リリース

VRを用いた切羽観察システム「T-KIRIHA VR」を開発

岩盤状況を安全かつ高精度に把握し、トンネル災害リスクを低減

2023年3月20日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、VRを活用して山岳トンネル工事における切羽(トンネル最先端の掘削面)の岩盤状況を安全な状態で詳細に把握できる切羽観察システム「T-KIRIHA VR」を開発しました。本システムは、切羽から十分離れた位置より3Dレーザスキャナを用いて、切羽の露出した岩盤の形状や色などを計測したデータを基にVRによって実際の切羽の様子を忠実に再現することができます。これにより、従来は目視にて観察していたトンネル掘削中の岩盤状況を安全かつ高精度に把握でき、岩石が剥がれ落ちる「肌落ち」などによるトンネル災害リスクを低減することが可能となります。

 トンネル工事における切羽観察は、切羽から落下する岩石が作業員に接触する可能性がある肌落ち災害の防止のほか、トンネル周辺の岩盤を安定させるための支保の選定やトンネル形状に予想以上の変状が発生した場合の支保工追加等の対策検討のため、必要不可欠な業務となっています。特に肌落ち災害は切羽の割れ目が組み合わさった箇所や切羽上方の岩がせり出した形状部分で発生することが多く、岩盤の割れ目と形状に関する高精度なデータの取得が必要です。しかし、従来の切羽観察では観察者の安全を確保するため切羽より5m以上離れた位置から実施しており、割れ目の組み合わせなどが不明瞭で肌落ち予測に必要な岩盤状況を正確に把握することが困難となることがありました。

 そこで当社は、切羽から十分離れた位置より3Dレーザスキャナで切羽の形状と色を計測し、そのデータをVR空間に再現して切羽の岩盤状況を詳細に把握するシステム「T-KIRIHA VR」を開発しました。本システムにより、切羽直下まで近接した場合の観察と同等の映像を再現でき、切羽に対する割れ目の入射方向や幅、岩肌の色など、より高精度に岩盤状況を把握し、肌落ちなどによるトンネル災害リスクを低減することが可能となります。

 「T-KIRIHA VR」の特徴は以下のとおりです。(図1、写真1・2参照)

  1. 1

    切羽を短時間でVR空間に再現し作業の安全性を向上
    3Dレーザスキャナによる計測に約10分、VR化に約5分と短時間でVR映像を作成できるため、VR空間を用いて迅速かつ詳細に切羽の近接観察が可能となり、掘削直後から肌落ちなどが予測される場所を事前確認し、より安全なトンネル掘削作業を実現できます。

  2. 2

    遠隔地でもVRを用いて切羽情報の共有、意思決定が可能
    計測結果は「いつでも」、「どこでも」、「詳細に」VRを用いて観察可能です。そのため、遠隔地でも発注者や専門家との切羽情報の共有、遠隔立ち合い、支保工変更等の対策技術の選定などに関する意思決定を速やかに行うことができ、施工工程の遅延防止と生産性向上を図ることができます。

 今後当社は、破砕帯想定区間など特に地山の地質リスクが高い区間に対して本システムを適用し、事前観察により岩盤状況を安全に詳しく把握するなど災害リスクの低減に向け積極的な運用を進めてまいります。

図1 3Dレーザスキャナによる計測状況
図1 3Dレーザスキャナによる計測状況
写真1 3DレーザスキャナデータをVR化して表示
写真1 3DレーザスキャナデータをVR化して表示
写真2 VR空間を活用した切羽観察状況
写真2 VR空間を活用した切羽観察状況