「人と空間のラボ(ZEB実証棟)」のゼロウォータービル化に着手
2023年5月25日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、技術センター(横浜市戸塚区)の「人と空間のラボ(ZEB実証棟)」において、既設の雨水利用設備に加えて新たに排水再利用設備を導入することで上水使用量を極力削減し、LEED※1 ZERO Program Guide※2で定義されたゼロウォーター(LEED Zero Water※3)の認証取得を目指す技術実証を開始しました。
持続可能な開発目標(SDGs)における17の目標のひとつに「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられ、世界的に水資源の有効利用への関心が高まっています。これに対し、米国では、USGBC(米国グリーンビルディング協会)が開発したLEED(建物と敷地利用に関する環境性能を評価するシステム)において、炭素、エネルギー、水、廃棄物の4項目を対象にネットゼロの達成を評価するためのLEED ZERO Program Guideを提示しています。
このような背景のもと、日本においても環境意識が高い海外企業のサプライチェーンの一翼を担う国内企業の本社ビルや工場・物流センター等の建設に際して、海外発注者からLEED認証の取得だけでなく、LEED ZERO Program Guideの遵守が求められるケースの増加が今後予想されます。
そこで当社は、2014年にLEED認証(プラチナ認証)を取得済みの「人と空間のラボ」において、LEED ZERO Program Guide に則り、4項目のうち「水」に関して国内初となるLEED Zero Water認証取得を目指して技術実証を開始しました。本実証では、改修前と比較して上水使用量の約20%削減を目標とし、1年間にわたり「人と空間のラボ」の水使用量を調査し、雨水および雑排水再利用水の用途拡大を図ることで超節水ビルの実現を目指します。
本実証での主な調査内容は以下のとおりです。
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貯留雨水の利用
「人と空間のラボ」では、2014年の供用開始時から屋上に設置した太陽光パネルに降った雨を集水して無動力で雨水タンクに貯留しており、晴天時は発電エネルギーを創り、雨天時は水資源を確保する、創エネ・省資源を両立するシステムを採用しています。現在、雨水をトイレ洗浄水に利用することで年間の上水使用量を約25%削減しており、引き続きトイレ洗浄水として利用するほか、改修により緑地散水としても雨水を利用します。 - 2
小規模雑排水の再利用
排水再利用では、トイレの手洗器や給湯室の流し台からの油分が少ない比較的水質の良い小規模雑排水に微生物による浄化処理を施しトイレ洗浄水および緑地散水に再利用します。厨房のないオフィスビルなど様々な用途・規模の建物に適用可能です。
今後当社は、建物での雨水利用・雑排水再利用により上水使用量削減を推進するとともに、本実証の知見を活かして様々なお客様が保有する建物を対象にZero Water認証取得を支援し、省資源・循環社会の推進に貢献してまいります。
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LEED(Leadership in Energy & Environmental Design):
米国の非営利団体USGBC(U.S.Green Building Council)が開発・運用し、GBCI(Green Business Certification Inc.)が認証の審査を行っている建物と敷地利用についての総合的な環境性能評価システムであり、LEED認証は建物の環境価値の向上にもつながることから、海外では社内基準で認証取得を掲げている企業も存在する。実証を行う「人と空間のラボ」は、プラチナ認証を取得している。 - ※2
LEED ZERO Program Guide:
LEED認証を取得したプロジェクトを対象にネットゼロ(正味ゼロ)の達成を評価するプログラムとして2018年に公開。LEED Zero認証として炭素(Carbon)、エネルギー(Energy)、水(Water)、廃棄物(Waste)の4項目が運用されている。 - ※3
LEED Zero Water:
LEED ZERO Program Guideでは、年間の上水使用量に対して、代替水(雨水・再利用水)使用量と水源還元量の合計が同量以上となった場合にZero Waterと定義している。このプログラムにはLEED認証を取得したプロジェクトのみが取り組むことが可能で、LEED Zero Water認証の取得は、新築・既存建物の環境価値をより高めることが期待される。
(「人と空間のラボ」では水源還元はなし)
定義式:Water Balance = Total Potable Water Consumed – (Total Alternative Water Used + Water Returned to Original Source)