グリーン・リニューアルZEBを推進する新技術を開発・適用
2023年2月24日
大成建設株式会社
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、既存建物の窓の断熱性能を大幅に向上させる高断熱窓システム「T-Green DI Window」と、天井面に施工可能で照明器具の光反射効果を併せ持つ薄型放射空調ダクト「T-Green Radiant Duct」を開発・適用しました。
脱炭素社会の実現に向け、2021年8月に国土交通省・経済産業省・環境省から同時発表された「カーボンニュートラル実現に向けた住宅・建築物の対策」※1において、「2050年、ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能の確保」という方針が示されました。
当社はこれまで様々なZEB化技術を開発し、新築および既存建物へ適用してきましたが、上記方針が示されたことで今後建物のZEB化が一層進むものと想定されます。そのため現在、あらゆる条件の建物に適用できる様々なZEB化技術の開発が求められています。
今回開発した新技術は新築建物でのZEB化実現はもとより、既存建物を改修工事でZEB化する「グリーン・リニューアルZEB」※2への貢献も大いに期待できます。この「グリーン・リニューアルZEB」の実現に向けて、当社では現在改修工事中の関西支店ビルと横浜支店ビルにこれらの技術を適用します。(図1参照)
各開発技術の概要は以下のとおりです。
【高断熱窓システム「T-Green DI Window」】(図2参照)
本技術は、窓ガラスから室内に入る熱を大幅に削減し断熱性を向上させる窓システムです。既存窓の室内側にインナーサッシを新設して二重窓とし、さらに二重窓内部に室内の空気(換気で外に排気すべき余剰空気)を通気させ窓ガラスを通して外から入る熱量を通気と共に外へ排出する「ダイナミックインシュレーション効果」により、窓の断熱性能を大幅に向上させます。また、窓近傍の温熱環境が改善することで空調負荷の低減が見込めるとともに、オフィスビルなど非住宅のリニューアルにも適用可能であることから、幅広い活用が期待できます。
【薄型放射空調ダクト「T-Green Radiant Duct」】(図3、4参照)
従来型の放射空調システムは一般的に冷温水が流れる管を放射パネルに沿わせる方式(冷温水放射方式)が多く用いられていました。本技術では、既存天井の下に施工可能な厚さ100㎜程度の薄型放射空調ダクトを採用しており、既存の空調ダクトからの分岐で放射空調にリニューアルすることが可能な空調ダクトと放射パネルを兼用した空気放射方式を採用しています。
また、本ダクト内には潜熱蓄熱材シートを敷設して放射面の温度安定化と結露防止を図ることで放射効果による温熱感を向上させるとともに、ダクトの上側半分にリサイクル材(不燃段ボール)を採用し、ダクト本体の軽量化と製造時のCO2削減を実現しました。
さらに、ダクト下面の放射パネル表面に当社独自の凹凸加工を施すことにより、パネル面に向けた照明器具からの光を効率よく拡散・反射させることができ、パネル下の照度が向上します。これにより心地よい照明の演出が可能となり、光環境にも配慮した放射パネルを実現しています。
今後も当社は、引き続きZEBにつながる技術開発に積極的に取り組み、新築建物のZEB化および既存建物における「グリーン・リニューアルZEB」の推進を図り、2050年の脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
- ※1
「カーボンニュートラル実現に向けた住宅・建築物の対策」:
令和3年8月23日に国土交通省・経済産業省・環境省より同時公表された「2050年カーボンニュートラル実現に向けた住宅・建築物の対策をとりまとめ」において、「2050年及び2030年に目指すべき住宅・建築物の姿(あり方)」と「省エネ対策等の取組の進め方」が公表され、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能確保と太陽光発電設備等の再生可能エネルギー導入などの目標が提示された。 - ※2
グリーン・リニューアルZEB:
当社では、「省エネ」、「創エネ」、「脱炭素」、「ウエルネス」、「スマート化」、「安心」という6つの具体的な取組みを通じて、既存建物をこれからの時代に相応しく、人と地球に優しい建物にリニューアルすることを『グリーンリニューアル®』と称している。特にその中でも、「省エネ」と「創エネ」技術を導入し、既存建物のZEB化を進める取組みを「グリーン・リニューアルZEB」として市場展開を図っている。