リリース

カーボンニュートラル実現に向けCCS事業推進室を新設

-ゼネコンで唯一となるCCS事業での活動を本格化-

2024年4月3日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(代表取締役社長:相川善郎)は、2024年4月1日付で土木本部土木技術部に「CCS※1事業推進室」を新設し、CCS事業に向けた活動を本格化します。

 2016年に発効したCOP※221パリ協定により、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」との目標が設定され、日本を始めとする数多くの国が2050年でのカーボンニュートラルの目標を掲げました。その目標達成に向け、昨今世界各地で頻発する気象変動をもたらす地球温暖化の要因であるCO2の削減策として、CCSの重要性が国内外でますます認識されてきています。

 日本では2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、2022年にCCS長期ロードマップ検討会が開催され、2023年3月に公表された最終とりまとめの中で、2030年までの事業開始を目標とし事業者主導による「先進的CCS事業」を選定し、国により集中的に支援する方針が示されました。また、2050年には年間1.2億トン~2.4億トンのCO2の貯留が必要となるという普及見通しが掲げられ、2024年にはCO2の貯留事業に関する法律も成立する予定であり、日本国内でのCCS事業実施の準備が着々と進んでいます。

 CO2の地中貯留技術は、1970年代より石油増進回収法(EOR※3)の一つとして開発され、1990年代からは天然ガスに含まれるCO2を分離し、地中の深部塩水層に圧入する方法が開発・適用されてきました。CCSに必要とされる技術は、石油・天然ガスを開発・生産する技術と共通部分が多く、これまで石油開発会社が中心となって技術開発が行われてきました。

 一方、当社は2000年初頭より、CO2の地中貯留シミュレーションの技術開発を開始し、海外プロジェクトへの参画に加え、国内の主要CCS実証プロジェクトで貯留シミュレーションを担当し、数々の実績を積み上げて来ました。昨今では環境省実証事業や二酸化炭素地中貯留技術研究組合等に参画しています。その実績が認められこれまでゼネコンとして唯一Global CCS Institute※4や石油技術協会への加入が認められてきました。
 さらに、2022年4月には土木本部土木技術部内にCCSプロジェクト推進チームを設置し、「先進的CCS事業」に参画すべく活動を開始しました。また、2023年7月には独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による「先進的CCS事業の実施に係る調査」の公募に応募し、「日本海側東北地方CCS」※5の事業が選定されました。

 これらの状況を踏まえ、当社ではこの度CCS事業推進室を新設し、当社が保有する地中貯留シミュレーション技術に加え、必要な地質、物理探査、坑井掘削、貯留層、安全設備など各分野の専門性を持った人材を外部から招き入れCCS事業活動に本格的に取り組むこととなりました。
 CO2排出に係わっている建設事業者としてもCO2排出削減への積極的な取り組みは社会的責任であり、国が目標としているCO2貯留の実現には産業規模での大幅な拡大が必須となることから、今回のCCS事業活動の推進は新規参入に繋がる絶好の機会と捉えています。

 今後当社は、建設事業で培った技術と経験を活かし産業規模でのCCS事業の拡大を図るとともに、将来的には二酸化炭素を排出者から有料で引き取り、恒久的に地下貯留するCO2処理事業者として探鉱・開発/建設・圧入操業などCCS事業の運営を目指し、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。

  1. ※1CCS:Carbon dioxide Capture and Storage、二酸化炭素回収・貯蔵
  2. ※2COP:Conference of Parties、国連気候変動枠組条約締結国会議
  3. ※3EOR:Enhanced Oil Recovery、油層内へのCO2圧入による原油の回収率を上げるための技術
  4. ※4Global CCS Institute:オーストラリアで設立されたCCSの国際的シンクタンクで日本政府も加入
  5. ※5日本海側東北地方CCS:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による「先進的CCS事業の実施に係る調査」の公募により選定された7プロジェクトのうちの一つで、7プロジェクトの合計で年間1,300万トンのCO2貯留を目指す。本プロジェクトでは、製造工場などから回収したCO2を液化して船舶で輸送し、受入基地で荷揚げしたCO2を地中に圧入する事業モデルを想定しており、当社はINPEX社と共同で貯留に関わる地層のモデル化およびシミュレーションによる評価からCO2を圧入する井戸の掘削計画などを担当。2030年の圧入開始に向けて貯留層評価や評価井掘削といった一連の作業に参画し先進的CCS事業の実現に貢献していくことに加え、本件以外にも更なるCCS事業の可能性も検討していく予定
JOGMEC「先進的CCS支援事業」に選定され2030年事業開始を目指す7プロジェクト概要
JOGMEC「先進的CCS支援事業」に選定され2030年事業開始を目指す7プロジェクト概要
(出典)JOGMECプレスリリース(2023年6月)より、大成建設土木本部作成
船舶輸送を用いた大規模広域CCSバリューチェーン事業模式図
船舶輸送を用いた大規模広域CCSバリューチェーン事業模式図