リリース

自走ロボットによる照度測定及び自動帳票作成システム「T-iDigital Checker」を開発

照明設備機器性能検査のICT化により建設現場の生産性を向上

2023年4月17日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は自走ロボットを用いて居室における照度測定※1を無人で行い、測定記録(帳票)を自動作成するシステム「T-iDigital Checker」を開発しました。本システムの導入により建物竣工前性能検査のICT化が図れ、これまで作業員が手作業で行っていた照度測定及び帳票作成を自動化することができ作業時間が大幅に短縮されるため、建設現場の生産性向上が可能となります。

 オフィスや工場などの作業空間における明るさは、その居室内での労働環境に応じて様々な規則に定められた照度基準※2を満たす必要があります。そのため、建物竣工前に性能検査の一つとして適切な照度確保のため照度測定試験※3を行い、基準を満たさない場合には照明設備を見直すなど、これら一連の対応に膨大な労力と時間を要していました。また、照度測定は日射の影響をまったく受けない夜間に行う必要があり、測定時間の制約を受けることから、測定作業の自動化や迅速化が課題となっていました。
 そこで当社は、自走ロボットを用いて照度測定しながら帳票を自動で作成するシステム「T-iDigital Checker」を開発し、実際のオフィスビル建設現場においてその有効性を確認しました。

 「T-iDigital Checker」の特長は以下の通りです。

  1. 1

    自走ロボットを用いて照度測定を自動化
    天井照明の位置が記載された図面を記録したアプリケーションに照度測定点を指定すると、測定ルートを自動算出して自走ロボットが測定を開始します。ロボットは搭載カメラで天井照明の配置を認識して自己位置の確認※4が可能で、測定ルート上の障害物も自動認識により回避して走行しながら、照度を連続測定できます。(写真1、図1参照)

  2. 2

    照度測定高さを変更可能
    照度測定高さが異なる一般照明(オフィス机上面の高さ75㎝での照度)と非常照明(床面での照度)の測定に関しては、自走ロボットの照度計受光部を付け替えることにより計測が可能となっており、それぞれの照度を正確に測定できます。(写真2参照)

  3. 3

    測定記録から帳票を自動作成
    照度測定記録を基に自動で帳票(測定範囲内の図面と測定位置、照度結果をリストアップ)を作成することができます。(図2参照)また、手作業が介在しないため、人的ミスを防ぎ正確な測定記録の提供が可能となり、測定記録の信頼性向上に寄与します。

  4. 4

    作業時間の大幅短縮により生産性向上に寄与
    床面積約500㎡のオフィスでの試算例では、これまで作業員2名で現地照度測定・記録に10分、測定記録の帳票作成に40分の計50分を要していました。これに対して、本システムでは自走ロボットによる現地照度測定に4分、帳票作成・出力・保存に1分の計5分で実施できることから、計測作業における大幅な効率化が図れます。

 今後当社は、生産プロセスDX化に向けた取り組みの一つとして、本技術を積極的に提案し、建設現場における生産性向上を推進してまいります。

写真1 自走ロボット外観
写真1 自走ロボット外観
写真2 照度測定状況(一般照明測定走行時)
写真2 照度測定状況(一般照明測定走行時)
図1 測定ルート表示(アプリ画面)
図1 測定ルート表示(アプリ画面)
図2 照度測定結果(帳票化データ)
図2 照度測定結果(帳票化データ)
  1. ※1

    照度測定:建物竣工前の設備機器性能検査の一つとして行う照明機器の照度(光で照らされている空間の明るさ、明るさの度合いを単位:ルクスで表示)測定では、室内各所で所定の照度が確保されているか計測し、照度不足なら照明設備を調整、見直す必要がある

  2. ※2

    基準:労働安全衛生規則、事務所衛生基準規則で作業内容に応じて規定されており、一般事務作業では300ルクス以上、資料の袋詰やクリップ留めなど不随的な事務作業では150ルクス以上の照度が必要

  3. ※3

    照度測定試験:建物全体について、一般照明(多種多様な照明器具が発する人工光による照明)と非常照明(停電時に避難経路を照らす照明)の照度測定を実施し、各種規則の基準を満たすかどうか確認する試験

  4. ※4

    自己位置の確認:照明器具を用いた自己位置認識アルゴリズムは筑波大学と共同開発