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国内初 異強度場所打ちコンクリート杭「T-CROWN PILE工法 ®」の一般評定を取得

-杭のスリム化により工期・コストの低減と建設汚泥・CO2排出量の削減を実現-

2024年5月7日

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、建物の基礎杭工事において強度の異なるコンクリートを現場で連続して打分けることで様々なメリットが得られる、異強度場所打ちコンクリート杭「T-CROWN PILE工法」(図1参照)を開発し、(一財)日本建築センター(以下、BCJ)による一般評定を国内で初めて取得しました。本工法は、地震時に被害が生じやすい杭上部にだけ高強度コンクリートを用いることで、施工条件に応じて杭を最適にスリム化することができ、従来工法と比べて工期とコストの低減に加え、建設汚泥とCO2排出量の削減が可能となります。

 現場打設する「場所打ちコンクリート杭」は、一般的に同一強度のコンクリートを使用して、トレミー管と呼ばれる打設配管を固まる前のコンクリートに数m程度挿入した状態で上部から新たなコンクリートを連続して流し込んで構築します。(図2参照)一方、強度の異なるコンクリートを用いて1本の杭を構築する場合は、普通コンクリート打設後に連続して高強度コンクリートを流し込む際、杭の全断面が高強度コンクリートに確実に置き換わるまでの「切換え長さ」※1を把握した上で、高強度コンクリートを流し込み始める必要があります。(図3参照)しかし、これまで杭径などの施工条件が切換え長さに与える影響が明らかになっておらず、施工条件に応じた適切な切換え長さの設定は困難でした。
 そこで当社は、今回開発した異強度場所打ちコンクリート杭「T-CROWN PILE工法」において、実大の杭施工実験や流体解析を実施してデータを取得・分析することにより、「コンクリートの打ち重なり状況」(図4参照)の把握に成功し、施工条件に応じた切換え長さの設定方法と建設現場でのコンクリート打分け管理方法の確立により、この度、BCJによる一般評定(BCJ評定-FD0608-01)を取得しました。

 本工法の特徴および適用効果、適用範囲は以下のとおりです。

【特徴】

  1. 1

    施工条件に応じて切換え長さを設定可能
    コンクリート打設の流体解析技術の開発や、実大の杭施工実験を通じて、杭径や深さなどの施工条件に応じて変化する切換え長さの設定方法を構築しました。これにより、建設現場ごとの施工条件に応じた切換え長さの設定が可能となります。

  2. 2

    異強度コンクリートの打分け管理方法を確立
    適切な切換え長さの設定に加え、トレミー管の挿入長さを精度良く管理することが可能なため、所定の深さで杭の全断面が確実に高強度コンクリートに置き換わるように、最適なタイミングで高強度コンクリートを打ち始めることができます。

  3. 3

    第三者機関による一般評定を取得
    異強度場所打ちコンクリート杭「T-CROWN PILE工法」における切換え長さの設定方法やコンクリート打分け管理方法についてBCJによる一般評定を国内で初めて取得しました。

【適用効果】(表1、表2参照)

 《参考》地上25階の建物(RC造)を対象にした本工法の適用効果

  • 杭上部の耐震性を高め、杭をスリム化
    地震時に大きな力が作用する杭上部に高強度コンクリートを用いることで耐震性を高め、普通コンクリートだけを用いた杭に比べて杭全体(先端拡径部を除く)をスリム化することが可能となります。試算例では杭径2.8mを2.3mにスリム化できました。
  • 工期短縮とコスト削減を実現
    杭のスリム化により、最大で掘削土量を30%減らし、工期を30%短縮、コストを20%削減することが期待できます。
  • 建設汚泥・CO2排出量の削減による環境負荷低減を実現
    掘削土は一般的に産業廃棄物(建設汚泥)となるため、杭のスリム化は環境負荷低減につながります。また、杭工事でのCO2排出量の大部分はコンクリート製造時に生じることから、杭のスリム化によるコンクリート量減少により、CO2排出量の減少が見込まれます。試算例では従来工法と比べて、建設汚泥を最大30%、CO2排出量を最大10%、それぞれ削減する効果があります。

【適用範囲】

 本工法は高層・超高層建物に適用が可能で(表3参照)、既に東京都内のビルの杭基礎に初適用しています。(図5参照)

 今後当社は、都市部などで計画される高層・超高層建物に対して、本工法を杭工事に積極的に提案、適用することにより、顧客満足度の向上および環境負荷低減に努めてまいります。

  1. ※1

    切換え長さ:
    設計において高強度コンクリートとする範囲の下端と、普通コンクリートの流し込みを完了し、次に高強度コンクリートの流し込みを開始しなければならない深度の差(図3参照)。杭径などの施工条件を考慮して設定する。