リリース

山岳トンネル自動計測システム「T-RIPPA® BK」を開発

計測機器設置作業の安全性と計測業務の生産性を大幅に向上

2023年1月6日
大成建設株式会社

 大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、2020年に開発した山岳トンネル坑内計測システム「T-RIPPA」に、B計測※1に対応するための多チャンネル化と無線データロガー※2の小型・一体化の改良を加えた、新たな自動計測システム「T-RIPPA BK」を開発しました。本システムを適用することで、従来システムより計測機器設置作業の安全性と多くの計測データを得られることで業務の生産性を大幅に向上させることが可能です。また、本システムを実際施工中の現場にて運用し、その効果を実証しました。

 これまで山岳トンネル工事でのB計測の実施に際しては、掘削作業を約1日中断した上で、多数の計測機器設置と各機器に繋がる電源・通信ケーブルの設置および切羽後方20m付近までケーブル配線を施し、さらにこれらのケーブルを発破時飛石から防護する作業などに多くの時間と手間を要していました。特に、B計測を脆弱地盤箇所で実施する場合、岩や土砂が崩れ落ちる肌落ちが懸念される不安定な状態の切羽(掘削面)近くで作業を行うことになるため、安全性の向上が課題となっていました。

 そこで当社は、従来の山岳トンネル坑内計測システム「T-RIPPA」に、B計測に対応するための多チャンネル化と無線データロガーを小型・一体化する改良を加え、新たな山岳トンネル自動計測システム「T-RIPPA BK」を開発しました。

 本システムの特長および実証結果は以下のとおりです。

【特長】(図1、写真1参照)

  1. 1

    短時間で計測・無線通信機器を安全かつ効率的に設置可能
    本システムでは、全ての計測機器と無線データロガーを計測点の約1m以内に事前設置してから吹付けコンクリートを施工します。各機器のケーブル配線や防護工などの坑内での煩雑な作業が不要なため、これらを短時間で安全かつ効率的に設置可能です。

  2. 2

    LPWA無線データロガーにより、各種計測データを効率よく入手可能
    データロガーおよびデータ転送用LPWA※3無線通信モジュールを小型・一体化した装置の開発を行い、多チャンネル化によりトンネル坑内での各種計測データを効率よく入手可能です。

  3. 3

    トンネル坑内で長時間計測と長距離通信が可能
    計測機器は内蔵小型バッテリーのみで1年間連続して稼働しており、計測データはLPWA無線によりトンネル坑内1km程度の距離まで通信可能です。

【実証結果】(図2、写真2参照)

  • 工事現場で1か月を超える実証を行った結果、B計測で実施する施工時の計測値について合計10チャンネル分のデータを連続計測し、かつ安定したデータ転送ができることを確認しました。
  • 掘削作業に影響を与えないように計測機器を効率的に配置する工夫や、できるだけ切羽から離れて事前にセンサーを設置するなど施工手順を見直すことで、切羽周辺および坑内での計測機器の設置作業における安全性向上と大幅な労力削減を実現しました。
  • 計測機器の設置作業について、本システムによる作業時間は従来の電源・通信ケーブルなどを設置する方式と比較して、約70%短縮されることを確認しました。
  • 本システムによるコスト増も僅かであり、従来方式から不要となるケーブル配線や防護工、保守に要する費用で相殺可能な程度です。

 今後、当社は全国の山岳トンネル工事において「T-RIPPA BK」を展開し、工事の安全および生産性および施工品質の向上に努めてまいります。

図1 T-RIPPA BKの構成
図1 T-RIPPA BKの構成
写真1 新開発の無線データロガー
写真1 新開発の無線データロガー
図2 従来手法とT-RIPPA BKの計測器設置作業時間比較<br />(双方に共通するコンクリート吹付け時間を除く)
図2 従来手法とT-RIPPA BKの計測器設置作業時間比較
(双方に共通するコンクリート吹付け時間を除く)
写真2 現場実証実験状況<br />(設置および吹付け)
写真2 現場実証実験状況
(設置および吹付け)
  1. ※1

    B計測:施工時のトンネル安定性や支保部材(吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工)の規格妥当性を確認・評価するための各種計測。

  2. ※2

    無線データロガー:従来のT-RIPPAでは、無線通信モジュールを天端傾斜計TT-Monitorをベースにして当該計測器に組込む形式で開発していたが、今回の改良ではB計測への適用を踏まえ、他の計測機器のデータ取得にも汎用的に使用できるよう多チャンネル化を図るとともに、無線通信モジュールも小型・一体化した機器を新規に開発。

  3. ※3

    LPWA:Low Power Wide Area の略称。容量が小さなデータを対象に、少ない電力で広範囲な通信を行うことができる無線通信の総称。