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BIMを用いた建築物新築時CO2排出量予測システム「T-CARBON BIMシミュレーター」を開発

設計段階で調達・施工時のCO2排出量を短時間に高精度で算出

2023年12月15日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、建築物新築時の設計段階において、BIMモデルを活用することで建築物に使用する建材や設備などの製造・調達および施工時のCO2排出量を短時間に高精度で算出できる予測システム「T-CARBON BIMシミュレーター」を開発しました。

 2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、建設・不動産分野では建築物新築時の調達・施工・解体等で排出されるCO2排出量「エンボディドカーボン※1」の削減が求められています。このうち、調達・施工時のCO2排出量「アップフロントカーボン※2」を把握するには、建築物に使用する建材ごとのCO2排出量を、建材それぞれの使用数量を基に算出する必要があります。しかし、建材の種類が多岐にわたることから、工事規模が大きい場合などにはCO2排出量の算出に数カ月かかるなど、多大な時間と労力を要していました。

 そこで当社は、BIMデータを活用し設計段階におけるアップフロントカーボンを容易に把握することができるシステム「T-CARBON BIMシミュレーター」を開発しました。本システムを適用してBIMから算出した建材の種類ほか壁・扉の枚数などの詳細な数量データと、アップフロントカーボンを正確に予測する既存の当社独自開発システム「T-CARBON Navios※3」とを連携させることで、建材ごとのCO2排出量を短時間でより高精度に予測することが可能となります。(図1参照)

図1 T-CARBON BIMシミュレーターの適用イメージ
図1 T-CARBON BIMシミュレーターの適用イメージ

 本システムの特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    建築物の設計段階における建材の調達・施工時のCO2排出量を把握可能
    建材ごとのCO2排出量をBIMと紐づけて算出することで、設計段階におけるアップフロントカーボンを把握し、管理することが可能になりました。

  2. 2

    建材変更によるCO2排出量の増減をBIM上で確認し設計にも反映可能
    建材ごとに異なるCO2の排出原単位を考慮して排出量を算出するため、建材の変更によるCO2排出量の増減をBIM上で随時確認しながら建材を適切に選定し、費用対効果を視野に入れながら設計に反映させることができます。

 なお、本システムは、建設費の自動積算と連携させ、CO2排出量の増減と建設費を比較検討しながら設計を進めることができるようシステム構成の改良を進める予定です。CO2排出量の削減状況と建設費の相関関係を可視化し、カーボンプライシング(炭素1t当りを金額換算する仕組み)※4と連動させることで、将来的に発注者が目標とするCO2排出量削減の費用対効果を定量的に把握できる仕組みを構築します。

 今後当社は、本システムの適用により、建築物の設計段階でお客様にCO2排出量に関する精度の高い情報をより短時間で提供し、お客様のニーズに迅速に対応しながら建築物のライフサイクルにおけるCO2排出量の削減に向けた取り組みを進めてまいります。

図2 T-CARBON BIMシミュレーターによるCO2排出量分析状況
  1. ※1

    エンボディドカーボン:建築物のライフサイクルで発生するCO2排出量のうち、資材製造、施工、使用(維持・修繕等)、解体の段階に該当する排出量を示す。

  2. ※2

    アップフロントカーボン:建築物建設時の建材の製造・調達および施工時に発生するCO2排出量を示す。

  3. ※3

    T-CARBON Navios:調達段階では使用建材ごとのCO2排出量を短時間で正確に把握することで、より効果的なCO2排出量削減策の検討が行え、施工段階では施工時のCO2排出量削減計画の検討にも活用が可能な当社独自開発システム。今後、T-CARBON Naviosの実案件への導入を順次開始し、調達および施工段階のCO2排出量の削減を推進することで、建築物のライフサイクルにおけるカーボンニュートラルの実現に貢献する。

  4. ※4

    カーボンプライシング:企業などが排出するCO2に価格をつけることで、排出者に自主的な行動の変容を起こさせる経済的手法。