鉄道工事での作業可能時間帯の明示を効率化したシステム「T-iAlert® Railway」を開発
2023年7月13日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、鉄道工事における作業可能時間帯の明示を効率化したシステム「T-iAlert Railway (track closure)」を開発しました。従来各現場では、作業可能な時間帯であることを示す補助手段として、手動にてパトライト®※1(写真1参照)を点灯することで、線路閉鎖作業、停電作業※2の実施可否に関する明示を工夫してきました。今回これをシステム化することで、工事管理者がタブレットでの一括操作でパトライト®を点灯させることが可能となり、作業効率の向上、大幅な省人化、生産性の向上が実現しました。
鉄道工事では、列車の運行に支障を生じさせる恐れのある作業の際に、まず一定の時間に限り工事区間に列車を進入させない線路閉鎖と感電事故を防止するための架線の停電の手続きが必要になります。これらの手続きが完了した後、作業班に対する作業着手・解除の指示を口頭、無線、電話等で伝達し、作業時間帯であることを明示する補助手段として、パトライト®を用いた明示が採用されています。しかし、複数の作業班が広範囲にわたり一斉に作業を行うことから、複数のパトライト®を一つずつ手作業で操作する従来の方法では作業開始・終了の伝達に多大な時間と労力を要するという課題がありました。
そこで当社は、タブレットを用いた一括操作により、簡単に短時間で複数のパトライト®を点灯・消灯させて作業時間帯を明示することができるシステム「T-iAlert Railway (track closure)」を開発し、鉄道近接工事で実証試験を行い、適用状況を確認しました。本システムの適用により、パトライト®の点灯・消灯で作業可能な時間帯を目視で明確に確認し、勘違いや誤認による作業着手を未然に防ぐことで列車運行と作業関係者の安全を確保していた一連の手順が効率化できます。また、作業効率の向上と大幅な省人化が可能となりコスト削減に寄与するなどの効果が得られます。
本システムによる作業手順および特徴は以下のとおりです。(写真1、表1参照)
【作業手順】
- ①
作業開始前に、作業班毎に手続きが必要な線名(上下線等)と種別(線路閉鎖・停電のいずれかまたは両方)をタブレットにより事前入力
- ②鉄道事業者に「線路閉鎖」、「停電」の手続きが完了したことを確認
- ③タブレットにより「線路閉鎖着手」または「停電着手」を操作
- ④
インターネットを介して、対象となる複数のパトライト®に「点灯」を送信
⇒点灯(線路閉鎖:青色パトライト®点灯、停電:緑色パトライト®点灯)確認後、作業開始 - ⑤作業完了後、タブレットにより「線路閉鎖解除」または「停電解除」を操作
- ⑥
インターネットを介して、対象となる複数のパトライト®に「消灯」を送信
⇒消灯確認後、作業終了
【特徴】
- 1
多様な条件設定が可能
作業班毎に異なる手続きが必要な線路閉鎖および停電手続きの条件に応じて複数のパトライト®の点灯(消灯)を設定することができ、関係者への作業時間帯の明示が可能です。 - 2
タブレットによる簡単な一括操作を実現
対象となる線路閉鎖および停電手続きの完了を確認後、タブレットを用いた簡単な操作により、インターネットを介して作業班毎にパトライト®を点灯(消灯)させることができ、作業効率が大幅に向上します。 - 3
タブレット操作での線路閉鎖・停電状況等の保存・確認により誤操作を防止
現場に配置された線路閉鎖責任者による『線路閉鎖手続専用端末』等の操作画面、停電責任者等が停電・送電状況を確認するために行う検電作業等をタブレット操作により撮影・保存します。これらの情報を関係者間で共有し、作業現場での実施状況と比較・確認することができるため、線別誤りなどの誤操作を防止します。
今後当社は、鉄道工事における安全・安心の確保および生産性の向上を可能にする本システムを、土木・建築分野を問わず、全国の鉄道近接工事への導入を提案してまいります。
- ※1
パトライト®は、株式会社パトライトの登録商標です。
- ※2
線路閉鎖・停電手続き:
線路閉鎖手続きは、列車又は車両の運転に支障を及ぼすか又はそのおそれのある作業の際に、一定の区間及び時間に限り、その区間に列車を進入させないようにする手続きを示す。
線路閉鎖手続きは、線名(上下線等)毎別々に実施できる。
一方、停電手続きは、電車の走行に必要な電力を供給している接触電線(トロリ線)に近接して作業する場合等に、感電事故を防止するために架線に電気が流れていないことを確認する手続きを示す。停電手続きは、上下線等一括で実施できる。
これらは着手の際、線路閉鎖⇒停電の順で行われ、線路閉鎖手続きのみで実施可能な作業と、停電手続きも必要である作業に分類される。また、解除は、停電解除⇒線路閉鎖解除の順で行われる。
- ※DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。