リリース

心理学的効果と連携した新しいワークプレイス設計手法「ナッジデザイン」を開発

-働く人のありたい姿の実現に直結する最適な執務空間を創出-

2024年4月4日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、京都工芸繊維大学仲隆介名誉教授、東洋大学戸梶亜紀彦教授の監修のもと、オフィスなどで働く人のありたい姿の実現につながる心理学的効果と密接に連携した建築空間計画のメニューから、最適な執務空間を設計することができる新しいワークプレイス設計手法「ナッジ※1デザイン」を開発しました。本設計手法の適用により、様々な心理学的効果と連携した空間設計が可能となり、創造性や生産性が高く、働く人のありたい姿に直結する、より働きやすい執務空間の創出を実現し、個々のワークライフバランス向上が期待されます。

 近年、リモートワークの普及に伴い、仕事の内容に合わせて働く場所を自由に選択するABW※2型の働き方を導入する企業が増えつつあるなど、働き方の選択肢が増える中で、ワークプレイスの設計手法にも変化が表れています。職場環境に対する働く人のニーズが多様化するにつれて、従来の「場」ではなく、働く人の「行動」に直接アプローチする設計手法が主流となってきました。この手法では、「モチベーションが高められる」、「能動的に動くことができる」といった働く人の行動を通じたありたい姿はどういうものなのかを、先行してワークショップ等での意見交換や共同作業を介して抽出し、その実現に直結する空間計画に基づいてワークプレイスを設計します。その一方で、働く人の行動を通じたありたい姿と、それを具現化するあるべき空間や設えを直結させる手立てがなく、設計者の経験や感覚に委ねられる部分が多くなっていました。また、設計者の感性で設計した空間が、働く人のニーズに対してどの程度の有効性を備えているのかを把握することが困難となっていました。
 そこで当社は、メタ認知効果やモデリング効果をはじめ、働く人の行動を通じたありたい姿の実現につながる様々な心理学的効果※3と密接に連携した建築空間の設えを事前にメニュー化し、それをアレンジして実際のワークプレイスを設計する「ナッジデザイン」を開発し、働く人のありたい姿と空間・設えを直結させる手法として確立しました。

ナッジデザインの特徴は以下のとおりです。(図1、図2参照)

  1. 1

    ありたい姿の実現に必要となる心理学的効果から空間計画の検討が可能
    ワークプレイスにおけるありたい姿の実現に必要となる様々な心理学的効果とワークゾーンや座席・間仕切りの配置、打合せコーナーのレイアウトなどの建築空間とを関連付けたメニューから、ニーズに合致する項目を選択するだけで、そのアレンジによって最適なワークプレイスの創出が可能となります。また、これまで曖昧だった空間計画における働く人の行動にもたらす効果が事前に明示されるため、適切なデザインを容易に選択できます。

  2. 2

    空間の効果検証により竣工後・供用後の効果的な改修が可能
    KPI(重要業績評価指標)に基づく効果測定方法により、その空間に求める効果が設計段階で具体化されます。竣工後あるいは供用後もその効果測定を継続して行えるため、更にありたい姿の実現に向けてより効果的なリニューアルが可能となります。

 今後当社は、ワークプレイスに限らず様々な用途の建築空間設計に際してもナッジデザインを活用し、よりお客様のニーズに直結した最適な建築空間の提供に取り組んでまいります。

図1 ありたい姿の実現を可能とするナッジデザインの事例(各種効果)
図1 ありたい姿の実現を可能とするナッジデザインの事例(各種効果)
図2 ナッジデザインを活用した課題解決までのワークフローイメージ
図2 ナッジデザインを活用した課題解決までのワークフローイメージ
  1. ※1

    ナッジ:行動科学の知見により、人がより良い選択をとれるように、手助けをする行動理論。そっと後押しするという意味の英語。親象が子象をそっと鼻でおして行動を促す姿に対し用いられることが有名。

  2. ※2

    ABW:Activity Based Workingの略。働く人が仕事内容に合わせて自律的に働く時間と場所を自由に選択するワークスタイル。

  3. ※3

    様々な心理学的効果:自分自身を客観的に認識するメタ認知によって問題解決力などを高め能動的な行動を促す「メタ認知効果」や、考えや行動を無意識に周囲に合わせていくことで生産性などが向上する「同調効果」、見本(モデル)となる人の動作や行動をまねることや疑似体験により経験値として蓄積・共有することでより早く成果を上げられる「モデリング効果」などがある。