リリース

AIを用いた設備機器の最適消音設計システム「T-Optimus® Noise」を開発

設備騒音を低コストで効果的に低減

2023年5月26日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、室外機や冷却塔など音を発する設備機器が多数設置される生産施設などの設計に際して、騒音を基準値以下に抑制するための最適な消音装置の組み合わせを、AIの一種である「進化計算※1」を用いて自動で選定するシステム「T-Optimus Noise」を開発しました。本システムの適用により、設備機器の複合騒音を規制値以下に低減する消音装置の無数の組み合わせの中から、最小コストでの配置パターンを短時間で選定することができ、設備騒音の対策コストと設計時間の大幅な削減が可能となります。

 工場やごみ処理施設などで室外機や冷却塔といった設備機器を多数設置する場合、設備機器から発生する複合騒音が敷地境界で法律などにより定められた基準値を超えないようにする必要があります。このため、これまでは敷地境界における騒音の伝搬状況をシミュレーション(図1参照)により確認し、基準値の超過が予測される場合は、騒音レベルに応じて設備機器を防音塀で取り囲むか、設備機器ごとに消音装置を設置するなど設備騒音を抑える措置を講じてきました。このうち消音装置は、専門技術者が設備機器ごとの騒音レベルに合わせて選定・設置されますが、種類によって消音性能とコストが異なるうえに、無数の組み合わせが想定されるため、大規模な工場や施設では数百個にも及ぶ設備機器ごとの検討に多大な労力と時間を要していました。

 そこで当社は、AIの一種で、膨大なパラメータ(変数)の組み合わせの中から効率的に最適解を導き出すことのできる「進化計算」を用いて、敷地境界における複合騒音が基準値以下となり、かつ総コストが最も低くなるような消音装置の配置パターンを自動で選定する最適消音設計システム「T-Optimus Noise」を開発し、実際の建物において効果を検証、その有効性を確認しました。

 本システムの特徴および検証効果は以下のとおりです。

【特徴】

  1. 1

    AIを用いて各設備機器に最適な消音装置を自動で選定
    AIの一種である進化計算により、各設備機器から発生する音の特性を考慮しながら、敷地境界における騒音レベルが基準値以下となるように、各設備機器に配置する最適な消音装置を短時間に自動で選定することができます。(図2参照)

  2. 2

    最適ケースの選定により、消音対策にかかる総コストを最小化
    各設備機器に配置する消音装置の選定に加え、膨大なパラメータの組み合わせの中から、消音対策にかかる総コストが最小となる最適ケースでの設計を可能にします。

【検証効果】

 ごみ処理施設の屋上や建物周辺に設置される32台の設備機器を対象に、消音性能 とコストが異なる3種類の消音装置(A型、B型、C型)を選定・配置する場合について、T-Optimus Noiseと従来法とを比較しました。(表1参照)
 この結果、T-Optimus Noiseの場合はA型を5台、B型を4台、C型を2台使用し、残り21台は消音装置を設置しないという設定が選定された一方、専門技術者による従来法ではB型のみを12台使用し、その他の設備には消音装置を設置しない設定が選定されました。従来法の検討には2日間を要したのに対し、T-Optimus Noiseでは約1時間で最適な消音装置の組み合わせを抽出できました。また、従来法では消音装置本体の導入にかかる総コストを5千万円と試算していたのに対して、T-Optimus Noiseでは約4割減の総コスト3千万円の設備投資で騒音が基準値以下となることを確認しました。

 今後当社は、生産施設やごみ処理施設など設備騒音が懸念される建物の新築・改修に際し、低コストで効果的な騒音低減対策の設計手法として、本システムを積極的に適用してまいります。

図1 屋外騒音伝搬シミュレーションの例

図1 屋外騒音伝搬シミュレーションの例

図2 T-Optimus Noiseによる消音装置の選定

図2 T-Optimus Noiseによる消音装置の選定

  1. ※1

    進化計算:生物の進化の過程を模倣することで、対象となるパラメータを変形、合成、選択して、複雑な工学的問題の最適解を探索する手法。人の思考では辿り着けないような解についても効率的に求めることができる。