発破掘削の装薬作業を高速化する爆薬装填装置「T-クイックショット」を開発
2023年4月5日
大成建設株式会社
株式会社アクティオ
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は株式会社アクティオ(社長:小沼直人)と共同で、山岳トンネル工事の発破掘削における、切羽(トンネル最先端の掘削面)での装薬作業を高速化する爆薬装填装置「T-クイックショット」を開発しました。本装置を適用することで切羽から数m離れた場所より迅速な装薬が可能となり、切羽近傍での作業時間が短縮されるため安全性と生産性の向上を図ることができます。
山岳トンネル工事の発破掘削では、切羽に穿孔した装薬孔に火薬を装填する装薬作業があります。これまでの一般的な装薬方法では切羽直下に作業員が立入り、装薬孔に火薬類を人力で装填していたため、切羽から土砂や岩が剥がれ落ちる「肌落ち」による災害リスク※1の発生が懸念されてきました。また、トンネル断面が大きく地山が硬質になるほど使用する火薬量が多くなり、切羽直下での作業時間も長くなることから、短時間で安全に効率よく装薬できる仕組みの導入が求められていました。
そこで両社は安全かつ効率的に爆薬装填作業を行うため、切羽から数m離れた場所より装薬孔内にパイプを差し込み、リモコン操作により装置本体から圧縮空気で爆薬を装薬孔内に圧送する爆薬装填装置「T-クイックショット」を開発しました。
本装置の特徴は以下の通りです。
- 1
切羽から1.5m離れた位置より装薬作業を安全かつ迅速に実施
装薬作業では切羽から1.5m程度離れた位置より、先端に雷管を取付けた爆薬・親ダイ※2を装填した状態のパイプ(1.5m~2.0m)を装薬孔に差し込みます。パイプ挿入完了後、圧縮空気により装薬装置本体から爆薬・増しダイ※3を圧送して親ダイ後方に追加装填し、安全に素早く装薬することができます。(図1、写真1参照) - 2
リモコンによる簡単操作で素早い装填を可能にし、装薬時間を40%短縮
本装置からホース内に指定した数量の爆薬を仕込み、圧縮空気と潤滑水で装薬孔に爆薬を送り込む一連の作業を、リモコンの押しボタン操作のみで完了させることができます。従来の人力での装填作業と比較して装薬時間を40%短縮でき、また、増しダイの装填数を1~3本まで任意に選択できます。(写真2参照) - 3
圧縮空気による密装填効果で、効果的な発破を実現
潤滑水を含んだ圧縮空気により爆薬を圧送することで、空隙の少ない密な装填が可能となり、増しダイ後方に込め物※4を詰める作業が不要となります。また、密装填により、爆薬のエネルギーが岩盤に確実に伝達され、効果的な発破を実現できます。(写真3参照) - 4
2tトラックに搭載可能なコンパクトな装置で、狭い坑内でも容易に操作可能
標準仕様として2tトラック1台に本装置2台、空気圧縮機、ホースリールを搭載し、トンネル断面が比較的小さく狭い坑内でも車両を容易に移動させ装置を操作することが可能です。また、本装置1台あたり爆薬60kg(Φ30mm×200g:300本)を格納でき、2tトラック1台で一般的なトンネル断面での使用爆薬量に対応しています。(写真4、5、6参照) - 5
装置稼働状況を見える化し、異常発生時には警報を発出して装置動作を停止
圧縮空気圧や潤滑水の供給状態を常時モニタリングして、制御PC画面で本装置の稼働状況を見える化し、異常発生時には音声連動した警報装置が作動することで本装置の動作が停止する仕組みとなっています。(写真7、8参照)
当社は本装置を山岳トンネル掘削作業の自動化・機械化構想※5の一翼を担う技術と位置付けており、今後全国の山岳トンネル工事に導入を図りながら、装薬作業における安全性および生産性の向上に努めてまいります。また、引き続き本装置の機能拡張にも着手し、将来的にはトンネル掘削サイクル全体の完全自動化に向けて開発に取り組んでまいります。
- ※1
肌落ちによる災害リスク:統計上、肌落ち災害の約40%は装薬時に発生している。
- ※2
親ダイ:爆薬に雷管を取り付けた薬包(本装置ではΦ30mm×200gの紙巻含水爆薬と電気雷管を使用)
- ※3
増しダイ:親ダイ以外の爆薬(本装置ではΦ30mm×200gの紙巻含水爆薬を使用)
- ※4
込め物:増ダイに続いて装填する砂や粘土
- ※5
山岳トンネル掘削の自動化・機械化構想:
当社では、山岳トンネル掘削における安全性向上および省人化による生産性向上を目的として、施工の自動化・機械化技術の開発を進め、省人化、遠隔化を図るとともに、将来的には1名だけで実施できる掘削作業の完全自動化を目指している。