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地盤掘削形状の3次元計測技術「T-Pile 3D Monitor」を開発

- 杭・連壁の高精度な構築を可能とし、残コンクリートとCO2排出量の削減を実現 -

2024年3月18日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、場所打ち杭や地中連続壁(以下、杭・連壁)などの基礎構造物の構築工事において地盤の掘削形状を短時間で正確に把握することができる3次元計測技術「T-Pile 3D Monitor」を開発しました。本技術の適用により、杭・連壁の高精度な構築が可能となり、残コンクリート量とそれに伴うCO2排出量の削減を実現できます。

 杭・連壁の構築工事では、地盤掘削形状を正確に把握することが施工品質確保の観点から大変重要となります。しかし、掘削形状は地盤性状に左右される上に、近年は地盤支持力の向上を目的として先端部形状を拡大する拡底杭※1など多様な杭・連壁の採用増加に伴い掘削形状自体も複雑化しており、掘削終了時の地盤掘削形状の正確な把握がより困難な状況となっています。従来の掘削形状測定では、超音波測定器を用いて孔壁の円周方向2断面だけを測定してきましたが、複雑な掘削形状を正確に把握するには孔壁に対して測定器の円周方向角度を変えて何度も計測する必要があり、多大な労力と時間を要していました。また、地盤の掘削形状は掘削機の軌跡よりも大きな形状となることが多いため、コンクリート打設時に設計量より数%割増してコンクリートを余分に手配する必要があり、打設終了後の残コンクリートの削減も課題の一つとなっていました。

 そこで当社は、掘削地盤(孔)内に吊り下げた超音波測定器を孔壁の円周方向に回転させながら、任意角度での計測を自動制御で行い、取得した計測データを現場パソコンで解析・可視化することで、地盤の3次元的な掘削形状を短時間で正確に把握することができる計測技術「T-Pile 3D Monitor」を開発しました。(図1、図2参照)

本計測技術の特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    複雑な掘削形状を正確に把握し、基礎構造物の高精度な構築が可能
    本技術は、杭・連壁を構築する際の地盤掘削形状を3次元で正確に把握できるため、杭の鉛直精度向上に寄与するとともに、拡底杭の拡径部などの複雑な形状の基礎構造物を高精度に構築することが可能となります。

  2. 2

    適切なコンクリート量が計算でき、残コンクリート量とCO2排出量を削減可能
    本技術の適用により、正確な地盤掘削形状を基に杭・連壁の適切なコンクリート打設量を計算することができます。(図3参照)このため余掘り量を考慮して計画時にコンクリートを余分に多く手配する必要がなく、残コンクリート量を削減できることからCO2排出量削減にも効果があります。

  3. 3

    短時間で正確な掘削形状を把握し施工時間の短縮を実現
    本技術の計測に要する時間は、従来計測法で2回測定する時間よりも短い時間で実施できます。従来の計測では、崩壊性の高い地盤などでは何度も計測する必要がありましたが、本技術の適用により地盤掘削形状を短時間で正確に把握できるため、掘削・計測工程の効率化が可能となり、施工時間の短縮が実現できます。

 今後当社は、杭・連壁に係る技術「T-Pileシリーズ」の一環として、土木・建築分野を問わず、基礎構造物の構築に本技術を積極的に展開してまいります。

図1 杭・連壁の施工の流れ
図1 杭・連壁の施工の流れ
図2 T-Pile 3D Monitor測定イメージ
図2 T-Pile 3D Monitor測定イメージ
図3 コンクリート打設曲線
図3 コンクリート打設曲線 
  1. ※1

    拡底杭:杭の先端部を軸部の径より大きくした杭で、経済的に大きな先端支持力が期待できる杭