多様な用途に対応でき、切羽安定性の確実な評価やより適切な湧水対策工の立案が可能となります。

 今後当社は、高圧・大量湧水が予想される山岳トンネル工事に対して、本技術を積極的に適用し、安全かつ容易に湧水圧を把握することにより、より効果的な湧水対策の立案に役立て、円滑な工事進捗と安全確保に努めてまいります。

図1 「T-DrillPacker®Jumbo」の概要
図1 「T-DrillPacker®Jumbo」の概要
図2 測定概念図
図2 測定概念図
  1. ※1

    ドリルジャンボ:
    山岳トンネル工事において発破掘削の装薬や補強材となるロックボルト打設などのために削孔を行う掘削機械。いくつかの削岩機を装備した削岩用の移動台車の総称。

  2. ※2

    パッカー:
    調査孔内に挿入したゴム製の袋状部材を加圧し膨張させて、孔壁に密着させることで孔内を水理的に隔離し、湧水区間の水量・水圧をピンポイントで測定するための装置。