リリース

大成建設グループ次世代技術研究所に「ゼロカーボンビル」の建設を開始

設計レベルで新設研究管理棟のライフサイクルにおけるカーボン・ネガティブを実現

2023年11月6日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、埼玉県幸手市に建設中の大成建設グループ次世代技術研究所において、2023年9月より国内初の「ゼロカーボンビル」となる研究管理棟の建設を開始しました。新設する研究管理棟では脱炭素化に向けた先進的な技術の導入などにより、設計レベルで建物のライフサイクルにおけるCO2収支をマイナスとするカーボン・ネガティブを実現しています。(表1参照)

 研究管理棟の建設では、当社が開発したゼロカーボンビルの評価指標である「T-ZCB®※1」を活用して、 調達(建設資材製造・入手)、 施工、運用( 建物の運用および修繕・解体)まで含めた建物のライフサイクル全体で発生するCO2収支をゼロにするゼロカーボンを目指しています。
 そこで当社は、調達・施工・運用の各段階において、木質および低炭素建設資材の適用、施工時の脱炭素燃料の採用や先進的な省エネルギー・創エネルギー技術の導入などCO2排出量の削減に向けた様々な取り組みを進めます。T-ZCBに基づく評価では、設計レベルで建物ライフサイクルにおけるカーボン・ネガティブの実現により、ゼロカーボン達成が見込まれています。

 各段階での実施概要およびCO2削減効果(試算値)は以下のとおりです。(表1参照)

【調達段階】

建物上層2層の木造化と下記の技術、材料の導入により、標準建築物に比べ約10%のCO2削減を実現します。

  • 室内の木製OAフロア(T-WOOD OA Floor)

  • アルミ箔をコーティングした段ボール製空調用ダクト(コルAirダクト)
  • 段ボール天井(脱炭素建材と軽量化天井を両立させる新建材)
  • 薄型放射空調ダクト(T-Green Radiant Duct)

  • 環境配慮コンクリート(T-e Concrete®)
  • 電炉材をベースにさらに製造時エネルギーを脱炭素化した鋼材(T-ニアゼロスチール)

【施工段階】

下記の技術、機械、燃料などの導入や取り組みにより、施工時に発生するCO2排出量ゼロを実現します。

  • 電動・ハイブリッド重機の導入

  • 仮設作業所事務所のNet ZEB化

  • 掘削土の場内再利用
  • 脱炭素・低炭素燃料の導入
    上記項目の実施によりカーボンフットプリントを最小限にした後、

  • 再エネ電源(非化石証書)・クレジットの活用によりカーボンオフセット

【運用段階(運用時)】

各種先進的省エネルギー技術と太陽光発電等の創エネルギー技術を活用し、建物ライフサイクルでCO2収支が最も多い運用段階のCO2収支をカーボン・ネガティブにします。

  • 超省エネ自動環境制御システム(T-Zone Saver)

  • ビルエネルギーマネジメントシステム(T-Green BEMS Cloud)
  • デザイン性に優れ高効率な太陽光発電(T-Green Multi Solar)
  • 受給一体型BEMS・蓄電池

【運用段階(修繕・解体時)】

建物修繕回数の削減やCO2排出量を削減した資機材を用いた解体により約15%のCO2を削減します。

  • 長寿命化建材の導入

  • CO2フリーのリサイクル建材利用
  • 再生可能エネルギー由来の電動重機や機械よる解体

 上記各段階におけるCO2排出量の算定結果より、研究管理棟のライフサイクル全体で排出されるCO2の削減量収支は、標準建築物に対して-14,221t-CO2(標準建築物比:-104%)となり、カーボン・ネガティブとなる見込みです。

 今後当社は、本プロジェクトによって得られた知見を基に、ゼロカーボンビルの評価指標であるT-ZCBを活用して、お客様の建物に対して段階的なゼロカーボンビルの提案を推進してまいります。

図1 次世代技術研究所研究管理棟完成予想図
  1. ※1

    T-ZCB(ゼロカーボンビル):
    初期計画段階で建築物のライフサイクルCO2排出量及びCO2削減技術の効果を可視化し、建築物の脱炭素化を体系的に評価するシステムであり、LCA研究の権威である法政大学川久保教授にご指導いただきながら、共同開発した。

  2. ※2

    LCA指針をベースに算出。

  3. ※3

    段階毎の累積CO2排出量を可視化するT-ZCBチャートにおいて、建築物のライフサイクル全体にわたり排出されるCO2を100%削減する建築物をNet-ZCBと定義した。