リリース

鋼材の脱炭素と資源循環に取り組む「ゼロカーボンスチール・イニシアティブ」を始動

東京製鐵との連携による鋼材CO2排出量削減活動を展開

2023年4月7日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、建築物のライフサイクルにおけるCO2排出量を正味ゼロにするゼロカーボンビルの建設を推進するため、鋼材製造時の脱炭素化および鋼材の調達から解体・回収までの資源循環サイクルの構築に向けた取り組み「ゼロカーボンスチール・イニシアティブ」※1を始動しました。本イニシアティブの一環として利用される鋼材を「T-ニアゼロスチール」※2と位置付け、CO2排出量ゼロの実現に向けた取り組みを推進していきます。

 2020年10月に政府が宣言した2050年のカーボンニュートラル実現のため、建設業界においても国内建築物のライフサイクルで発生するCO2排出量を把握し削減することは、設計者、施工者だけでなく建築物を所有・運用するお客様にとっても必要不可欠な取り組みとなっています。しかし現在、材料製造および建設時に最もCO2を排出する建設用鋼材に関する脱炭素化技術は少なく、建設時の脱炭素化における大きな課題となっていました。
 そこで当社は、電炉メーカーと連携して「ゼロカーボンスチール・イニシアティブ」を始動させ、鋼材製造時の更なる脱炭素化技術の導入とCO2排出量の削減・除去に係る貢献活動等に取り組むことで、理論上、建築物への鋼材利用に際してCO2排出量ゼロの実現を目指していきます。
 また、本イニシアティブでは建築物の解体時に発生する鉄スクラップに関しても、製造フェーズと解体フェーズの資源循環サイクルでCO2排出量削減の仕組みを構築することで、段階的にカーボンニュートラルを目指した建築物の建設計画の推進が可能となります。
 本イニシアティブにおいて、これらの取り組みが広がることにより、国内全産業の40%といわれている鉄鋼業界の占めるCO2排出量の大幅な削減も併せて期待されます。

 そして今般、当社は本イニシアティブの第一弾として国内電炉最大手の東京製鐵株式会社(社長:西本利一)との連携により取り組みを開始しました。

 本イニシアティブでの東京製鐵との取り組みは以下の通りです。

  1. 1

    鋼材生産プロセスでの脱炭素化を実現(図1参照)
    電炉鋼材を用いて以下のプロセスで製造時のCO2排出量を削減。

    • 柱・大梁を含む構造骨組に用いる鋼材のほとんどを電炉鋼材で製造
      高炉鋼材に比べCO2排出量は0.5tCO2/鉄tに削減。(CO2排出量を全体累計で75%削減)

    • 本イニシアティブにより、第一段階で鋼材生産プロセスに用いる電力を東京製鐵 が再エネ電力等で代替し、低炭素型電炉鋼を製造
      CO2排出量は0.1tCO2/鉄tに削減。(CO2排出量を全体累計で95%削減)

    • 第二段階で残り5%のCO2排出量削減に向けて、当社と東京製鐵が連携して鋼材生産プロセスの脱炭素化に向けた設備投資や省エネルギー活動、CO2削減・除去への貢献活動等を実施する。
      (なお、本イニシアティブにおける「T-ニアゼロスチール」のCO2排出量算定方法の妥当性を第三者機関による意見表明で取得予定。)

    図1 脱炭素化に向けたプロセスと当社・東京製鐵の連携によるゼロカーボンスチール・イニシアティブ
    図1 脱炭素化に向けたプロセスと当社・東京製鐵の連携によるゼロカーボンスチール・イニシアティブ
  2. 2

    建築物使用鋼材の製造・調達から解体・回収に至る資源循環サイクルを構築
    建築物解体時に発生する鉄スクラップを東京製鐵と連携して回収し、鋼材の製造・調達時の脱炭素プロセスと建設・解体・回収時の資源循環プロセスを組み合わせることで、鋼材の資源循環サイクルを構築します。このような循環サイクルの構築により、再利用時に生じるCO2排出量の大幅な削減を目指します。

    図2 脱炭素と資源循環を実現するゼロカーボンスチール・イニシアティブのフローイメージ
    図2 脱炭素と資源循環を実現するゼロカーボンスチール・イニシアティブのフローイメージ

 今後当社は、本イニシアティブでの取り組みによりCO2排出量の削減に係る活動を活発化させ、ゼロカーボンビルの実現を目指します。また、他の様々な電炉鋼材メーカーとも本イニシアティブを展開することで、お客様のCO2排出量削減目標に沿った建設計画の立案を支援し、脱炭素(カーボンニュートラル)と資源循環(サーキュラーエコノミー)の実現に貢献してまいります。

  1. ※1

    ゼロカーボンスチール・イニシアティブ
    本イニシアティブにおける鋼材のCO2排出量削減プロセスについては、世界標準であるGHGプロトコル※3との比較や脱炭素化手法の妥当性を含め、LCA※4について知見のある法政大学川久保教授の監修のもと構築している。

  2. ※2

    T-ニアゼロスチール
    「ゼロカーボンスチール・イニシアティブ」の取り組みの一環として活用される、高炉鋼材より大幅なCO2排出量の削減や環境負荷低減を図った電炉鋼材。今回の東京製鐵との連携において、再生可能エネルギー利用により、高炉鋼材に対して95%CO2排出量を削減し、残り5%のCO2排出量や環境負荷の更なる削減に向け、当社では後述の注釈※3記載されたスコープ1~3に係る排出以外のCO2排出量の削減貢献活動である植林など、東京製鐵では現状の低炭素型電炉鋼の更なる低炭素化(スコープ1,2に該当する脱炭素に向けた設備投資や省エネルギー―設備導入等)を予定。

  3. ※3

    GHGプロトコル
    温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量を算定・報告する際の国際的な基準。GHGプロトコルはオープンで包括的なプロセスを通じて、国際的に認められた温室効果ガス排出量の算定と報告の基準として、その利用促進を図ることを目的に策定された。
    原料調達・製造・物流・販売・廃棄等、一連の流れから発生する温室効果ガス排出量は、スコープ1~3で構成され、以下のように定義されている。
    ・スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
    ・スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
    ・スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

  4. ※4

    LCA
    ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)の略で、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法。