施工管理支援システム「T-iDigital®Field」に山岳トンネル工事に特化した機能を拡張
2023年4月27日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、「生産プロセスのDX」の一環として、施工中に取得される膨大なデジタルデータを活用して施工管理業務を支援するシステム「T-iDigital Field※1」の機能を拡張し、山岳トンネル工事の切羽(トンネル最先端の掘削面)作業に特化した総合管理基盤を構築しました。また、本基盤構築で拡張した施工管理支援機能に加え、施工時に建設機械等から発生するCO2排出量を可視化する仕組みも併せて追加しました。
山岳トンネル工事では大型建設機械を用いて削孔、装薬、発破、ずり出し、切羽への吹付け、支保工の建込・吹付けなどの切羽作業と呼ばれる工程が繰り返し行われます。この一連の作業を効率的に行うには、まず切羽での作業に要する時間(サイクルタイム)を把握する必要があります。しかし、これまでのサイクルタイム管理では作業毎の所要時間を職員が個別に現地で記録・集計するため、多大な労力が費やされていました。
また、施工時に建設機械等から生じるCO2排出量を把握する際も月毎の給油実績に基づいた管理方法のため集計作業が煩雑かつ時間を要し、リアルタイムでの管理は困難でした。
そこで当社は、2020年に開発した施工管理支援システム「T-iDigital Field」をベースに、山岳トンネル工事特有の切羽作業において、建設機械による作業毎の所要時間や坑内配置などをリアルタイムに計測し、各工程での稼働状況やサイクルタイム統計データを把握・管理する機能を追加して山岳トンネル工事に係る関連データの総合管理基盤を構築しました。
また、建設機械の稼働状況を常時モニタリングし、CO2排出量を建設機械毎にリアルタイムに表示する機能も新たに追加しました。(図1参照)
これらの機能を追加した「T-iDigital Field」を、現在施工中の複数の山岳トンネル工事現場※2にて導入・検証し、以下の効果を確認しました。
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山岳トンネル工事の効率的なサイクルタイム管理により、生産性が向上(図2参照)
建設機械毎に稼働状況を可視化するなど工事関係者間でサイクルタイム内での稼働状況をリアルタイムに把握し、その情報の共有により効率的な施工管理を実現できます。現場での検証結果から本システムの活用により施工ロスが削減され、従来施工と比較してサイクルタイムを最大11%短縮できることを確認しました。 - 2
CO2排出量のリアルタイム表示により改善すべき建設機械を瞬時に把握(図3参照)
建設機械の稼働状況からCO2排出量をリアルタイムに可視化し、CO2排出量の推移を表示するなど改善対象となる建設機械を常時把握することで、環境に配慮した建設機械の選定や運転方法等の即時の対策が可能となります。
今後当社は、土工事や橋梁工事など適用工種の拡大を図るとともに、建設現場での施工支援アプリケーションを追加開発し現場適用による蓄積データの検証・分析と取得される各種データに基づき施工と安全に関する管理機能を拡張した基盤整備を行うことで、DX技術を導入した建設現場の変革を目指してまいります。
また、CO2排出量の算出および可視化等による管理については、当社で開発した「T-CARBON Watch」※3との連携を図り、自社事業におけるCO2排出量の削減に向けた取り組みを加速してまいります。
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T-iDigital Field:
T-iDigital Fieldは、CPS(Cyber-Physical Systems) の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータをAIや多変量分析などにより、最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援、生産性の向上を目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。
この技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放され、建設作業の遠隔操作や自動化が効果的に機能することでさらなる施工効率や安全性の向上などの新たな付加価値の創出により、これまでの建設業における常識の著しい変革につながることが期待される。 - ※2
機能拡張した「T-iDigital Field」の施工支援アプリケーションを以下の山岳トンネル工事現場にて導入・検証
・(仮称)上曽トンネル本体工事(桜川工区)(発注者:茨城県・桜川市)
・R2国道20号下諏訪岡谷BP山田トンネル工事(発注者:関東地方整備局)
・R2-5朝日温海道路2号トンネル工事(発注者:北陸地方整備局)
・国道7号鼠ヶ関トンネル工事(発注者:東北地方整備局) - ※3
T-CARBON Watch:
建設現場で発生するCO2排出量をカメラとAIの画像認識機能を用いてスポット入場重機や車両情報、燃料供給業者から提供される現場内での給油情報、電子マニフェストデータによる廃棄物運搬情報などを活用し、自動計測・集計するシステム。これにより、担当者の入力作業を極力省くことができ、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを更に加速させることが期待される。
- ※DX認定とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。