リリース

コンクリート吹付け厚さを面的に計測できる「T-ショットマーカー® フェイス」を開発

切羽への吹付け作業のリアルタイムかつ定量的な管理が可能に

2023年4月6日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)とマック株式会社(社長:宮原宏史)は、2021年に共同開発した切羽(トンネル掘削の先端面)へのコンクリート吹付け厚さ※1をリアルタイムで計測するシステム「T-ショットマーカー」※2の機能を拡張し、吹付け作業中にコンクリート厚さを面的にかつ定量的に把握し管理することが可能なシステム「T-ショットマーカー フェイス」を開発しました。本システムにより、切羽へのコンクリート吹付け作業の効率化と安全性がさらに向上することとなります。

 山岳トンネルにおける切羽へのコンクリート吹付け作業は、吹付けを行うオペレーターが切羽近傍で目視により吹付け厚さを確認しながら施工する定性的な方法で管理されていましたが、オペレーターにより厚さの確認にばらつきが生じることから定量的な管理が課題とされていました。そのため、当社ではレーザー距離計を複数台用いて吹付け厚さをリアルタイムに計測するシステム「T-ショットマーカー」を開発し運用してきましたが、定量的な厚さ管理はレーザーを照射した計測点の範囲に留まり、切羽全体を面として計測できないという課題が残っていました。
 そこで当社は、既存システムのレーザー計測機器を変更しデータ処理機能を拡張することで、吹付け作業中にコンクリートの厚さを面的かつ定量的にリアルタイムで計測・管理できるシステム「T-ショットマーカー フェイス」を開発しました。(図1参照) また、当社が施工する複数の道路トンネル(掘削断面積50~100m2、複数の吹付ロボット機種にて運用)において本システムの機能を検証し、その有効性を確認しました。

 機能拡張した本システムの特徴は以下のとおりです。

  1. 1

    計測システムを吹付けロボットに搭載し、ボタンを押すだけで計測可能
    レーザー計測機器を内蔵した計測システムを吹付けロボット前方に搭載し、レーザー照射の調整作業を行うことなくボタンを押すだけで計測を開始でき、施工サイクルに影響を与えずに計測可能です。またパトライトの点灯色で吹付け作業時の計測状態を見える化できます。(写真1、2参照)

  2. 2

    作業中の吹付け厚のリアルタイム表示により連続して吹付け状況を確認可能
    吹付けロボットに設置したモニタに作業中の吹付け厚さをリアルタイムに表示し、オペレーターを含む作業員・職員も吹付け状況を定量的に確認できます。(図2参照)

  3. 3

    ノイズカットフィルター機能により粉じん環境下でも定量的に正確な計測を実現
    吹付け作業に伴い発生する粉じんや吹付け材の跳ね返りなどの影響をノイズカットフィルター機能により除去することで、正確な吹付け厚さを計測可能です。(図3参照) 本機能を用いた計測は、今後の吹付け作業完全自動化に向けた要素技術の一つとなります。

  4. 4

    施工記録を帳票として自動作成
    吹付け作業終了後は、計測結果から吹付け状況や出来形などの施工記録を帳票として自動作成し出力できるため、効率よく定量的な記録・管理が可能です。(図4参照)

 今後当社は、本技術を全国の山岳トンネル工事に展開し、現場状況に合わせて改良を加えながら吹付け作業の更なる効率化と安全性の向上を進めるとともに、コンクリート吹付け作業の完全自動化など山岳トンネル工事に関わる様々な施工工程の自動化・機械化技術の開発に取り組んでまいります。

図1「T-ショットマーカー フェイス」の概念図
図1「T-ショットマーカー フェイス」の概念図
写真1 運転席後方からのレーザー計測機器設置状況
写真1 運転席後方からのレーザー計測機器設置状況
写真2 システムの構成
写真2 システムの構成
図2 作業中の吹付け厚表示
図2 作業中の吹付け厚表示
図3 吹付け厚立体表示(ノイズカット後)(ノイズカットフィルター機能により粉じんなどの影響を除去した点群データ)

図3 吹付け厚立体表示(ノイズカット後)
(ノイズカットフィルター機能により粉じんなどの影響を除去した点群データ)

図4 吹付け厚の出来形帳票
図4 吹付け厚の出来形帳票
  1. ※1

    コンクリート吹付け厚さ:
    厚生労働省の平成30年1月「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」の改定では、地山の状態に応じて適切な吹付け厚さを確保するとあり、当社では最小吹付け厚さ50mmを確保し、地山状況を確認しながら不足する場合は増し吹きしている。

  2. ※2

    T-ショットマーカー®:
    レーザー距離計と表示用レーザー光を一体化したレーザー距離表示装置を吹付けロボットの運転席周囲に複数台設置しコンクリート吹付け厚さをリアルタイムに計測する連続モニタリングシステム。