リリース

山岳トンネル工事で使用する4ブーム式装薬台車を開発

特殊バスケットを用いて安全かつ高効率な切羽作業を実現

2023年1月10日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、ニシオティーアンドエム株式会社(社長:西尾英一)と共同で、山岳トンネル工事の切羽作業に用いる4ブーム式装薬台車を開発(写真1参照)し、この度、当社が施工する令和3年度鍵掛峠道路トンネル北工事(発注:国土交通省中国地方整備局)に導入しました。本機械のブーム先端に設置した特殊バスケットは、切羽の凹凸に追従でき頭上からの落石を防止するスプリング式伸縮ヘッドガードを搭載しており、装薬時の切羽での安全性を向上させ、生産性の高い切羽作業を実現することが可能となります。

 山岳トンネル工事の発破掘削では、切羽に穿孔した発破孔に火薬を装填する装薬作業があります。この作業は発破掘削に関わる作業の中でも最も切羽周辺での作業時間が長く、高所での作業を含め人力に頼らざるを得ないのが現状で、切羽から土砂や岩が剥がれ落ちる「肌落ち」の発生も懸念されることから、より安全に効率よく作業できる仕組みの導入が重要となってきます。
 これまで装薬作業は、切羽削孔に用いるドリルジャンボに搭載されているマンケージバスケットを使用して行われてきました。しかし、昨今の作業機械自動化に伴い、バスケット未装備あるいは1基のみ搭載したフルオートコンピュータジャンボ※1の採用事例が増えてきており、高所での人力による装薬作業ではクローラ式高所作業車などをドリルジャンボに横づけして実施するような対応しかできず、安全性や作業性が課題となっていました。

 そこで、両社は、装薬時の切羽での安全性を向上させ、生産性の高い切羽作業を実現することが可能な4ブーム式装薬台車を開発しました。

 本作業機械の特徴は以下の通りです。(写真2~5、図1参照)

  1. 1

    バスケットに装着した切羽の凹凸に追随する特殊ヘッドガードにより作業員を防護
    バスケットの屋根に取り付けた凹凸追随式ヘッドガード内のスプリング伸縮により、切羽近傍までバスケットを近づけた際に切羽の不陸形状に追随することができます。このヘッドガードが切羽とバスケットの隙間を埋めることにより、作業員を落石から防護し、安全な状態を保ちながら装薬作業が可能となります。

  2. 2

    接地可能なフラット床構造により切羽下部でバスケットに乗ったまま装薬作業が可能
    全4基のブームのうち、前方に配置されたブーム2基を、地上に設置可能なフラット床を有する構造としました。これにより、切羽下部の装薬もバスケットに乗ったまま左右に移動しながら、ヘッドガード防護のある状態で安全な作業が可能となります。

  3. 3

    4バスケット活用による切羽近傍での作業時間短縮で安全性・生産性を向上
    4ブームに搭載したバスケットの活用により、通常のドリルジャンボ(バスケット2基)、高所作業車(バスケット1基)を使用した場合と比較し、切羽近傍での作業時間が1/4~1/2に短縮され、安全性・生産性の向上が図れます。

 今後、両社は、令和3年度鍵掛峠道路トンネル北工事において本作業機械の運用を継続し、現場状況に合わせて改良を加えながら、装薬時の切羽作業のさらなる安全性と生産性の向上を推進してまいります。

写真1 機械全景
写真1 機械全景
写真2 凹凸追随式ヘッドガード付特殊バスケット
写真2 凹凸追随式ヘッドガード付特殊バスケット
写真3 切羽での追従状況
写真3 切羽での追従状況
写真4 接地可能なフラット床構造のバスケット
写真4 接地可能なフラット床構造のバスケット
写真5 切羽でのバスケット配置
写真5 切羽でのバスケット配置
図1 装薬時のバスケットの動き
図1 装薬時のバスケットの動き
  1. ※1

    フルオートコンピュータジャンボ:
    従来オペレータが手動で行っていた穿孔作業を、あらかじめ計画した発破パターン、移動順序に基づき、自動的に行うドリルジャンボ