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大成建設、小菅村、NPO法人多摩源流こすげの3者で連携協定を締結

-源流域を拠点としたグリーンインフラ推進構想「Kosuge-Model」創出に向け活動を開始-

2024年4月9日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、小菅村 (村長:舩木直美)およびNPO法人多摩源流こすげ(理事:宮林茂幸)と7年間のグリーンインフラ※1推進にかかる連携協定を締結しました。
 本協定締結により、自社事業における小菅村産木材の利用や水源涵養林※2等の自然環境保全活動を積極的に進めるとともに、流域全体で取り組む治山治水と生物多様性保全の両立をテーマとし、多摩川源流域を拠点として他流域にも展開可能な「Kosuge-Model」の創出に向けて2024年度より活動を開始します。

 持続可能な地球環境の基盤となる自然資本※3に対して世界規模での気候変動による危機と生物多様性の喪失という2つの課題は、相互に影響し合う関係にあり両者のバランスを加味した統合的な取り組みが求められています。
 気候危機については地球規模での温暖化対策が必要とされ、日本では2020 年10 月に内閣総理大臣の所信表明演説で2050 年のカーボンニュートラル実現が宣言されました。生物多様性についても、2022年12月に国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、新たな世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」が採択されました。国は、これに対応した戦略として「2050年自然共生社会」「2030年ネイチャーポジティブ(自然再興)※4」の実現に向けた「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定し、自然環境保全や生物多様性に関する国内での活動を推進※5しています。
 一方、国内では少子高齢化、人口減少に起因した里山や緑地を維持・管理する人材不足や資源の未利用等による自然災害の発生増加、生物多様性の損失などが課題となっています。

 そこで当社は、多摩川水系の下流に位置する首都圏エリアにおいて事業を展開する企業として、その源流域に位置する山梨県北都留郡小菅村において、自然災害の激甚化・頻発化、生物多様性の減少などの社会的課題の解決を目指し「森林資源・森林環境の課題解決に向けた取り組み」の一環として、本協定に基づく3者連携により様々な地域にも展開可能なグリーンインフラ推進構想「Kosuge-Model」の創出を目的とした取り組みを推進していきます。この構想は、治山治水と生物多様性保全を両立する上で重要な拠点となり、かつ流域全体および他流域への展開にもつながる源流域に着目して活動を展開するもので、全国でも稀な持続可能な「自然共生社会」の実現に向けた取り組みとなります。

本協定に基づく主な取り組みは以下のとおりです。

  1. 1

    木材利用と自然林化を推進
    首都圏エリアの当社施工物件において源流域である小菅村で伐採・製材した木材の利用を積極的に推進します。また、伐採後の人工林エリアでは遺伝的多様性や地域性を考慮した広葉樹種苗による植林・育林を行い、多面的な機能を有する自然林に置き替えることにより、源流域から流域全体に展開可能なグリーンインフラの構築を目指します。

  2. 2

    林床植生エリアでの保全活動を実施
    広葉樹植林エリアや希少植生エリアでの保全活動として防鹿柵を設置し、シカによる食害防止対策を施します。また、保全エリア内で定期的に動植物モニタリングを実施し、保全効果を測定します。

  3. 3

    環境保全活動に取り組む人材を育成
    当社社員に対して実施予定の小菅村内でのワサビ田整備や森林整備活動等の体験型研修などを通じて自然に触れながら自然共生社会の実現に向けて必要となる自然資本の機能や里地里山の維持管理のための人的なサポートの重要性を学び、環境保全活動に自主的に取り組める人材を育成します。

 今後、当社は小菅村、NPO法人多摩源流こすげとの連携による活動を通じて、インフラ施設などの人工資本※6と人の健康や教育などに係る人的資本※7を根底から支える、自然資本の維持や再生に積極的に取り組むとともに、人と自然がより良好な関係を維持できるよう、源流域を拠点とした新たな自然共生社会の実現に貢献して参ります。

図1 連携協定締結式
図1 連携協定締結式
(左より 小菅村 村長 舩木直美、大成建設 副社長執行役員 クリーンエネルギー・環境事業推進本部長 谷山二朗、NPO法人多摩源流こすげ 代表理事 宮林茂幸)
図2 グリーンインフラ推進構想「Kosuge-Model」の概念
図2 グリーンインフラ推進構想「Kosuge-Model」の概念
  1. ※1

    グリーンインフラ:自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方

  2. ※2

    水源涵養林:雨や雪といった水資源を地下部で貯留し、中下流域に安定的に共有する機能を持つ、水資源利用の観点から特にその働きが重要とされる森林

  3. ※3

    自然資本:動物・植物・水・土・空気など、経済や社会の基盤となる資本

  4. ※4

    ネイチャーポジティブ:自然生態系の損失を食い止め、回復させていくこと

  5. ※5

    国内での活動を推進:COP15で設定された2030年ミッションを受けて、2023年3月に日本政府も生物多様性に関する国家戦略を閣議決定し、環境省はネイチャーポジティブの実現のため、陸と海の30%以上の自然環境を保全する「30by30」の目標達成に向けて国立公園等の保護地域の拡張や、里山、都市緑地、企業緑地等の身近な自然などをOECM(Other Effective area-based Conservation Measuresの略で、国立公園のように法的に設定される保護地域以外で、環境保全や生物多様性の維持に貢献している地域)に含めて行く、自然共生サイト(国が認定する民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域)への登録促進を行っている

  6. ※6

    人工資本:道路、建物、機械、港湾など、人間が生み出す資本

  7. ※7

    人的資本:健康、教育、資質など、人間に蓄積させる資本

参考:本取り組みを紹介した動画をNPO法人多摩源流こすげのYouTubeに掲載しています。

Youtube:https://youtu.be/SUcc3CY5jUs